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Vol.150 「割合・比」に苦戦する小学生はどれほど多いの?

 新型コロナウイルスの影響などで就職動向に不透明感が広がるなか、安定感のある公務員への就職人気が回復しているといいます。公務員試験には一般知能というジャンルの出題があり算数・数学の勉強も必須になりますが、小学校で学んだはずの「割合・比」に苦戦する大学生は少なくありません。しかも「(内容を)忘れた」ではなく「最初から理解できていなかった」ケースが多いのです。

大学生も悩む?「小6生の正答率13・4%の問題」

 小学生に戻ったつもりで、まずこの問題を考えてみてください。お子さまが「%」の概念を学習済みであれば一緒に解いてみることをお勧めします。

資料

 これは、2015年度(平成27年度)の全国学力・学習状況調査で出題された問題です。正解は「400mL」なのですが、正答率はなんと13・4%と大変低いものでした。小学6年生のときにこの状況だと、ここから10年近く経った大学生がいきなり準備なく解けば苦戦するのも当然です。小学生のときに間違えたことあるいはわからなかったことでも、中学あるいは高校在学中にその理由も含めて本質を理解できたなら忘れてしまう内容ではありません。公務員試験を目指す大学生からは「(当時覚えた)解き方を忘れたから全然手が出ない」「わからないまま放置した」という声が多く聞かれ、その度に「この声を小中学生の保護者に伝えなければ!」と強く思っていたのです。

誤答例から「割合・比」の学習法を探りましょう

 正答率が13・4%しかなかったこの問題では、どのような誤答が目立ったのでしょうか。この年の報告書からそのパターンをご紹介していきます。

資料

 27・6%の人が間違えた「480×0.8」という立式からは、「20%増量して480mLなのだから、20%減量すれば元に戻るだろう」と考えを汲み取れます。480×0.8=384ですから、実際に384mLを20%増量して480mLに戻るかどうか点検すれば、この考えが間違っていることに気づくはずです。「自分の出した答えが正しいかどうか点検してみる習慣」の有無は、算数や数学あるいはテスト・入試といったくくりに限ったことではなく将来お子さまが社会人になった後でも大きな影響が生じます。お子さまがもしもこの誤答をしたのであれば、前述の内容を一緒に点検してあげてください。
 続いて36・4%もの小学生が間違えたパターンですが、おそらく480と20%という数字だけを見てかけたり割ったりしてみただけだと思われます。20%を0.2と表せていればまだマシではありますが、この時点で小学生の3人に1人が「%とは何か」というそもそもの意味を理解せず、ただ計算方法のみを追い求めている様子がうかがえます。
 では、「%」の考え方について私が大学生に説明している内容をそのままお伝えします。「%」を一番身近に感じられるのはスマホのバッテリーで、フル充電が完了していればもちろん100%ですね。我々が子どもの頃には「100人に聞きました」というクイズ番組がありましたが、%の概念はまさにこれで、教室では元の量を1とおくよう指導されますが、わかりやすく100%と最初から考えればいいわけです。
 次に増減ですが、30%バッテリーを使えば「30%減」となって残り70%になります。だから30%減と言われたら、元の数値に「×0.7」すればよいのです。逆に20%増量とは、外付けのモバイルバッテリーを別に持っているイメージですから「スマホの100%とあわせて120%分のバッテリーを持っている」と考えられるようになれば大人になっても忘れることはないでしょう。
 この問題でも、元のせんざいの量を100%とおけば増量後のせんざいの量は120%になりますから、

120%= 480mL
4% =4mL
100% = 400mL

と段階を踏んで考えれば、式を作らなくても正解に至ります。この作業は正確には小6の2学期に習う「比」ですから、調査の段階で習っていないといえばその通りではありますが、小5の時に感覚を身につけてしまうことは大変なことではありません。6年生であれば比の学習が始まる前に必ず割合を復習しておくこと、小5生の保護者の方はたとえ割合が未習であったとしても、スマホのバッテリーを例に挙げて割合・%の概念にふれる機会を作ってあげてください。割合の学習が始まったらお子さまのノートを確認しながら一緒にドリルを解いてあげてください。
 5年前の6年生が13・4%しか正解できないのですから、全速力で授業が進んでいる今年は「授業で学んだだけでは自力で解けない」と思っておいてちょうどいいはずです。今年に限っては割合も比も、学習内容の積み残しがないように丁寧な復習とチェックに時間をかけてください。
 「○%増量」や「○割引」といった表現を目にする機会は小学生でも数多くありますから、その際にどの程度お得になるのか具体的に考える、あるいは元の量(値段)について考えるといったことを、保護者も一緒になって面白がってやってみせることが大切です。

 最後に、お子さまの答案から「単なる計算ミスなのか、それとも本質がわかっていないのか」を見極めるコツをご紹介します。その違いは誤答の数値から推測できます。「そんなわけがないだろ」という答えを書いて、自分でそのおかしさに気がついていなければ理解できていない証です。36・4%の小学6年生が間違えたパターンでは、480÷0.2=2400、480÷20=24、480×20=9600といった数値が登場しますが、「こんな量のせんざいが売っているのかなあ」と自問自答できない(点検する習慣がない)ことも含めて、算数の勉強が作業になってしまっている証です。自分が求めた答えに対して「ちょっと待てよ」とセルフチェックができるようになった時から、算数の勉強は作業から思考へと変化していきます。「明らかにおかしいことに(自分だけ)気がついていない状態」は計算ミスでも注意力不足でもありませんので、何はともあれ、「そんなわけはない」ことに気づかせてあげる必要があります。お子さまの答案やノートを確認するときのポイントとしてください。

vol.150 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2020年10月号掲載

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