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Vol.126 「理科が好き」「理科が嫌い」の分かれ道はどこにある?

 いきなりですがみなさんは、7月31日の夜に「火星」を見ましたでしょうか? 今年の夏は2003年以来となる「火星大接近」の年で、最も地球に近づいたのが7月31日だったのです。忙しい大人にとっては全く興味のわかない話題かもしれませんが、お子さまの自由研究には絶好の機会でした。

目の前の「史上初」に関心すら持たない中学生

 火星大接近に限らず、今年の夏は天体・気象の分野で様々な話題が報道されました。天気に関して様々な「史上初」が観測され、連日大きく報道されたものだけを拾い上げてみても、
①6月29日に関東甲信地方が梅雨明け。昨年より7日、平年より22日も早く、6月中の梅雨明けは観測史上初。
②7月23日に東京都青梅市で最高気温40.8℃を観測。東京都内で最高気温が40℃を超えたのは観測史上初。
③7月末に発生した台風12号が、統計を取り始めた1951年以降観測史上初の「日本列島を東から西へ横切る進み方」で上陸。
④8月23日に台風20号などの影響によるフェーン現象などにより、新潟県の数か所で最高気温40℃以上を観測。北陸で最高気温が40℃を超えたのは史上初。
など、我々が子どもだった頃とは明らかに「夏の天気が違ってきている」ことを実感させられました。
 私は仕事柄中学生と接する機会が多く、こうした機会に彼らの「天気」に関する興味・関心をチェックするようにしているのですが、残念なことですがこれだけ暑い日が続いているのに「どうしてだろう?」と疑問にすら思わない中学生が一定数存在します。彼らはテストの成績もよく、学校でも品行方正、特に問題はありません。偏西風が西から東へ吹いていることも知っています。ところが、その知識が目の前の事象と結びつくことなく単なる「テスト用の記憶」で終わっていて、東から西へ列島を横断する台風に驚くことすらないのです。関心すら持たない様子に愕然としてしまいました。自分の生活に最も関わりのある天気が題材でもこの様子では「理科で学習した内容に興味を持ち、理科を好きになる」ことは難しいでしょう。


「天体」を好きになる子、嫌いになる子の差

 小中学生が最も苦手にしている理科の単元に「天体」があります。中学受験を考えている場合には「月の満ち欠け」が、中学生であれば「金星の動きと見え方」が、ともに問われるのが「地球の自転と公転」などで、多くの子どもたちを悩ませます。難しく感じる理由は「イメージがわかない」からで、知識として図や表を覚えただけの子どもと、実際に夜空を眺めて「上弦の月、下弦の月」をイメージしたことがある子どもの差は大きいものです。「よいの明星」と語句を覚えただけの子どもと、「夏休みに見た、日が暮れたときに一つだけ輝いていた星のことか!」と実体験を思い出す子どもでは、この分野での学習姿勢にすら大きな差が生じることでしょう。
 それを踏まえて今回の火星大接近を考えてみてください。おそらく来春の中学入試では「地球の公転周期(365日)と火星の公転周期(687日)」や、火星をきっかけに太陽系の惑星の特徴を問う学校が数多く登場することでしょう。その対策として、エアコンの効いた塾の教室内で「15年ぶり」「大接近したときの距離は約5760万キロ」「マイナス2.8等星」といったキーワードを覚えるだけでは、入試が終わった後に残るものはありません。それに対して、実際に夜空を眺めて赤く輝く明るい星を目に焼き付けた経験のある子どもは、キーワードが具体的にイメージとして残ります。みなさまが中学の先生だとしたら、どちらの生徒に入学してもらいたいと考えますか。私はもちろん後者です。入学後、天体に限らず自然科学を学ぶ際の姿勢や意欲が全く違ってくることがわかっているからです。
 この姿勢や意欲の育成には中学受験の経験有無は関係ありません。中学受験をしないご家庭でも、仕事から帰ったお父さんやお母さんが「家に帰る途中、今日は本当に星がきれいだったよ」と話しかけることは簡単にできるからです。このような会話が日常的に行われていれば、好奇心旺盛な小学生は「自分も夜空を眺めてみたいな」「あの星はなんという名前だろう」「月はどうして三日月になったり満月になったりするのだろう」などと考えるようになります。
 お子さまが中学生になれば、彼らも忙しくなり親との会話も減ってきますから「星がきれいよ」などと話しかけてもイヤな顔をされるかもしれません。ゆっくり星空を眺めながら会話ができるのは小学生の間しかありません。火星大接近をこうした親子のイベントにしてしまうことは、天体に限らず自然科学への興味・関心を育てるという点でも非常に効果があったのです。
 火星大接近は9月上旬までと言われていますのでもう話題にできないかもしれませんが、これからは秋・冬の星座を楽しむことができます。同じ時刻にオリオン座の位置がどのように変わっていくかを親子一緒に見続けるだけでも、「天体」への向き合い方が違ってくることはいうまでもありません。


自然科学を通して子どもの「好奇心」を育てるには

 算数・数学、理科といった自然科学系の教科では、子どもたちの「(知的)好奇心の差」が学力差として顕著に現れます。物事をただ覚えるだけではなく、その成り立ちや理由をしっかりと理解する必要があるからです。そして、この自然科学に関して、子どもが興味・関心を抱いたり好奇心をもったりするきっかけは、残念ながら親の影響が大きいと私は考えます。
 保護者が火星大接近に何の関心も持たなければ、子どもが興味を持つチャンスはほとんどありません。おかしな台風の進路や相次ぐ「観測史上初」について、天気予報を見ながら親子で話題にする機会の積み重ねは、すぐに数値化することはできないかもしれませんが必ずお子さまの知的好奇心を刺激していきます。
 私は、「子どもが理科を苦手にしていて……」と悩まれている方には、必ず「演技でもいいから、保護者自身が自然科学に対してワクワクしている姿勢を子どもに見せてください」とアドバイスしています。
 本当にお父さんやお母さんが今から算数や理科を勉強し直したり無理やり好きになったりする必要はありませんし、星空にロマンを感じられなくてもかまいません。ただ一緒になって夜空を眺めてあげたり、天気予報を見ながら会話をしたり、知らないことがあれば一緒にスマホやPCで調べてあげたりするだけでいいのです。こうした姿勢だけであれば、わざわざ海や山まで出かけなくても、今日からすぐに始められます。すべてはここから変えないと何も始まらないのです。

 最後に、理科あるいは自然科学を我々が学ぶ理由はどこにあるのでしょうか。塾の教室で学ぶ知識は「入試に合格するため」であって自然科学を学ぶ本質ではありません。もちろん正解などありませんが、我々大人は自分の言葉や行動でその理由を子どもに伝えなければなりません。
 「自然は面白いものでもあり怖いものでもある。ちょっとした変化に気がつくこと、その仕組みを知ることが、自分の安全や財産そして家族や将来大切に想う人を守ることにつながる。だから好奇心が大切で、教科書がすべてじゃない」
 これは、自分の子どもたちに私自身が述べてきた言葉です。みなさまはどのように伝えますか。

参考:産業能率大学 第7回新入社員のグローバル意識調査

vol.126 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年10月号掲載

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