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Vol.151 「自宅がキャンパス」になってしまった大学生は何を思ったか

 新型コロナウイルスは学生生活にも大きな影響を与えていますが、なかなか学生をキャンパスに戻すことができなかった大学においても、秋学期に入ってようやく段階的に対面授業を再開し始めたようです。
 しかしながら、各大学が行ったアンケート調査結果が公開されるにつれ、春学期に全く通学できなかった1年生を中心に、彼らの受けたダメージの深さも明らかになってきました。

「○○大生になってよかった」と実感できなかった1年生

 まずは、コロナ前(2019年)の大学生の動向をご紹介します。次の調査結果をごらんください。

資料

 これは早稲田大学の学生が回答した「2019年度学生生活調査報告書」のデータですが、おそらくどこの大学で調査をしても同様の項目が上位に名を連ねることでしょう。
 今春大学生となった学生たちが、こうした項目のほとんどを未体験のまま過ごしてしまった半年間で、大きなストレスを受けたであろうことは容易に想像できます。また、早々に対面授業を再開した小中高との対比で「なぜ大学だけが通えないのか」という不公平感や憤りを覚える学生も多いことでしょう。
 8月に発表された立命館大学新聞社の調査結果では、秋学期以降の授業について立命館大1年生の13%が退学を、28%もの学生が休学を視野に入れているとのことでした。立命館大学の場合、休学費用は半期で5000円と周辺の私立大学に比べて低額であることも要因の1つと考えられますが、この大学に限らず休学あるいは退学して再受験を視野に入れ、来春以降にもう1度大学生活をリスタートさせたいと考える学生は例年の比ではないことが推測できます。

大学生が受けた「心への影響」

 次は、1年生に限らず大学生全体が受けたダメージについてみていきます。秋田大学が5月~6月に行った調査(対象約5100人)では、女性の11・5%、男性の10・3%で中等症以上の鬱症状が見られたとのことです。静岡県立大学が4月~5月に行った調査(対象約1600人)では、「自分の心の調子が悪くならないか」という質問に対し、半数以上の人が「非常に不安、不安、少しだけ不安」のいずれかを選択しています。九州大学が6月に行った調査(対象約6000人)では、およそ40%もの学生が「孤独感や孤立感を感じる」「気分が落ち込んでいる」と回答し、「この1か月友人と直接話をしたか」との問いに「全くしない」「あまりしない」と回答した学生がおよそ30%、体調面で問題を訴えた学生がおよそ40%いたとのことで、大学の場所によらず状況はどこでも深刻であることがわかってきました。
 大学生の場合、将来の進路のことや学費・生活費の心配など不安の要因が多岐にわたるため、特に1人暮らしで相談相手がいないといった学生へのケアが重要だと思われます。コロナ禍が収束するまでの今後数年間、首都圏や関西圏の大学に通うためにお子さまを1人暮らしさせることをためらう保護者も増えていくことでしょう。

意外と評判がいいオンライン授業

 4月~5月にかけて全国各地の公立小中学校で実施されたオンライン授業は、必ずしも好評なものばかりではなかったようです。だからといって「やはり対面授業じゃないとね」と決めつけてしまうのはやめたほうがいいかもしれません。実は、各大学のアンケート結果を見比べると「大学のオンライン授業はおそらくコロナ禍収束後も残るだろうな」と推測できるのです。
 立命館大学の学生に向けた調査では、秋学期の授業について希望する形態について「全面web授業(34・4%)」「web授業と対面授業の併用(35・1%)」と、およそ70%の学生が秋授業でオンライン授業を続けることを希望しています。「全面対面授業」を希望したのは全体で27%(1回生は35%)に留まっています。静岡県立大学(複数回答)でも「すべての授業をオンラインで行う」を期待する学生が47%で最も多く、「一部の授業は学校で行う」は42%である一方、「全部の授業を学校で行う」を期待する学生はわずか14%でした。調査対象者のうち無制限のWi -Fi 環境がない学生が11%、Wi -Fi 環境がない学生が3%、PCを持たない学生が13%いることがわかっているので、通信環境が整えばオンライン授業への肯定感はさらに高まることでしょう。九州大学では「コロナウイルス収束後の一部オンライン授業継続」について肯定が64%(2~4年生に限れば74 %)、「春学期のオンライン授業は対面授業を代替できていたと思うか」については、「できていた」が「できていない」の2倍以上の数値差になっています(2~4年生に限れば約5倍)。
 なぜここまでオンライン授業が好意的に受け取られているか、それは「教員(作り手)側の工夫」に他なりません。私の知り合いの九州大学の先生を例にとると、事前にレジュメをダウンロードできるようにしておくことはもちろん、90分の講義を事前に録画した上で授業時間に合わせてリアルタイムで配信し、通信環境の差に配慮してYou Tubeでも視聴可能にし、授業後のアンケートや質問に回答するための動画を別に作成して配信することまで実施されています。1回の授業に要する手間は2倍3倍かかると仰っていますが、対面授業以上のケアを心がけておられます。
 だからこそ、昨年までに対面授業を経験している上学年のほうが高評価となるのでしょう。1年生の場合、比較対象となる授業を受けていないことや大学に通えないこと、PC操作に不慣れなことなど、授業の質とは違うところの不満足感が混じるのはやむを得ないことです。
 多くの大学教員が動画の作成や編集を未経験の状態から試行錯誤して、3月4月のわずかな準備期間でスタートしたオンライン授業でこの評価ですから、ノウハウが蓄積されればされるほど将来的に大学におけるオンライン授業は一般的なものになるでしょう。同様に塾や予備校でもノウハウの差が開いていきますので、保護者の皆さまにもおそらく数年後に「オンライン授業の質を見極める目」が求められる日が来ることを知っておいてください。

 ここでもう一度、最初にご紹介した調査結果の4項目をご覧ください。一般的にはこの4項目はいずれも「大学に通えば体感できる」とひとくくりで思われがちですが、実は勉強面はオンラインである程度の補完ができている可能性が見えてきました。すると、彼らが抱える不安や悩みの原因に経済面があることは前提としても、友人との交流やサークルなどの(勉強面を除いた)大学生活全般が占める割合が実は大学生にとって大きいのではないかと考えています。大学は「学問を究める場所」であることに間違いはありませんが、昨年までは当たり前にできていた「通学」が不可能になって見えたことは、意外にも大学が持つ勉強以外の役割の重要性でした。
 これは大学生に限らず小中学生にとっても同様でしょう。小中学校が休校になったとき、私などはどうしても勉強面の遅れやサポートばかりを気にしてしまいましたが、今となっては自分の視野の狭さを恥じ入るばかりです。

vol.151 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2020年11月号掲載

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