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Vol.160 中学入試をするなら「小学校で学ぶ英語」を軽視してもいいの?

 先日、小5のお子さまをお持ちの保護者から「子どもが小学校で勉強する英語を軽視したため、苦手意識を持ったようだ。でも我が家は中学入試をするから大丈夫ですよね」という相談を受けました。小学5・6年で「英語」が正式な教科となった以上、「大丈夫ですよ」と言えるはずはありません。今回はその理由についてご説明いたします。

「小学生が学ぶ英語」を評価する私立中学は今後増える?

 2021年度の首都圏中学入試では、「英語で受験できる入試」を採用する私立中学が143校(うち国立1校)となりました。3年前に比べても30%増、この7年で見れば、なんと実施校はおよそ10倍です。首都圏(1都3県)にはおよそ300 校の私立中学校がありますので、いよいよ英語入試を採用する学校が半数に迫ろうとしています。

(表1)2020年(令和2 年)度国公私立大学選抜実施状況

 2021 年度は前年に比べて2校しか増えていないので頭打ちの印象を受けますが、実際には「英語で受験できる入試」を新設した中学は7校あり、その一方で取りやめた中学が出始めていて(千葉の難関校市川中学校など5校)、英語入試に対する評価・判断が学校ごとに分かれ始めています。
 ただし、小5・6年の2年間にわたって小学校で英語の学習を続けてきた子どもたちが入試を迎える来春以降は、直近の動向は不透明で「まだ様子見」という学校が多いようです。
 この変化を見込んでいち早く情報を公開したのが茨城県の江戸川学園取手中学校で、来春からすべての入試を「英語を含む5教科で実施する」ことを発表しています。公立中高一貫校では、いずれも埼玉のさいたま市立大宮国際中等教育学校と埼玉県立伊奈学園中学校で適性検査に英語の出題が含まれています。私立中学の場合、急激な入試改革は生徒募集への影響が大きいため、なかなか決断できない事情がありますが、長期的には英語を採用する学校が多くなることが予想されます。
 すべての小学生が英語を学んで中学に進学する時代が到来したわけですから、英語の試験を課して入学者の習熟レベルを見定め中1や中2のカリキュラムに反映させたり、出題内容を吟味し試行錯誤しながら教員の側も研鑽を続けたりすることによって、英語に興味を持って深く学びたいと考える子どもや「さらに英語の力を伸ばしたい」と考えるご家庭の期待に応えようとする姿勢を持つことが不可欠になります。
 これらは、学校にとって入試はもちろんのこと入学後の授業レベルや学校の評判まで含めた学校改革の根幹につながっているからです。

「小学校で学ぶ英語」を軽視できない事情

 英語を入試で採用する中学が増えてきたとはいっても、英語で受験できる入試は数回ある受験機会のうちの1つであるケースが多く、現実には「国語・算数の2教科」「国・算・社・理の4教科」が問われる入試がほとんどであることは事実です。だからといって、「うちの子は中学入試をするから」が小学校の英語を軽視していい理由にはなりません。
 現在小5・6年では、週2時間程度の英語の授業が時間割に組み込まれていることでしょう。教科とはなっていない小3・4年を含めて、お子さまは4年間で600~700 語の単語を学ぶことになっています。中学生になればこれをベースとして学習が進みますから中学3年間では単語数が1600~1800 語、合計では小学3年~中学3年の間で2200~2500 語の単語を学ぶことになります。
 過去の中学生と比較することで、この数値がどれほど意味を持つかおわかりいただけると思います。2000年代の中学生(ゆとり教育と言われた世代)は中学3年間で900語程度(もちろん小学校では英語なし)、指導要領改訂前の昨年までの中学生は中学3年間で1200 語程度(小学校では数百語程度)の学習量でしたから、現在の小学生は保護者世代と比べてもほぼ2倍程度の英単語を小中学生の間に覚えなければなりません。
 もちろん懸案事項は英単語だけでなく文法事項にも及びます。小5・6年では疑問詞や代名詞、動名詞に助動詞、そして動詞の過去形まで用いた基本的な表現を扱いますが、これらは我々保護者世代が中1どころか中2で学んだ内容まで含まれていることを覚えておいてください。この流れでカリキュラムが構成されていますから、中学時代に学習する文法事項も当然前倒しとなり、具体的には「原形不定詞」「仮定法」「現在完了進行形」といった従来高校の教科書に掲載されていた内容が中学に移っています。
 つまり、今春から公立中学で展開されている英語の学習内容は、一昔前の私立中学のレベル・スピードと同等だと思っていてください。となれば、今後私立中学ではそれ以上のレベル・スピードで授業が進むことでしょう。「小学校で学ぶ英語」を軽視せず、しっかりと復習して理解した状態で中学校に進学しないと進学先によらず中学の英語の授業についていけなくなることが容易に想像できてしまいます。

中学入試に関係なく英語と積極的に向き合おう

 このような情報に接すると、中学入試の予定に関係なく「小学校で学ぶ英語」「英語入試」に向けた対応策が気になるかもしれません。どちらに対しても「小学校の英語の授業に積極的に参加できているかどうか」を注視してください。コミュニケーション重視の授業だからといって軽視せず、前向きに取り組むことが一番の対応策になります。
 授業が英語で進み、自分の考えを英語でスピーチしたりクラスメイトの意見を聞き取ったりするわけですから、単語をたくさん知っていないと会話が進まないのは当然です。知らない英単語や表現を積極的に吸収しようと心がけること、英単語の発音を聞いて日本語の意味と一致させることを目標として授業に参加し、その日の学習内容をご家庭で再現する(保護者が聞き役になる)を続けていきましょう。
 また、中学に進学した後に備えて「書く」ことにも慣れておきたいところです。覚えた英単語を正しく書けるようになるためにはもちろんそれなりの時間と労力を要するわけですが、これを苦にせず続けるには小学生時代からこの作業を習慣づけておくことが必須となることでしょう。
 漢字テストを例に挙げればわかりやすいと思いますが、漢字ならば間違えたものを後回しにせずその場でサラサラと何回か書いてみることが記憶の定着には一番効果的です。英単語も同じで、わざわざ別に時間を取って練習するのではなく、目の前に出てきた新出単語はその場で何回か書いて覚えてしまうことを目標にし、習慣にしてしまえばよいのです。我々の時代に比べて、今の子どもたちは「耳から覚える」ことが増えていますから、その一方で「書いて覚える」ことを並行して続けられるかどうか、その作業を習慣にできるかどうかを親子一緒に心がけてください。
 なお、中学入試において英語を採用している学校の多くは出題内容の目安を公表しています。「英検4級以上」「英検3級程度」を中心に、「英検準2級」「英検2級」といったレベルも散見されます。こうした資格を持った生徒への優遇措置を取る学校も増えており、特待生制度や加点制度などの仕組みもありますので、英語による受験を積極的に考えておられるならば準備しておいて損することはありません。
 中学入試をしないご家庭でも情報収集は欠かせません。昭和~平成初期であれば中学生の「英検準2級」取得でも十分に凄いことでしたが、現在では、高校入試で加点・優遇制度を用いる私立高校の多くが「英検準2級」を項目に挙げており、希少価値の扱いではなくなっています。大阪府では、府立高校入試の英語の得点について「英検準1級(大学中級程度)で満点に換算」という仕組みがあり、全国的に有名な北野高校では志願者468名中16名が「英検準1級以上で満点に換算」、280名が「英検2級で80%換算」を利用しているのです(令和2年入試)。

vol.160 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年8月号掲載

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