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Vol.139 コミュニケーション能力の高い人ってどんな人?

 進学塾が主催する「夏期の勉強合宿」に毎年参加して中3生を指導していますが、ここ数年学力よりも気になっているのが「生徒のコミュニケーション能力低下」です。同じ塾とはいいながらいろいろな校舎の見知らぬ人間同士が同じ教室で学ぶ4泊5日ではありますが、いつのまにかクラスの中心人物となってしまう者と自分から壁を作ってしまう者との「コミュニケーション能力」の差がここ数年で大きく開いているように思えるのです。

勉強合宿中のふとした光景に見える現実

 進学塾の勉強合宿ですから、1日に10時間程度の勉強時間と食事やちょっとした休憩や散歩を除けば後は睡眠時間しか残らないようなスケジュールではありますが、イマドキの中学生に「自分以外はみんな敵」という感覚はありませんし、世の中もそんなことは求めているはずもありませんので、殺伐とした雰囲気はありません。むしろ我々が気にするのは食事や休憩時間の生徒の動向あるいは表情で、知らない人ばかりの環境で気疲れしてしまわないよう、体力面のみならずメンタル面に気を配ります。
 私と普段から接点のある生徒たちには「最初は私のことをネタにして話のきっかけにしな」と言っておきます。これだけでも生徒たちの表情は大きく変わります。大人でもそうですが知らない者同士が話を始めるきっかけを見つけるのは案外難しいものです。勉強合宿ですから「とりあえず天気」の話から入ることもできず、生徒同士の共通の話題である講師の癖などが鉄板ネタになるわけです。
 その分我々は初対面の生徒たちに多く話しかけるように気をつかうのですが、初日はともかくとしても3日目4日目になってもなお、食事の際も移動の際も他人とコミュニケ―ションをとろうとしない(とれない?)ケースがここ数年でちらほらと見受けられるようになってきました。食器を片付ける際に誰かに手伝ってもらったなら「ありがとう」くらいは言うものですが、本当に無言で食器を渡すだけで終わってしまう「お前は社長か!」と言いたくなるような者が一人二人ではないのです。
 当然ながらそこに仲間意識は生まれません。知らない人とは話しづらいという気持ちはわかりますが、その環境を自分自身で変えてしまう行動力とコミュニケーション能力がないと、受験はもちろんその先もつらいだろうな、とついつい考えさせられてしまいます。

コミュニケーション能力って何のこと?

 コミュニケーション能力が社会人として必要な能力の一つに挙げられることは言うまでもありません。2012年に東証一部上場企業120社の人事担当を対象として実施されたある調査でも、この能力が高く評価されていることがわかります(表1)

表1

 では、ビジネスの現場におけるコミュニケーション能力とは具体的にどんなことなのでしょうか。
 次の調査結果(表2)を見ると、「話がうまい、わかりやすい」ということだけではないようです。

表2

 簡単に言えば「しっかりと意思疎通ができて、相手と信頼関係を築ける力」となるでしょうか。表2からは、コミュニケーション能力が必ずしもプレゼン力とは一致しないことがわかります。いくら話術に長けていても一方的に自分の言い分だけを主張していては信頼関係を築けません。質問を正しく理解する、相手を正しく理解する、といった項目が上位にくるのは、むしろ相手の話を聴いて(聞いてではない)ちゃんと反応を返すという当たり前のことが当たり前にできなくなってきていることの表れなのでしょう。前述の中3生のような「ありがとう」という感謝の言葉一つすら返さない反応をしてしまえば、その相手との意思疎通はそこで終わるでしょう。話しかけられても表情一つ変えずに無反応、というのも同じです。話すことが苦手なら笑顔で対応するだけでも相手の受け取り方は大きく変わるはずです。
 逆に自分から話しかける勇気も必要でしょう。初対面なら共通の話題なんてないのが当たり前、という前提で相手に対して笑顔で近寄っていける人のほうが好感を持たれるのはいうまでもありません。

コミュニケーション能力の土台は「興味・関心の幅」

 他者との意思疎通が苦手(に見える)中学生も、あと数年もすれば社会人として世の中と関わらなければなりません。世代や性別の違いはもちろんのこと、言語や常識あるいは習慣まで違う外国人の同僚とチームを組んで仕事をする場面も容易に想像できるわけですから、たかだか勉強合宿で「共通の話題がなくて他人と話ができない」と二の足を踏んでいる場合ではなかろうと個人的には思います。
 では、相手との会話のきっかけを作れてコミュニケーションを図ろうと動ける中学生は何が違うのでしょうか。私が見る限りでは「興味の対象が広い」ことが挙げられます。テストや受験に関する知識だけのいわゆる「頭でっかち」ではなく、雑学やスポーツ、文化まで幅広く関心を持っていて例外なく知的好奇心が旺盛です。勉強合宿の事例だと、初対面の相手の校舎名を確認した後の反応が明らかに違います。どの地域に対しても一つや二つは知識(浅くてもかまわない)がある生徒というのは毎年いて、地元の話題を話された相手は一瞬で親近感を覚えるようです。ポイントはその知識が有名なラーメン屋だったり地元出身のスポーツ選手だったりするので「あぁ、知識にムダなんてないんだな」と傍で聞いていて痛切に感じます。対して、相手にかまわず自分の地域のことを一方的に話し始める生徒、自分で校舎名を聞いておきながら「そんなところ知らない」と話を終えてしまう生徒もいて、15歳段階でついているこの差はけっして点数化されることがないだけに、本人たちに自覚のないまま今後ますます開いていくことが想像できるのです。

 こうした「興味・関心の幅」は、もちろん小学生時代の様々な経験に比例して広くなっていきます。中学受験あるいは将来の大学受験のために蓄える学力も大切ですが、けっして入試では問われない知識あるいは学校では教えてくれない知識も役に立つ日がきっと来るはずです。相手にあわせた共通の話題で会話ができることは21世紀に求められる最高のスキルなのかもしれません。

vol.139 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年11月号掲載

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