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Vol.167 通知表の評定、昔と今では何が違うの?

  昭和・平成・令和と時代が変わっても、小中学生から話を聞く限り「通知表」をもらうときのドキドキ感は、今も昔も変わらないようです。その一方で、「通知表」という名称こそ変わらないもののその中身が変わっていたり、中学生にとってはその評定(内申)が高校入試に与える影響が全国的に昔より大きくなっている分だけ重みが増していたりと、「通知表」の周辺にある情報には注意が必要です。

昔の評定は「相対評価」、現在の評定は「絶対評価」

 通知表の評定は、2003年春の中学卒業生から「絶対評価」に変わっていることをご存知でしょうか。
 保護者世代が中学生だった頃の評定は「相対評価」といって、学校ごとに生徒を成績順に並べたときに、表1上段のように配分して5段階評定をつける仕組みになっていました。

例1

 それに対して現在の「絶対評価」とは、指導要領に示されたそれぞれの目標(テストの結果+関心や意欲、態度)への到達度を評価するもので、他の生徒との比較ではなく本人の頑張り度合いをストレートに評価する仕組みです。相対評価の時代と比べてどのような変化が起こっているか、令和2年月に東京都が公表した調査結果のデータを表1下段に掲載しましたので比べてみてください。
 明らかな変化は、評定の「2」「1」の割合が違っていることです。相対評価の時代には成績の下位%についていた「2」「1」が現在では下位%だけになっており、「宿題やワークの提出(特に期限)を怠らず真面目にちゃんと授業に参加していれば評定3はもらえる」と認識できるのが現在の公立中学校です。
 その一方で、評価の仕組みが変わっているにもかかわらず、昔と変わらずこの評定が調査書として高校入試に用いられるため、先生によって、あるいは学校の方針によって評定のつけ方に差が生じる「学校間格差」が表面化するようになりました。高校入試では、公立はもちろん私立の中にも、この評定を基にした「調査書」を判定基準に使用しているところがありますから、この不公平感は受験する生徒や保護者にとってはもちろん、受け入れる高校側にとっても気になるところです。また、中学入試を検討する際にこの不公平感を理由に挙げるご家庭は少なくありません。

「評定の学校間格差」の実例とその影響

 この不公平感を可視化できる資料をご紹介します。東京都が公表している「都内公立中学校第3学年(令和2年12月31日現在)の評定状況」に関する調査結果です。具体的な中学校名は出ていませんが、それぞれの公立中学校でつけられた評定の違いがわかります。

例2

 「学校間格差」の象徴的な事例として、表2の練馬区A中学とB中学をご覧ください。A中学では、数学でも英語でも評定「5」「4」の生徒で半数を超えています。これは表1の相対評価の数字に比べてもかなり高く、特に数学では保護者世代ならば「3」となる生徒でも「5」がもらえていることになります。一方B中学では、特に数学で評定が厳しくなっていることがおわかりいただけると思います。評定「5」の者は全体のわずか1・5%しかおらず、「5」「4」の割合をあわせてもわずか6・1%とA中学には遠く及ばず、表には掲載していませんが33・8%の生徒に数学で評定「2」がついているのです。この差が同一区内の公立中学校同士で生じていることに、私は驚きを隠すことができません。
 他の区に目を移しても、評定のつき方の割合にバラつきがあるのは共通しています。文京区のC中学のように、数学英語ともに評定が「5」「4」「3」の生徒が全体の9割を超えていて実質的な3段階評価となっている中学もあれば、【参考】として紹介している品川区や大田区は区全体で評定のつけ方が厳しく、「評定高め」として紹介できる中学校がないところもあります。
 このような格差は、公立高校入試ではもちろん合否に影響を及ぼしますし、私立高校の推薦入試では「中3の2学期の5段階評定が20以上」といった受験資格が明記されているところも少なくありません。また私立の中には一般入試の出願資格の中に「評定に2もしくは1がないこと」を明記しているところもあり、評定が基準に達していないと出願すらできないケースも少なくありませんから、前述のような厳しい評定のつけ方をされる中学校に通っている場合では、受験校の選び方そのものに影響がでることも想定して早めの情報収集と受験準備が必要になります。

中学校の進路指導から偏差値が消えてちょうど30年

 私が中学3年のときには、まだいわゆる「業者テスト」は学校で行われていました。そのテスト結果(偏差値)が学校の進路指導に当然のように使われ、今ほど内申に気を遣う必要がなかった時代です。この偏差値が中学校の進路指導から排除されたのが1992年のことですから、今年でちょうど30年となりました。代わりに判定材料として使われる内申(評定)の存在感は年々大きくなっているのですが、前述の通りお子さまの学力を客観的に判断する材料としては完璧ではありません。
 したがって小中学生の保護者の皆さまには、『(5段階)通知表の「3」は普通の成績』という概念を捨ててください。
といつもお話しさせていただいています。今お子さまが持ってくる通知表の「3」は、保護者世代の相対評価だと「4」になることもあれば「2」になる可能性もあるあいまいな位置なのです。よって、中1・中2のうちから、定期テスト以外に外部テストを受験し、「客観的な学力測定」を続けることをお勧めします。
 通知表が「3」に「4」がチラホラ、という場合には、生徒も保護者も『真ん中より少し上くらい』『自分はできるほうだ』と自分の位置を想像するものです。その感覚のまま中3の秋に初めて学校の実力テストや外部の模擬テストを受け、予想以上に悪い成績に衝撃を受ける受験生はけっして少なくありません。数学や英語で3人に1人が評定で「5」をもらう学校にお通いの場合なら、「評定は5なのに、模試を受けたら偏差値が50前後だった」ということだって充分にあり得るのです。
資料:都内公立中学校第3学年及び義務教育学校第9学年(令和2年12月31日現在)の評定状況の調査結果について

vol.167 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年3月号掲載

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