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Vol.132 中学入試で増え続ける「新しい入試形式」とは

 2019年度の中学入試に挑んだ受験生は、新学習指導要領で中高6年間学んで「新しい大学入試」に臨む1期生となります。こうした変化を見込んで、大学入試改革の中身と連動した「適性検査型入試」「思考力型入試」を取り入れる私立中学が増えていることをご存じでしょうか。まだまだ試行錯誤が続いている状態ですがその注目度は高く、英語入試と並んで数年後には当たり前の入試システムになっているかもしれません。

「新しい入試形式」を取り入れる私立中学の意図

 現在の大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」と名を変えて、記述式問題や英語の民間検定を取り入れようとしていることをすでにご存じの方も多いことでしょう。しかし入試システムが本格的に変わるのは新学習指導要領で6年間学ぶ世代(新中学1年生から)で、理科と数学を併せた新教科の登場なども検討されています。保護者世代が経験してきた入試システムとは大きく変わることが明らかですが、その目玉は『従来型の入試で問われた「知識・技能」だけでなく「思考力・判断力・表現力」も問う』方針なのです。

 この変化を受けて、私立中学が入試で問う内容も国算理社の4科目(関西は社会を除く3科目入試も)のみならず、「正解力以外の資質」を試そうとする傾向が強まってきました。それが「適性検査型入試」「思考力型入試」と呼ばれるもので、首都圏では2019年に147校もの私立中学が実施しました。2014年にはわずか38校しか実施していませんので、その増加割合の大きさがおわかりいただけると思います。そのほとんどで、就職活動や大学のAO入試、高校の推薦入試に至るまで、世代を問わず学生に要求される「未来をたくましく生き抜くための力」の土台が求められます。「正解のない問題」に対して自分の頭で考え抜く習慣、あるいはチームを組んで知識や経験を出し合い多様な視点から解決策を生み出していくための力を持った生徒を集めて「中高6年間をかけてじっくりと経験を積み可能性を磨こう!」という意図が、入試システムや入試問題に込められているのです。

「新しい中学入試問題」の中身

 仕事柄いくつかの学校の入試問題を目にすることがありますが、私を含めて保護者の皆さまでも苦戦しそうな問題を紹介していこうと思います。大妻中野中学校が「新思考力入学試験」として2018年に課した問題をご覧ください。問題文には『TIME』の表紙が掲載されている(ここでは割愛)ものの、多くの受験生にとっては「『TIME』って何?」から始まることでしょう。つまり、この雑誌のことを知っているかどうかは問題ではないことがおわかりいただけると思います。むしろ「知らない、聞いたことがないからと言って思考停止に陥ってはいけない」というメッセージといえるでしょう。

 次に驚かされるのは、この問題を「わずか50分で考え、400字〜600字にまとめなければならない」という点です。読書感想文のように自分の思うことを書き連ねるのであればまだしも、これが入試である以上「出題者の意図」も汲んで構成を考えなければなりません。

 「知識・理解」「思考・判断」「批判・創造」の3分野が各20点の合計60点満点で評価されるのですが、例えば「思考・判断」では「誰でも発信者になれることが人間の内面や世界全体に与える影響について考察できている」ことが求められています。SNSを普段使っている大人でも難しいと思いますが、どれほどの6年生が心折れずに立ち向かうことができたのか知りたいところです。

次に紹介するのは「山手線の新駅」に関する問題です。「高輪ゲートウェイ」という新駅名が発表される前年の問題ですから、正解なんてあるはずがありません。自由な発想とその根拠が試されるという点で、鉄道好きの受験生にとっては心躍る問いだったかもしれません。

 ただし、この問いの前には山手線の全駅名表示があり、「町」という文字の由来〔「まち」と読む地名の土地には幕臣(幕府に仕える人)が住んでおり、「ちょう」と読む地名の土地には町人が住んでいたといわれている〕などの説明がなされたうえで、「江戸時代に幕臣が住んでいたと考えられる可能性が最も高い土地にある駅名を1つ選んで答えなさい。」という設問がありますから、面白おかしく名づけるだけでは評価されません。余談ながら、どうして「ゲートウェイ」とついたのか、その根拠についてもこの問題を読めば「あぁ、なるほど」とわかります。

「入試問題」から子どもの学習環境を選ぶ

 こうした新しい入試システムを取り入れる学校でも、入学する大半の生徒が「従来型の入試」で合格を勝ち取っているのが現実ですから、こうした入試問題が本当に市民権を得るのはまだまだ先のこととなるでしょう。また、すべての中学校が崇高な理念のもとにこうした取り組みを進めているとは限りません。学校側にとっては「生徒募集の目玉」でしかなく、入学後に理想と現実とのギャップを感じる残念なケースもないとは言えないからです。しかしながら、10年、20年というスパンでお子さまの将来を考えると、12歳の段階で試される必要はないとしても将来的に必要とされる「新しい資質」が登場していることは間違いありません。遊びも習い事もすべて断って塾に通うことだけが中学受験の選択肢ではなくなりつつありますから、作文や英語といった自分の経験を活かした学校選択が今後ますます可能になってくるでしょう。自分が楽しいと思えることを評価してもらえるなら、子どもは何にでも前向きにチャンレジするはずです。それゆえ、「自分の子どもにあった環境を探し、見つけること」が保護者の大きな役割になりつつあるのです。

vol.132 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年4月号掲載

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