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Vol.145 中学入試で「英語」を使える学校はどのくらいあるの?

 2月末から小中学生が巻きこまれた混乱による影響は、新型コロナウイルスの蔓延が一段落すればすぐに回復するものではありません。学校が再開されたとしても鈍ってしまった生活・学習習慣を取り戻すには、大半の子どもたちは1か月~3か月程度の時間を要すると思われます。学校が再開された後が重要で、すぐに気持ちを切り替えて全力で勉強に取り組める子ばかりではないので、お子さまの何気ない表情や行動に目を配ってあげてください。

加速する「英語入試」の採用とその背景

 2020 年度の首都圏中学入試では、「英語入試」を実施する私立中学が141校(うち国立1校)となりました。3年前に比べても40%増、この6年の間に実施校は9倍に増えました。首都圏(1都3県)にはおよそ300校の私立中学校がありますので、いよいよ英語入試を実施する学校が半数に迫ろうとしています。

首都圏英語入試実施私立・国立中学校数

 従来型の入試制度を維持しつつ「グローバル入試」といった名称をつけた別枠の入試日・定員を用意する学校が多くなっています。その中身は、国語の代わりに英語の選択が可能だったり、英語1教科のみの試験だったりと様々で、我々塾講師でも詳細をしっかり把握するのに苦労するほどです。
 その背景としてまず考えられるのは大学入試改革との関連です。これまでの大学入試センター試験が大学入学共通テストへ変わる際に導入が予定されていた「英語民間検定の導入」は、2021年1月からの実施は先送りになったものの、現在の小学生が大学入試に挑む2024年度以降の本格実施に向けて検討・修正が加えられています。
 また、休校騒ぎでほとんど話題にあがりませんが、この春から小学5・6年で「英語(正式には外国語科)」という教科が始まり、いよいよ小学校が「国算理社英」の5教科になりました。小学5・6年では週2コマ(教科ではない小3・小4では週1コマ)が英語の授業に充てられます。
 今後すべての小学生が英語を学んで中学に進学する時代が到来したわけですから、私立中学が時代の変化に乗り遅れるわけにはいきません。先だって「英語入試」を始めて形式や問題レベルを試行錯誤しながら見定め、英語に興味を持って深く学びたいと考える子どもや「さらに英語の力を伸ばしたい」と考えるご家庭に向けて「中高一貫の6年間で英語をとことん鍛えよう」というメッセージを発信することが、入試はもちろんのこと入学後の授業レベルや学校の評判まで含めた学校改革の根幹につながっているのです。

「英語入試」の使われ方を知ろう

 現在のところ「英語入試」には2つの大きな特徴があります。1つ目は受験生確保のための「特待・優遇制度」として利用されるケースです。女子校に多く見られますが、例えば「英検3級以上」などの規定を設けてそれをクリアしている生徒に対しては各種減免制度を適用したり、あるいは当日の試験で得点を加算するケースも見受けられます。こうした制度があれば、中学受験塾ではなくて英会話スクールに通い続けていた人、英検などの検定に合格はしているものの本格的な受験勉強はしてこなかった人でも、私立中学を進学先の選択肢に加えられるので学校側にもメリットがあります。

2020 年入試で英語優遇制度を公表している私立中学(一部)

 新しい動きとして驚くのは「英語が試験科目に入っていないにもかかわらず資格取得状況により加点」といったケースが増えてきたことです。制度の多様化によって「算数は嫌いだけど、英語は好きだからもっと力をつけたい」という受験生の受け皿が増え、中学入試への関心や注目が今後ますます集まることになるでしょう。
 2つ目は、今後ますます加速するグローバル化に適応できる人材育成を目指して、最初から「高いハードル」を課すケースです。昨年春さいたま市が新設した大宮国際中等教育学校は、首都圏では初めて「IB(国際バカロレア)プログラム」を導入する公立中高一貫校として人気が出ましたが、その適性検査では国算理社の要素に加えて英語も出題されています。(下出題例参照)
 また、「英語資格入試」といった名称で用意されることの多い試験では、広尾学園の「英検2級以上(又は同等)の英語力を有する者が対象」や茗渓学園の「英検準2級、TOEFL Junior645点以上取得者を対象」といった高い条件が付されていることがあります。今後有名中学が参入する際には、おそらくこちらの形式を採用することになるでしょう。
 塾に併設されている英会話教室を見かけることがありますが、通っている児童が増えていることが目に見えてわかります。ご家庭における英語教育への関心の高まりは、我々の時代には想像すらできなかったほどの「高い英語力を持つ小学生」が多く誕生することにつながるでしょう。その一方で「母語である国語をきちんと学んでほしい」と訴える英語教員や予備校英語講師は、近年私の周辺でもたくさんいます。英語であれ国語であれ、大切なことは「自分の考えをしっかり自分の意志で伝える」ことですから、ぜひ英語と並行して作文講座も活用し筋道を立てた考え方と構成力を養ってください。

2020年度 さいたま市立大宮国際中等教育学校「適性検査A」リスニング出題例

vol.145 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2020年5月号掲載

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