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Vol.16 算数でつまずかないための「数感力」の鍛え方

 

 よくTVなどで見かけるのですが、インドでは小学生に「19×19」まで暗記させるようですね。インドは国策として理数教育に力を入れてきたそうで、今ではインドの理系大学出身者は世界中の企業から引っ張りだこだという話も聞いたことがあります。
 日本でも、ゆとり教育が事実上終了し、今後は理数教育にも力をいれることになるのでしょうが、一度ついてしまった「世界との差」を埋めるには大変な労力を必要とします。それをすべて学校の先生に求めることは土台無理であることはいうまでもありません。
 算数・数学の力の差が原因で「将来の職業選択の幅」を狭めるようなことも考えられるでしょう。これからの時代を生き抜くためには、大げさでもなんでもなくインドの小学生に負けないような能力を、最低限小学生の間に、ご家庭で磨いていく必要があります。これは塾などの民間教育機関において「大量に問題を解いて正解力を鍛える」ものとは違います。私はこれを「数感力」と呼び、「音感」と同じように楽しみながらでも磨くことができる能力と位置づけています。
 まず皆様の数感力を簡単に試してみませんか。それを通して数感力とは何かを感じとっていただきたいのです。

あなたの数感力をチェック!

 では始めます。次の計算を暗算で解いてみてください。


 「暗算で解ける」という方は、その発想や感覚をそのままお子さんに伝え続ければ充分です。こうした「自分はこうやって考えているのよ」という発想を与え続けることで、お子さんの能力は磨かれます。一緒に競争するような場面を演出すれば「ゲーム」にすることもできます。
 算数・数学が得意という人は、私が見る限り間違いなく「ゲーム感覚で解く」要素を持ち合わせており、楽しみながら問題にチャレンジしていきます。この感覚を持たせて「遊び感覚でできる」ようになるほうが「19×19まで暗記させる」より知的な感じがしませんか?
 次に、「暗算で解けない」という皆様。「昔なら解けた」という方も含めて、気をつけてほしいことがあります。紹介した計算は、2ケタ×2ケタのかけ算を勉強した子どものうち、算数が得意であれば普段から暗算で解くし、苦手であれば間違いなく暗算では解けない「境界線」のレベルです。どこに差があるのか、具体的に紹介していきます。


数感力のメカニズム

 算数が苦手な子どもは、私の経験からいえば「複数の作業を同時並行で処理する」ことができない場合が多いようです。「AとBという作業を並行で行う」場合に、まず行った「Aの結果」を、Bの作業を行っている間にどこかへやってしまうわけです。先の計算①を暗算で解くには、上のような処理を頭の中で行うことになります。
 この作業でいえば「160を出して」「48を出して」「そして足す」という3つの作業を連続して行うことになりますが、苦手な子どもはたぶん途中で「次、何すればいいんだっけ」とかなりの高確率で言うことになります。次の筆算の場合を見てください。


 実は、筆算でも同じ作業を行っているのです。これを「ただの機械的作業」と捉えるか、そのメカニズムを理解して暗算で行えるレベルまで昇華させたか、この違いでしかないのです。


 もうひとつの計算②は上を参照してください。
 このレベルの計算を「頭の体操」として楽しみながら解くか、インドの小学生のように暗記してしまうか、日本の多くの小学生のように筆算という機械的作業に頼って解くのか、アプローチ方法によって、その子どもの数感力は大きく変わってくるのです。


大切なのはゲーム感覚

 かけ算の筆算を教えるとき、「なぜそうなるのか」というメカニズムを教えることを無視して処理方法だけを教えて練習させ、「できるようになった」と認識していませんか? 保護者の皆様がよかれと思って行う先取り学習が、結果的に数感力を弱めてしまう結果になることもあり得ることにご注意ください。
 「数感力」を鍛える第1歩は、計算を「作業」と思わせないことです。ゲーム感覚を持たせながら徐々に「いくつかの作業を同時並行で行う」練習をすること、これが重要なのです。もちろん最初のうちは、時間もかかるでしょう。それでも計算を作業に終始させず、処理能力の速さだけをチェックすることをせず、試行錯誤させてあげてほしいのです。

お母さんのひと言が「数感力」を育みます

 試行錯誤させるときには、「やらされている」という意識を持たせない工夫が必要です。そのためには、「答えがあっているからOK」ではなく、この練習に「目的」「意図」「感動」を付加してください。これはそんなに難しいことではありません。
 「このほうが簡単でしょ」
 笑ってこのひと言を言ってあげることで充分です。例えば「3+4+5」であれば、「3+4+3で10を作って、残りが2、だから12ね」でかまいません。最初は子ども自身でやらせてみて、「私ならこうするなぁ」と、発想の違いを見せてあげるだけでよいのです。その経験があればこそ、「次は自分でやってみよう」となるわけです。
 「どうやったら簡単にできるかな?」とお子さん自身が考えるように仕向けること。まずこれから始めてください。これは勉強だけでなく、料理でも片付けでもなんにでも応用が効きますよ。
 ただし、これを習慣にさせるためには、保護者の皆様が「常にこんな風に考えているんだよ」という姿勢を子どもに見せていかなければならないのですが……。

vol.16 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2009年 7月号掲載

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