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Vol.162 小中学生の保護者も無視できない「大学入学共通テスト」の今後

 新型コロナウイルスの感染拡大によって子どもたちの健康管理が最優先事項となっている現在、「子どもたちの未来」のために時間を割くことは大変難しいことかもしれません。そんな中、現在の中学3年生が大学入試を迎える2024年度(2025年1月受験)から始まる大学入試改革の内容が公開され始めていることをご存じでしょうか?「小中学生にとって大学受験はまだまだ先の話」と楽観視せず、お子さまが将来直面する変化の内容を頭に入れておきましょう。

大学入学共通テストはどうなる?英語の民間試験導入は?

 大学入試改革について皆さまはどの程度ご存じでしょうか。従来行われてきた大学入試センター試験が今春からスタートした大学入学共通テスト(以下共通テスト)に置き換わったこと、2019 年11月に発表された「共通テストにおける英語民間試験活用の見送り」、そして記述式試験を導入するのかしないのか、という話題は一時期よく報道されていました。
 しかしながら、今回の大学入試改革が「2021年1月の入試と2025年1月の入試の2段階」で実施されることは一般的にはあまり知られていないようです。2021 年は部分的な改革で、学習指導要領の改訂に伴い新課程で学習を続けてきた世代(現中3)が大学入試を迎えるタイミングで全面的に変えてしまうというのがもともとのプランだったことを覚えておいてください。だからこそ、今春からの実施が見送りとなった英語の民間試験導入や記述式試験実施については、2025 年春の入試からどのような運用が始まるのか注目されていたのです。
 このような背景を踏まえて、修正された改革内容を見ていくことにしましょう。

 ⑴ 英語の民間試験導入について
 共通テストでの実施は見送りとなりました。全国で50万人程度の生徒が受験するテストですから、家庭環境や居住地域によって生じる不平等(民間試験の受検機会・費用)を無視することはできませんでした。ただし、各大学(とくに私立大学)が独自に行う入試や、総合型選抜(推薦入試・AO入試)においては、民間試験の結果を活用する機会がたくさんあることを覚えておきましょう。出願条件として民間試験の級やスコアの基準が明記されるケースもあり、各大学で基準がバラバラなので入念な下調べが必要です(その年の7月までに各大学が入試の基本事項を公表する)。
 早稲田大学の一般選抜では、政治経済学部では英語民間試験を利用しませんが商学部には「英語4技能テスト利用型」という選抜方式が別途用意されており、国際教養学部では民間試験のスコアが20点を上限に加算される仕組みになっていますので、準備していないと他教科で20点分挽回しなければ合格の可能性が低くなってしまいます。
 立教大学では全学部で民間試験のスコアまたは共通テストの英語成績を利用するので、大学独自の英語試験はありません。両方の場合は高得点のほうが採用されるので、民間試験のスコアを準備しているほうが有利であることは間違いありません。
 民間試験に対する準備の是非は当然ありますが、私立大学の受験を念頭においた場合には、民間試験の結果が英語の試験の代替となる(英語の試験が免除になる)ケースを考えておくとよいでしょう。英語の試験が免除になれば受験勉強に要する時間を他の教科に振り分けることが可能になりますから、自分の志望校あるいは受験パターンによっては大変便利な制度となることは間違いありません。

⑵ 記述式試験導入について
 共通テストでの実施は見送りとなり、従来のセンター試験と同様マークシートによる解答方式が継承されます。もともと国公立大学の二次試験は記述式で行われてきましたので、国公立大学を志望する受験生にとって影響はありません。ただし、記述式試験実施を検討するに至った理由である
・自らの考えを論理的・創造的に形成する思考や判断
・思考や判断に至った過程や結論を的確に、さらには効果的に表現する
2つの能力についての評価は変わっていないため、今後入試問題に反映されることが想像できます。例えば空所補充で知識を問うような一問一答式の出題は減っていくことでしょう。それは、高校入試や中学入試にも影響を及ぼすのでお子さまにとって他人事ではありません。

新教科「情報」の扱いはどうなるの?

2025 年1月以降の大学入学共通テストでは出題科目の変更も行われます。新科目となる「公共」の扱い、数学が「数Ⅱ・数B」から「数Ⅱ・数B・数C」に変わるなど話題豊富ですが、一番の改革は新教科「情報」が登場することで
 す。学習内容にはプログラミングやデータ活用といった内容が含まれ、サンプル問題では「モノクロの画像を16画素モノクロ8階調のデジタルデータに変換する手順」「比例代表選挙で各政党に配分する議席数(当選者数)を決める方法を、プログラムを用いて検討する」といった題材が紹介されています。コロナの影響で話題になりませんが小学校では2020 年度からプログラミング教育が必修化されていること、度数分布や中央値といったこれまで中学校で学習していた統計に関する内容が新課程で小学校に移ったこと(中学校には「箱ひげ図」という従来高1で学習した内容が移っています)とあわせて、この「情報」という教科(我々の時代には全く教科書になかった内容)が登場していることを覚えておいてください。
 ただし、現段階でどれほどの大学がこの「情報」という教科を必須とするかは不透明です。国立大学は、共通テストのどの教科を判定に使用するか個々に決定して公表します。多くの国立大学が課す方針を決め、「国公立大学を受験する際には原則として必修とする」くらいの強いメッセージが世の中に出れば、結果的に「情報」の受験者は多くなります。逆に国立大学の足並みがそろわなければ、受験者は少なくなってしまうかもしれません。
 この「情報」に関しては、担当者不足のため臨時免許状や免許外教科担任が高校で指導にあたっているケースも数多くあるそうで(自治体によって状況はかなり違うそうです)、その指導内容にも当然バラつきが生じているという声が聞こえてきます。英語の民間試験導入が頓挫した理由である「平等性の担保」がここでも検討課題にあがる可能性は否定できないため、ギリギリまで公表が遅れるかもしれません。常に最新情報を集め、その動向に注目しておくことをお勧めします。

小中学生にも影響? 地理歴史/公民にも大幅な変更

 「社会科」と呼ぶのがおなじみの「地理歴史/公民」にも注意が必要です。新課程で登場する必履修科目「地理総合」「歴史総合」「公共」をベースに編成された6科目の中から最大2科目を選択して受験することになり、「世界史B」「現代社会」といった科目が姿を消すことになります。「歴史総合」は日本史と世界史の融合分野であり、しかも近現代史に限定されているため、中学入試や高校入試における学習履歴が大きく影響を及ぼします。特に中学生においては、授業進度に遅滞が生じて中2で歴史の教科書が終了しないケースが多く、その調整として近現代史の授業が猛スピードで進むクラスが本当にたくさんあることを知っておいてください。日本の近現代史に関する知識がアヤフヤな状態では、世界との関わりを深く学ぶ高校の「歴史総合」では苦戦必至となります。また、新教科「公共」には「倫理」あるいは「政治・経済」がセットになって編成されますので、実質的にはこれまでより科目が増えたというイメージで捉えておく必要があります。よって、受験生には大幅な負担増となることは明らかであり、これまで以上に小中学生時代の土台固めが重要視されることでしょう。高校入試であれ中学入試であれ、テストの範囲を丸暗記して覚えテストが終わったら忘れてしまうという勉強方法が通用しなくなるような、出題形式・出題テーマの変化がこれから生じてくるはずです。

vol.162 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年10月号掲載

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