子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

HOME > 教育の現場から > Vol.129 小5の後半から算数を苦手とする子どもが急激に増える理由

Vol.129 小5の後半から算数を苦手とする子どもが急激に増える理由

 小中学生を対象として行われている全国学力調査は2007年から実施されていますので、調査結果の経年比較も可能になっています。算数においては、この10年間変わらず小6生を悩ませているテーマがいくつかあります。今回はそのテーマの紹介と原因、そして予防策について紹介していきます。

小6生の半数が「%」を理解していない?

 私が見てきた限りでは、算数を苦手とする子どもが急激に増える単元は小5で学ぶ「割合・百分率」です。最新の全国学力調査においてもこのような設問が用意されていました。

 正解は3番ですが、正答率は53・1%しかありませんでした。ほぼ半分の小6生が間違っているという現実を、現在小4・小5生の保護者の方々はしっかりと把握しておいてください。ここの理解が不十分だと、小6そして中学生以降の学習にも影響を及ぼすからです。
誤答としては2番が多く(27・6%)、この原因として調査報告書には「200と80という数字だけを見て、200÷80=2.5という数字を求め、そのまま%をつけているのではないか」と記されています。つまり多くの小学生が「%とは何か」というそもそもの意味を理解せず、ただ計算の方法のみを追い求めている様子がこの結果からうかがえます。
 我々が子どもの頃に「100人に聞きました」というクイズ番組がありましたが、%の概念はまさにこれです。正答率53%とは「100人中53人が正解した」ということ。これがわかってさえいれば「200人中80人が小学生ということは、100人中40人だから40%だ!」と考えるだけでよいのですから、特に計算もいりません。この考え方は正確には小6の2学期に習う「比」ですから、調査の段階で習っていないといえばその通りではありますが、小5の時に感覚を身につけてしまうことは大変なことではありません。小5生の保護者の方は今すぐにでもお子さまと一緒にドリルを解いてみるとよいでしょう。小4生の保護者の方は、ニュースなどで%が扱われている際に「%の意味」を少しずつ話しておいてあげると違和感なく小5の学習に進めるはずです。
 なお、この問題は2009年にも同じ選択肢で出題されており、その際には正解の3番が57・1%、2番が22・6%の割合で選ばれていました。当時は「ゆとり」で学力低下が叫ばれていた頃ですが、なんと現在は当時より正答率は下がっていて代表的な誤答の割合は増えています。この冬休みを有効に使って、お子さまの状況を確認してみてください。

改善の兆しが見えない「小数の割り算の意味」

 次の課題は「小数の割り算の意味」を理解できていないという点です。割合で多用する小数の割り算ですが、12÷0.8の計算を使う場面がわかっていない子どもが多いようです。

正しいものを「すべて選ぶ」必要があるので正答率は下がりますが、正解である「2番と4番」を選んだ割合は40・1%しかありません。誤答としては「1番と4番」を選んだ割合が21・4%と大変高く、他の解答例とあわせても間違っている選択肢1番を選んだ子どもが30 %いることが報告されています。
 この原因は、12÷0.8の計算結果が「12より大きくなる」ということをイメージできていないことにあります。12÷0.1=120であるように、1よりも小さい数で割ると計算結果は12よりも大きくなります。これに気づいてさえいれば、選択肢1番は「1mで12kgなのですから0.8mだと12kgより重くなるはずがない」と考えることができればよく、選択肢2番は「1Lあれば12㎡よりたくさんぬれる」と考えれば正解であることがわかります。
 この傾向は今に始まったことではなく、全国学力調査の前身ともいえる「計算の力の習得に関する調査(2006年)」では、5年生で学ぶ小数同士のかけ算「0.7×0.4」の正答率が56%しかなく、しかも「2.8(0.7より大きい値になっている!)」という誤答が37%もあったことが報告されています。
 わかりやすい数値に変えてみると、12×0.1=1.2であるように、1よりも小さい数をかけると計算結果が12よりも小さくなります。これがわかっていれば、0.7×0.4の計算結果が0.7よりも大きくなるはずがないとセルフチェックで発見できるはずです。
 このような問題点はもう10年以上も前から調査報告にあげられており、「小数同士のかけ算や割り算の計算の仕方は知っているけれど、文章題になると正解できない」子どもたちがおそらくクラスの半数を占めていることう数字だけを見て、200÷80=2.5という数字を求め、そのまま%をつけているのではないか」と記されています。つまり多くの小学生が「%とは何か」というそもそもの意味を理解せず、ただ計算の方法のみを追い求めている様子がこの結果からうかがえます。 我々が子どもの頃に「100人に聞きました」というクイズ番組がありましたが、%の概念はまさにこれです。正答率53%とは「100人中53人が正解した」ということ。これがわかってさえいれば「200人中80人が小学生ということは、100人中40人だから40%だ!」と考えるだけでよいのですから、特に計算もいりません。この考え方は正確には小6の2学期に習う「比」ですから、調査の段階で習っていないといえばその通りではありますが、小5の時に感覚を身につけてしまうことは大変なことではありません。小5生の保護者の方は今すぐにでもお子さまと一緒にドリルを解いてみるとよいでしょう。小4生の保護者の方は、ニュースなどで%が扱われている際に「%の意味」を少しずつ話しておいてあげると違和感なく小5の学習に進めるはずです。 なお、この問題は2009年にも同じ選択肢で出題されており、その際には正解の3番が57・1%、2番が22・6%の割合で選ばれが推測できます。その子たちに共通しているのは、本質を理解していないので間違いの原因をすべて「ケアレスミス」で片づけるしか選択肢がなく、赤ペンで正しい答えを書き直して終わりにしてしまうことです。この習慣は中学生以降も続きますからお子さまに同様の傾向がみられるなら危険信号です。小5で割合を学習した後、テストで「×」をもらってきたときに保護者が「計算ミス」と捉えてしまうと、単純に練習量を増やしても事態が好転することはありません。その原因は「文章を読んで自分で立式することができない」ところにあるからなのです。

 最後に、お子さまの答案から「単なる計算ミスなのか、それとも本質がわかっていないのか」を見究めるコツをご紹介します。その違いは「誤答の数値」から推測できます。「そんなわけがないだろ」という答えを書いて、自分でそのおかしさに気がついていなければ理解できていない証です。前述の「%」の問題であれば、0.4%や2.5%という答えを選んでいれば一目瞭然ですし、速さの問題では車の速さを「分速10m」としたり、人の歩く速さが「時速80km」などとしたりしてしまうケースが中学生でも見られます。自分が求めた答えに対して「ちょっと待てよ」とセルフチェックができるようになるだけでも、算数の勉強が作業から思考に変化していきます。「明らかにおかしいことに(自分だけ)気がついていない状態」は計算ミスでも注意力不足でもありませんから、お子さまの答案やノートを確認するときのポイントとしてください。

vol.129 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年1月号掲載

一覧へ戻る
春の入会キャンペーン
無料体験キット