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Vol.135 来年度から変わる小学校学習内容についての留意点
来年度(2020年4月)から、小学校の学習指導要領が改訂されることをご存じでしょうか。小3から英語を学ぶ、プログラミング教育が始まる、といった話題が世間を賑わせています。
その結果小学生が学ぶ内容はますます増え、教科書のページ数も授業時間数も現在より多くなることがわかっています。今回は、改訂の全体像とご家庭での留意点についてご紹介します。
保護者がきっと驚く「新しい教科書」
来年度から使用される教科書は、5・6年生で英語が教科としてスタートすることを受けて、6学年で使う教科書のページ数の合計が約14%増加します(現行の教科だけで比較すると約10%増加)。国算理社に絞って比較すると、ページ数の推移は次表のようになります。
今回改訂される教科書の分量は、「2002年問題」と呼ばれた際に使われた教科書(01年の検定)に比べると、国算理社の4教科で60%も増えていることを覚えておいてください。
現行の教科書に比べると、それほど学習内容が増えたわけではありません。今回のページ数増加の要因は主に、
⑴ インターネット上のコンテンツにリンクするURLやQRコードがついている
⑵ 考えさせる授業が展開されるので、対話形式のやりとりやクイズ形式といった、児童が「親しみやすい」作りになっている
といった、教科書の作り方が大きく変わった点にあるようです。
教科書にQRコードがつく、という点に驚かれた方が多いのではないでしょうか。これによって教科書にスマホやタブレットをかざすと教科書会社のサイトにつながり、動画で内容を確認できるようになります。英語の発音やアクセント、これまでは資料集の写真でしか確認できなかった理科の実験・観察の様子、地図帳で名前だけ確認して終わっていた各地の特徴などが、すべて動画でも学習できるようになるのです。
結果、児童にとって二つのメリットが生じます。一つは「興味・関心があることについては自宅であってもいくらでも深く学べる」点であり、もう一つは本人用のスマホが欲しいときの言い訳として正当な理由ができる(笑)点です。デメリットとしては、自宅に端末がないご家庭では児童が得られる情報量に差がついてしまう可能性があることです。おそらく重要な内容は授業中に学校の端末で視聴するはずですが、学校や地域の図書館からアクセス可能なのかどうかも確認しておきたいところです。
学習内容の増加に追いついていない授業時間数
次に授業時間数の推移をご確認ください。
来年度からの4年生~6年生は「週6時間が4日、週5時間が1日」の時間割で学ぶことになります。3年生も含めて今回の増加分は「英語・外国語活動」の割り当てですから、現行の教科については「ページ数は増え、プログラミングや動画視聴などやることが増え、しかし授業時間数は変わらない」ということになります。おそらく授業を楽しいと感じる児童は増えると思われますが、学習内容の定着度についてはこれまで以上にご家庭で確認する必要が生じそうです。
実際に、新課程がスタートした2011年度や2012年度の小学校現場では「(授業数が足りなくて)教科書が終わらない」「終わらせたけれど、学習内容の定着度を確認する暇がない」という声が多く聞こえてきました。それもそのはず、前年に対して授業時間数は週1コマ~2コマしか増えていないのに、教科書のページ数はおおよそ算数で32%、理科で34 %、全教科合計で22%も突然増えたのですから。
来年度からはこの混乱が再燃するかもしれません。前述のとおり教科書のページ数は2000年代初頭に比べて国算理社の4教科で60%も増えるのですが、授業時間数は当時に比べて週2コマ(英語も含めて)しか増えていない上に、アクティブラーニング(記述や調査、発表など)の要素が授業に盛り込まれるので、知識の暗記や反復練習といった「基礎・基本」の定着をこれまで以上に宿題としてご家庭の管理に委ねないと、教科書を消化できなくなるからです。
「自身の小学生時代」を基準に物事を考えない
保護者世代との比較でも、現在の小学生が大変であることは明らかです。保護者世代の教科書ページ数(1988年発表)に比べて、前述のとおり来年度からは6学年合わせて1400ページも増えます。
教科書のページ数削減は「学校週5日制に伴う授業時間数削減とセット」だったわけですが、現在は「授業時間数は少ないままどんどん教科書が厚くなる」時代になっています。
この記事をお読みの保護者の方には、80年代に小学生であった割合が高いのではないかと推測しています。土曜日に学校へ通われていた方も多いことでしょう。その当時と比べても、来年度以降新しい教科書で学習する子どもたちは「年間200ページ分多くの内容を学ぶが、授業時間数は少ない」状況におかれることになるのです。単純にいって国語・算数・理科・社会の教科書が50ページずつ増えていることを表しますから、お子さまの教科書を手に取って50ページの分量を目視されてみてください。
その分を消化するために授業のスピードが速くなり、宿題も多くなるのです。例えばかけ算の九九では、私の記憶では「先生の前で一人ずつ言ってみせる、うまく言えたら合格」といった定着度確認の時間がありました。現在その作業は宿題となり、確認の役割はご家庭が担うことになっています。
みなさまが小学生だった頃を基準にして物事を考えると「勉強量は段違いに増えたけれど、子どもの理解度に合わせて待ってくれない。どうしてウチの子をしっかり見てくれないのか」という苦情の一つも言いたくなる事態が生じるかもしれません。学校現場は「どうしようもありません」と答えるしかないのが実情ですから、これらのことを理解した上でご家庭としての方針(塾へ行くのか行かないのか、中学受験するのかしないのか等)をお考えください。来年になって、親までが振り回されて混乱しているようでは、その子どもがかわいそうです。たとえ学校や先生が混乱していても、最も身近な大人である保護者のみなさまだけはドッシリと構えて子どもたちを見守ってあげてください。教育でも「自分の子どもは自分で守る」時代になってしまったのです。
vol.135 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年7月号掲載