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Vol.157 臨時休校で遅れてスタートした「昨年度の授業」を教員はどう分析しているか
緊急事態宣言の発令とともにほとんどの学校が臨時休校になった時から、早いもので1年が経過しました。休校期間中の学習進捗(オンラインなど)が話題になった一方で、休校が明けてからの授業の進み具合や先生方の指導実感など、お子さま方の「今」につながる情報はあまり聞こえてきません。そんな中、休校明けの8月末から9月末にかけて全国の公立小中学校教員を対象として行われた調査結果が公表されました。
臨時休校期間が子どもの学びをどう変えたか
約2か月の臨時休校によって、子どもたちの生活面精神面はもちろんのこと、学習面においても私は大きな影響があったと考えています。塾に行ける子・行けない子、ネット環境が整っている子・整っていない子、そして保護者が一緒に勉強に付き合ってあげられる子・あげられない子。ご家庭の経済的・文化的環境の違いは、間違いなく子どもたちの学力格差を広げたはずです。学校はこうした「格差を均一化する」役割を担っていることを、休校明けの子どもたちを迎え入れた先生方も改めて認識された上で授業を進めていたことでしょう。表1をご覧ください。
遅れた授業進度を取り戻す必要があったため、授業スタイルはかつての一斉講義方式で教科書通りに指導する形が取られていたようです。試行錯誤を経て定着してきた、グループに分かれて話し合いをしながら理解を深める「アクティブ・ラーニング型」の授業は比較的少なく、観察・実験といった体験を取り入れる授業は特に中学校で少なくなっていたことがわかります。また、小学5・6年で教科となった英語については、「2学期以降は話すことを重視」と答えた先生が約9割に対して「英単語や文を書くことを重視」と答えた先生は4割に留まっているというデータをご紹介します。今春より、中1英語の教科書は「小学校である程度の単語は学んでいる」という前提で作られています。私も某社の中1教科書を見ましたが、Lesson1に入る前の導入の時点で1月から12月まで、日曜から土曜までの単語が登場しています。我々の時代の「中1最初の定期テスト」はせいぜいアルファベットに簡単な単語しか出題されていなかったことを思えば、「書いて覚える習慣」の重要性に気付かないまま小学校を卒業してしまった新中1生はこれから苦労するかもしれません。
次に、表2をご覧ください。
休校明けの授業では、小・中学校のどちらも先生方は例年よりも成績が低めの子どもを目安に授業を進めたことがわかってきました。それだけでなく、2020年に限らず例年でも「先生方がどの子どもを目安にして授業を進めてきたか」が数値化されている点に注目してください。例年、小学生の先生の3割が「中下位~下位」の子どもを目安にしていたことをご存知の保護者はほとんどおられないはずで、学校の勉強で十分なのかそれともプラスαを考えるのかというご家庭の教育方針を立てる上での大きなヒントになることでしょう。
遅れた授業は取り戻せたのか
休校期間中に遅れた授業進度については、小学校の約90%、中学校の約85%が「12月までに追いつく見通しだ」と9月の回答時点で答えています。
そのために行った工夫については、教員自身は小中学校を問わず「内容の精選」「スピードを上げて授業を行った」が圧倒的に高く、カリキュラム消化のために子どもの理解度を優先できなかった実態が浮き彫りにされていることを覚えておいてください。小学生の算数、中学生の英語や数学においては新年度の学習に影響を及ぼす可能性もありますので、連休を上手に活用して旧学年の復習に時間を割きましょう。また、学校として取り組んだことについては表3をご覧ください。
モジュール方式とは、朝自習のような15分程度の短時間学習のことを指し、集中力の続かない小学生で実施されるケースが増えています。注目すべきは「土曜授業の実施」で、回答した人のうち「2019 年度は実施なし、2020度は実施」が小学校で30%、中学校では25%なのに対して、「2019 年度実施あり、2020年度は回数が増えた」は小学校で46・5%、中学校では51・5%と高くなっています。
土曜授業については、積極的に実施する学校としない学校の差は今後ますます広がっていくと思われます。お通いの学校の方針をしっかりとチェックしておかれるとよいでしょう。
こうしたデータからは、休校明けの授業について「基本事項を、スピードをあげてとりあえず終わらせる」という苦渋の選択をした先生方の様子がうかがえます。土曜授業の実施に代表されるように、その手段は学校によってまちまちであり、お子さまが受けた授業の質・時間数が全国一律ではないことをしっかり理解した上で新年度の学習の様子も丁寧に観察してあげてください。
vol.157 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年5月号掲載