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Vol.123 親子で「一緒に考え、話し合うこと」ができていますか?

 いきなりですが皆さまは子どもの頃「なぜ勉強しなければいけないの?」と保護者の方と話し合ったことがありますか? そして皆さま自身が保護者としてお子さまと話し合われたことはありますか? 話し合いの中身はともかくとして「一緒に考える、話し合う習慣」がどれほど貴重であるかについて、あるデータを元にご紹介していきます。

親子コミュニケーションに「ずれ」は当たり前?

 今回ご紹介するのは「高校生と保護者の進路に関する意識調査」のデータです。高校生の子どもとその保護者に同じ質問(進路関連)をして、その意識の差を数値化したものです。まずは、次のデータをご覧ください。

                       
子 ど も
(高校生)
保 護 者
「なぜ勉強しなければならないのか」話し合ったことがある17.1%45.2%
「将来なぜ働かなければいけないのか」話し合ったことがある14.4%42.7%
「保護者の仕事の内容、楽しさや大変さ」について話すことがよくある、たまにある41.9%62.2%

 3つの項目について、いずれも親子間に「認識のずれ」が生じていることに注目してください。親としては「ちゃんと話している」つもりであっても「話し合っている」とは思われていない、つまり「親が一方的にしゃべっているだけ」「子どもが聞き流している」「子どもの心まで響いていない、印象に残っていない」ということなのでしょう。自分も親として、子どもが高校生だった頃を思い返せば心当たりがあります。「大切なことを話すときに、正面で向き合う」という当たり前のことができない(したくない)のが高校生。小学生のうちから習慣化しておくことをお勧めします。
 さて、本題に戻りましょう。「勉強しなければならない理由」を話し合ったことがあると答えた割合は、高校生・保護者ともに時系列で見ると減少しています。特に保護者は「ある」と答えた割合が56.2%(2013年)→ 51.1%(2015年)→ 45.2%(2017年)と推移していて、大卒の求人倍率が好転している事情〔1.27倍(2013年)→1.61倍(2015年)→1.74倍(2017年)〕とリンクしていることがうかがえます。将来を楽観して進路選択や職業選択について話し合う必要性を先送りしているご家庭が増えているのか、それとも「大きく世の中が変わっている中でアドバイスを求められても困る」と考えるご家庭が増えていると見るべきなのか、この数値だけでは判断に困ります。
 ただし、間違いなく言えるのは「中学生や高校生になると、どうしても勉強の目的が定期試験や受験でいい点数を取るためとなってしまいがち」であることです。「働かなければならない理由」とあわせて、その動機を理解せずに追い立てられるようにノルマをこなすだけの毎日では誰でも疲弊しますから、将来認識のずれが生じないように小学生のときから少しずつ会話を積み重ねておきたいものです。


社会人になる頃の未来予測を考えている?

 高校生が社会人となるまであと10年弱、高校生とその保護者は大きく変わる世の中をそれぞれどのように予測しているのか尋ねた結果をご紹介します。
 自分の将来に社会・経済のグローバル化の影響が「ある」と答えた高校生は55%、「わからない」が33%となりました。ただし、大学進学を希望する者に限ると「ある」は63%と高く、短大進学・専門学校進学・就職を希望する者がいずれも40%に達していないことから考え方に大きな差が生じています。
 保護者の回答では「ある」が48%ですが、父親(67%)と母親(46%)で差がついており、「わからない」と答えた母親も「ある」とほぼ同数の47%となっています。

                               
子 ど も
(高校生)
保 護 者
父親
保 護 者
母親
自分(子ども)の将来に社会・経済のグローバル化は影響がある54.9%66.8%46.2%
グローバル社会で通用する人材になりたい(なってほしい)と思う、できればなりたい57.2%55.9%41.1%
自分(子ども)の将来に、AI(人工知能)などの普及・発達の影響があると思う52.0%55.9%37.1%

 次に「グローバル社会で通用する人材になりたい(なってほしい)か」という設問では、高校生の57%が「なりたい」と答えた一方で、保護者(母親)の「なってほしい」という回答は41%に留まっていて親子間に差がついていることがわかります。なりたい、なってほしいと考える人の意見は「グローバル社会に適応できなければ苦労する(高校生)」「これからは英語を使い世界を相手に仕事をする必要がある(保護者)」が多数を占めていますが、なりたくない、なってほしくないと考える人の意見は「英語が苦手(高校生)」「日本国内で活動できれば充分(高校生)」「国際情勢への懸念(保護者)」といったものが占め、どちらが正しいとは言えませんが「想像している未来が全く違っている」ことが読み取れます。
 ここで、前述の「わからない」と答えた47%の母親に絞って回答を分析すると、なんと3人に2人が「なってほしい」でも「なってほしくない」でもなく「どちらでもよい」と答えていることを覚えておいてください。
 未来予測なんて誰もわからないし正解を持っていないことです。だからこそ自分なりの意見や考えを持ち表現し、実現していくことをこれから社会に出る高校生は強く求められるのですが、一番身近にいる母親が「わからない」「どちらでもよい」という考えでは、とうてい話し合いや相談の相手にはなり得ません。もちろん父親が話し相手になればよいだけの話ではありますが、普段の会話にこうした話題が挙がらなければ子どもが問題意識を持つこともありませんから、「一緒に考える、一緒に話し合う習慣」を作っておくことの大切さをこのデータから強く感じています。
 最後に、AI(人工知能)の普及・発達の影響についての問いでは、「ある」と答えた割合が高校生の52%に対して保護者(全体)は39%とこちらも差がついています。保護者の間でも子どもが男子の場合、女子の場合よりも「ある」が8ポイント高くなっており、父親と母親の間でも18ポイントもの乖離が見られ、母親に限れば「ある」の37.1%よりも「わからない」の55.5%のほうが上回っています。

 おそらく誰でも、物事の判断を「自分の経験・視界」を基準にすることはあるでしょう。グローバル化でもAIでも、父親と母親、保護者と子ども、属する環境によって受ける影響の度合いが違うことは当たり前です。だからこそ、小学生のうちから「自分と異なる環境、世界観」の人の意見をちゃんと聞き、適切に取り入れる習慣を身につけておくことが重要な時代となりました。正解がない事象に対して「わからない」「どちらでもよい」ではなく、「自分はこう考える、だからこのように行動する」と根拠を持って未来に向けて行動できる大人になるための第一歩は、小学生のうちの日常会話や作文を通して養われる思考習慣にあると私は強く思います。

    

出典:リクルート進学総研「第8回 高校生と保護者の進路に関する意識調査2017」

vol.123 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年7月号掲載

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