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Vol.170 コロナ禍2年目(2021年)の学習指導にはどんな変化があったの?(小学校編)

 新型コロナウイルスが我々の生活に影響を与え始めてから早いもので3回目の春を迎えました。コロナ禍による制約に加えて学習指導要領の改訂も重なったため、小学校の学習指導には様々な変化が生じているようです。臨時休校からスタートした2020年、昨年(2021年)そして今年(2022年)と、制約が緩和されるにつれてその変化は本格化しています。先月の中学校編に続いて、今月は小学校の状況について、全国の公立小中学校教員を対象として行なわれた調査結果を基にご紹介していきます。

コロナ禍の中、小学生の学習内容にはどんな変化があったの?

 まずは小学校における宿題の出し方や内容を見てみましょう。調査結果では「平均35分かかる量」を「ほぼ毎日」出しているとのことですが、その内容は2020年と2021年を比較しただけでも大きな違いが生じています。表1をご覧ください。

例1

 2020年は臨時休校によって遅れた学習内容を消化するために「基本事項を、スピードをあげてとりあえず終わらせる授業」を展開せざるを得なかった影響が宿題の内容からも見てとれます。2021年に「前の学年の学習内容の復習」が15・4ポイント上昇しているのは、それだけ子どもたちの理解度や基礎学力の定着度にあやふやな点が散見される証であることを覚えておいてください。
 次に、新学習指導要領の全面実施(2020年スタート)によって今後小学校での学びが変わっていくであろう項目にもご注目ください。11・6ポイントの上昇となった「作文やレポート」については、先月中学校においても14・6ポイント上昇していることをお伝えしました。2021 年のデータでは低学年(39・6%)と高学年(42・2%)と、学年差では顕著な差が見られず、学校全体あるいは担任の先生の方針に左右されていることが推測できます。しかしながら長期的に見れば数値が上昇していくことは明らかなので、小学校で出される宿題も我々保護者世代に比べると何倍も多様なものになっていくことが予想できます。
  また、コロナ禍の影響もあって話題に上る機会は多くありませんが、2020年から小5・小6で英語が教科になっていることにも注目しましょう。小学校の先生方が英語をどのように指導しているのか、次の表2をご覧ください。

例2

 2020年、2021年で変わらず重視されているのは「英語を話すこと」であり、「英語を聞くこと」を重視する割合が16・1ポイントも上昇しています。これにより「話す・聞く」と「読む・書く」の差が鮮明になってきました。
 この傾向が強まれば強まるほど忘れてならないのは「中学校の英語では読む・書くが重視される」ことです。現在中1英語の教科書は「小学校である程度の単語は学んでいる」という前提で作られていて、某社の中1教科書ではLesson1に入る前の導入の時点で、1月~12月、日曜~土曜までの単語が登場しているのです。現在の小学生は小学校(小3~小6)で600 語~700 語、中学校で1600~1800語、あわせて2200~2500語の単語を学びます。2000年代の中学生が3年間で学ぶ単語数が900 語程度、2010 年代の中学生は1200語程度だったことと比較すれば、保護者世代が経験した学習ペース(私の記憶では「中1最初の定期テスト」がせいぜいアルファベットに簡単な単語しか出題されていなかった)はまったく参考にならないことがおわかりいただけると思います。「スペルを目で確認して手で正しく書く」練習をしていない子にとっては、中学入学直後に課される単語のハードルが相当高いので注意が必要です。文法事項においても、小学校では話す・聞くが中心ながら、疑問詞や代名詞、動名詞に助動詞、そして動詞の過去形まで用いた基本的な表現を扱います。これらは我々保護者世代が中1どころか中2で学んだ内容まで含まれているのです。なんとなく知っている程度の理解度で中学校に進学すると授業内容のギャップに戸惑う場面が生じることでしょう。小学生のうちに学校の授業や宿題とは別枠で「英単語を書いて覚える、文法も点検しておく」時間を設けることをお勧めします。

小学校の授業実態は世の中の変化の象徴

 小学校の授業や指導方法(表3)を見ると、先月紹介した中学校編と同様にグループに分かれて話し合いをしながら理解を深める「アクティブ・ラーニング型」の授業、あるいは自らが能動的に情報を集めて加工し表現(発表)するスタイルの授業が、感染状況との兼ね合いがありながらも増えていることがわかります。

例3

 ここでは30ポイント以上の急上昇となっている「体験的な学びを取り入れる」にご注目ください。とある先生に伺ったのですが、例えばサバナ気候について説明するときに「獲物を狙うライオンが潜んでいる草原」と言えば、昔の子どもはイメージを頭に浮かべることができたそうです。現地で体験したことがある子はほとんどいないはずで、皆TVなどで視聴した経験が記憶に残っていたわけです。ところが現在の小学生はデジタルネイティブ世代、視聴する動画を取捨選択できる環境で育っているので、まったく想像がつかない・見たことがないという子どもが少なくないそうです。こうした記憶がないまま中学で世界地理を勉強しても「サバナ気候」という語句と自分のイメージが一致しないので、ただの暗記になってしまい定着しないし興味もわかないという負の循環に陥ることになります。同様の事例が特に理社では多々あって、中学校の授業についていけなくなる理由の一つになっているとのことでした。
 「放っていても子どもが勝手にTVを見て『これ知ってる!』となる時代は終わっている。学校だけじゃなく保護者も意図的に情報を見せ、経験させ、記憶に残させる努力をしないといけない時代なんだ」という先生の言葉が、子どもを取り巻く環境の急激な変化を端的に表していると私は思います。
出典:ベネッセ総合教育研究所「小中学校の学習指導に関する調査2021」

vol.170 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年6月号掲載

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