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Vol.13 「目に見える成果」を求められる先生たち

 

 最近は脳トレブームとやらで、連日TVでもクイズ番組が放映されています。その影響なのかどうなのか、小中学生の英検・漢検の受験率が高まっている雰囲気を、自分の周辺だけでもヒシヒシと感じるようになりました。
 そんな中、新聞やTVを賑わせたのが、都内私立中学で起きた「英検不正受験」の問題です。何をやったかといえば、自校が英検会場になっていることを利用して、届いた試験問題を教師が事前に見て生徒に指導していたのです。英検の前日や前々日に生徒を集めて「対策講座」を開催し、問題の中から難しい単語や熟語を取り出し、板書したりプリントを配ったりしていたそうです。
 「こんなことをしても生徒のためにならないでしょ」と考える人がほとんどだろうと推測するのですが、どうしてこの学校の先生方は不正に走ってしまったのでしょうか。その背景として、私は「追い詰められた先生」の姿を想像してしまうのです。

先生に求められるもの

 私が最初にこの報道を目にしたとき「まあ、あることだろうね」という感想を持ちました。この学校の詳しい事情を取材したわけではないので、ここからは私の推測になりますが、その理由は二つあります。
 一つ目は「合格率が先生の評価につながっている」可能性が高いということです。特に私立中学・高校の場合には、常に「評価」がついてまわります。生徒・保護者による「先生への通信簿(アンケート)」を実施している学校も、私が知る限りでも増えています。先生に要求される最も大きな要素として、「成績をしっかりあげること」が年々大きくなってきていることは事実ですから、塾と同様に「しっかり合格させることのできる教師」が高評価を受けるシステムを採用している学校(私立)が、急激に増加していると予想できます。


英検・漢検の合格率はアピールポイント

 では、学校はどうして高い合格率にこだわる必要があるのでしょう。これが二つ目の理由です。それは「合格率の高さを学校のアピールポイント」にしたいからです。
 例えば灘や開成といった有名校であれば、強烈な大学合格実績を誇りますから、わざわざ英検や漢検の合格率を公表しなくても、充分に受験生や保護者の信頼を得ることができます。それに対して、現時点で大学合格実績がふるわない学校、特に「これから進学校にシフトしていきます」という学校の場合、いくら説明会等で素晴らしい方針を打ち出したとしても、「成績が伸びています」という客観的資料を提示できなければ当然ながらその信頼度は下がってしまいます。そうした学校にとって、最も手っ取り早く準備できて世間へのアピールにもなる資料、それが英検・漢検なのです。
 報道によれば「不正指導は2級と準2級を受ける中3、高1が主な対象だったが、中2にも指導した可能性がある」とのことです。このことから考えると、今回報道された学校では「2級と準2級の合格率を高めたかった」ことが推測できます。
 この理由は明確で、例えば都内私立大学の推薦入試において「英検が何らかの優遇措置になっている」場合、そのほとんどが「英検準2級以上」となっています。現実には中学生でも準2級をとる生徒もいますから、英検2級を「大学受験レベルの学力」の基準だと考えれば、このレベルに高1段階で到達している生徒の比率が高いことは、学校にとっては「保護者の信頼を得るアピールポイント」になるわけです。
 この二つの要素が組み合わさると、先生へのプレッシャーはかなり強いものになります。特に「これから進学校にシフトしていこう」とする学校の場合は、これまでのんびりやってきた業務内容を全面的に見直すことも必要ですし、先生の自己研鑽(特に授業力)が何より重要になってきます。
 「学校で教えることは勉強だけではない」と主張される先生も多いのですが、特に私立の場合には経営的側面を無視することはできませんから、最悪の場合こうした主張は「成績が伸びない言い訳」ととられてしまう場合もあるでしょう。


成果を求められる学校、教師

 覚えておられる方もいらっしゃると思うのですが、2007年には東京都足立区の公立小学校でも不正騒ぎがありました。区や都の学力テストの際に、教師が誤答している児童に合図するなどの不正行為を行っていたというものです。この背景には、足立区が「学力テストの成績の伸び率を、学校への予算査定の基準の一つにする方式」を打ち出したことがありました。04年2月の都の学力テストで23区中最下位になったことを受けて、学校間の競争の仕組みとして導入しようとしたのです。校長はじめ先生にどれほどのプレッシャーがかかったことでしょうか。
 こうして成果を求められるようになった先生が、自己研鑽不足があったかどうかは別として、生徒のレベルと試験の問題を擦り合わせたときに危機感を持てば、不正をしない確率が100%になるかといえば、残念ながらそうとは言い切れないと思います。今後もこうした不正行為が表面化することがあるでしょう。
 この場で「教育現場と成果主義の是非」を訴えるつもりはさらさらありませんが、少なくとも言えることは「自分の子どもに正々堂々と受験させられる環境」を探すことも、今後は保護者として意識しなければならない時代がすぐにやってくるだろうということです。それくらい学校も塾も玉石混交の時代なのです。

    

vol.13 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2009年 4月号掲載

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