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Vol.168 大学入試における「英語の外部検定導入」はどうなったの?

  大学入試センター試験が大学入学共通テストに置き換わって2回目の入試が終了しました。数学が急激に難化するなど出題方式や傾向の変化がまだまだ続きそうですが、本当の大改革は指導要領改訂に合せた2025年1月の入試から始まります。2019年秋に大きく報道された「共通テストにおける英語民間試験(外部検定)活用」についても今後議論が再燃するはずですが、その現状について興味深いデータが公表されました。

2022年春の大学入試ではどのくらい使われているの?

  2019年秋に大きく報道された通り、大学入学共通テストにおいて当初予定されていた受験生全員が外部検定を受検し、その成績を志望先の大学に通知する「英語成績提供システム」の導入は見送りとなっています。しかしながら、2025年1月の入試からはこのシステムの導入が予定されていること、大学が個別に実施する入試においては外部検定の結果を利用する大学が増えていることから、現在の小中学生は情報収集と準備を早めに始めておいて損をすることはありません。
 では、具体的に2022年入試における外部検定の利用状況を見ていきましょう。

例1

  表1をご覧ください。2022 年入試では、国公立・私立を合わせて424校の大学が何らかの形で英語の外部検定を利用しており、これは全体の半数以上(55・6%)となっています。前述の通り大学入学共通テストでの導入が見送りとなった影響で、国公立大学の一般選抜(共通テストの後に実施される大学独自の2次試験)での利用率が低く(表2参照)なっていますが、2025 年1月以降の変更内容によっては大幅に数値が伸びることが予想されます。  

例2

  2022 年の入試では、一般選抜ではほとんどが私立ではありますが243 校(全体の30%)が、従来「AO・推薦」と呼ばれてきた総合型選抜では国公立と私立を合わせて379校(約50%)が、すでに英語の民間検定を利用していることを覚えておいてください。私立大学では、もともと共通テスト利用入試と大学が個別に行う入試を2本立てで準備していましたので、受験者から成績証明書を直接提出してもらって合否判定に利用する仕組みがすでにできあがっています。共通テストの動向に関係なく、入学者の状況を分析して合否判定に対する影響力を今後調整していくことでしょう。中には影響力を弱める大学があるかもしれませんが、全体的にはこの外部検定がより重要視されていく見込みです。

外部検定の利用方法と利用できるレベル

  外部検定といってもその種類は多く、2 0 2 2年の一般選抜において大学が最も採用しているのは英検(実用英語技能検定)の97%、ついでGTEC CBTの94%、TEAPの88%と続きます。総合型・推薦型については英検(実用英語技能検定)の99%、ついでGTECCBT の86%、GTEC 検定版の82%となり、一般選抜とは採用率が異なりますがとにかく英検が強いことがわかります。
 次に、大学が外部検定をどのように利用しているかご紹介します。表3をご覧ください。

例3

 総合型・推薦型のおよそ半数が利用する「出願資格」とは、高校入試でも「内申9科36以上」といった表記でおなじみの「一定の基準を満たしていないとそもそも出願ができない」というものです。総合型・推薦型ではおよそ4割の大学が「英検準1級〜2級相当」を、3割の大学が「英検準2級相当」を基準とする一方で、一般選抜では6割を超える大学が「英検準1級〜2級相当」を求めていますので注意が必要です。
 一般選抜で半数以上の大学が採用している得点換算とは、自分の持っている外部検定のスコアを、共通テストや大学の個別試験の英語試験における点数に換算してくれるものです。例えば武蔵野大学では、英検準1級相当のスコアを持っていれば、一般選抜でもスカラシップ選抜においても、英語の得点を95 点として判定し、共通テスト利用選抜なら共通テスト英語の得点を190点とみなすとのことです。ただし、当日の筆記試験が免除になる大学もあれば、筆記試験は必須でどちらか得点の高いほうを採用する大学もありますので、必ず事前にチェックしてください。
 加点とは、文字通り試験の得点に外部検定の結果を上乗せして判定する仕組みです。例えば早稲田大学国際教養学部では一般入試で外部検定のスコアが20点を上限に加算される仕組みになっていますので、準備していないと他教科で20点分挽回しなければ合格の可能性が低くなってしまいます。
 「大学入試なんてまだまだ先のこと」とお考えの保護者の皆さまには、フェリス女学院大学が2022年の一般選抜(3月実施)で実施した、英検の得点を利用した「英語外部検定試験利用型」の入試システムを覚えておきましょう。従来実施していた英語1科目入試を英検の結果で判定する仕組みで、受験生にとっては、共通テスト利用入試と同様にわざわざ試験を受けに行かなくても判定が出る点でメリットがあり、しかも英検の結果のみを判定の材料としている点で出願のしやすさにも注目すべき点があります。コロナ禍の推移が不透明な中、今後この入試方式を採用する大学が増えるかもしれません。
 これは一例ですが、外部検定を利用することによって入試システムそのものを変更する動きはすでに登場しています。かなり進んでいるのは立教大学で、全学部で外部検定のスコアまたは共通テストの英語成績を利用するため大学独自の英語試験が行われません。両方の場合は高得点のほうが採用されるので、外部検定のスコアを準備しているほうが有利であることは間違いありません。我々保護者世代の入試システムや受験の経験談は通用しなくなってくることでしょう。

 英語の外部検定に対する準備の是非は当然ありますが、私立大学の受験・進学を念頭においた場合にはもちろん、現在小中学生のお子さまが大学入試を迎える頃には国公立大学の受験においても、一部を除く多くの大学で外部検定のスコアが何らかの優遇措置となることでしょう。外部検定の結果が英語の試験の代替となる(英語の試験が免除になる)ケースでは、従来英語に要していた受験勉強の時間と労力を他教科に振り分けることが可能になりますから、そのシステムを利用するか否かで受験勉強の進め方そのものが変わってくるのです。
出典 旺文社教育センター「外部検定入試 2022年は424大学!」

vol.168 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年4月号掲載

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