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Vol.155 子どもは知っていて親は知らない新キーワード「SDGs」とは?
ここ数年、中学や高校、そして大学入試において「SDGs」という用語を見かける機会が多くなりました。また、新学習指導要領に基づいた新しい教科書でも「主体的・対話的で深い学び」に導く題材として、この「SDGs」に関連するものが取り上げられているそうです。我々保護者世代にとっても「知らない」「自分たちの学生時代にはなかった」では済まされなくなってきました。
「SDGs」とは何なのか?
SDGs(持続可能な開発目標:SustainableDevelopment Goals)とは、2015年9月の国連サミットで採択された2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標のことです。
具体的には、次の17の達成目標で構成されています。
①貧困をなくそう ②飢餓をゼロに ③すべての人に健康と福祉を ④質の高い教育をみんなに ⑤ジェンダー平等を実現しよう ⑥安全な水とトイレを世界中に ⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに ⑧働きがいも経済成長も ⑨産業と技術革新の基盤をつくろう ⑩人や国の不平等をなくそう ⑪住み続けられるまちづくりを ⑫つくる責任 つかう責任 ⑬気候変動に具体的な対策を ⑭海の豊かさを守ろう ⑮陸の豊かさも守ろう ⑯平和と公正をすべての人に ⑰パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs推進を象徴する身近な取り組みに「レジ袋有料化」があります。この背景には⑭の海洋プラスチック問題があるとされており、「2050年には年間のプラスチック生成量が今の4倍近くまで膨れ上がり、海洋生物の量を海洋ゴミ量が上回る(世界経済フォーラム)」と予想されていることをうけて、レジ袋を有料化しエコバッグを利用する人を増やすことで少しでもプラスチックごみの削減につなげていこうとしているのです。
世代別の認知度を見ると20代が高くなっていて、「学校の授業」「就職活動で企業の取り組みを知った」といった理由のようです。今後学校のカリキュラムや入試問題で扱われる機会が増えれば増えるほど、若い世代への認知度が上がっていくことが予想されます。子どもに質問されて親が「知らない」と返事をするような事態は避けたいですね。
お恥ずかしい話ですが、私がSDGsを初めて認知したのも入試問題(2020年開智中学校)でした。問1をご覧ください。私が居住するさいたま市の取り組み(目標の⑪)が文中に登場しています(この中学校の所在地もさいたま市です)が、この問題に触れるまでまったく知識も関心も持ち合わせていませんでした。
SDGsは現代社会が抱える様々な課題を明示しているものです。現在の小中学生は、新しい教科書を使って全教科でSDGsに接することになりますので、我々保護者世代も敏感に情報を収集して心構えを持っておかないと、今後子どもたちが抱く問題意識・解決意欲についていけなくなってしまうことでしょう。
入試問題として扱われるSDGs
それでは、他に中学入試においてSDGsがどのように扱われているか見てみましょう。問2は、中学入試の算数における出題例です。ご注意いただきたいのは、我々が子どもの頃に問われたような「SDGsの達成目標17種をすべて覚えて答える」といった出題形式ではないことです。受験のためではなく普段からSDGsと向き合っている子が欲しいというメッセージが伝わってくる問題が増えているのです。
これが大学入試になると、小論文として登場する機会が多くなります。2020年琉球大学農学部の小論文では「SDGsの目標達成のために国内外で様々な取り組みがなされているが、その具体的な取り組みについて、新聞等のマスメディアを通してあなたの知っていること、または直接経験したことを挙げて、その取り組みに対する自分の考えを400字以下で記述しなさい」「SDGsの目標達成のために、自分自身が取り組みたい、または取り組むことが可能なことを、まず達成目標の番号を挙げて、さらにその具体的な内容について、800字から1000字程度で記述しなさい。ただし本学科に入学後、学習または研究したいと考えていることと結びつけて記述すること」という2問が出題されています。
高校生に対して「SDGsを知っているか」という浅いレベルではなく、自分が学習または研究したいと考えていることが明確で、しかも将来的にどのように社会貢献に結び付けるかまで視野に入っていることが前提になっていることを覚えておいてください。
今後ますます必要とされる「自分の考えを述べる」という点においては、お子さまが取り組んでおられる作文講座は間違いなく効果があります。そして作文を書くことに慣れ、楽しくなってきたお子さまにおかれましては、親子でSDGsについて調べ、それを文章で表現することにもトライしてみることをお勧めします。彼らが大人になる頃にはSDGsを意識しなくても行動・発言できるのが当たり前の世の中になっていて、小中学生時代に親子で取り組んだ経験が活きる場面にも数多く出くわすことになるでしょうから。
vol.155 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年3月号掲載