子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

HOME > 教育の現場から > Vol.172 大学進学を目指す高校生の進路選択過程が急激に変化している

Vol.172 大学進学を目指す高校生の進路選択過程が急激に変化している

 コロナ禍で世の中が揺れた2年あまりの間で、大学入試を取り巻く環境も大きく変わっています。大学入学共通テストのスタートといったシステムだけでなく、高校生の「大学の選び方」「入試方法」といった進路選択の過程にも変化が生じているようです。保護者のみなさまが高校生だった頃を思い出しながら読み進めてみてください。

行きたい大学へ確実に進学できる時代がやってきた?

 これからご紹介するデータは、リクルート進学総研が2022年春に大学へ進学した学生に対するアンケート結果です。資料1をご覧ください。

例3

 第1志望の大学への進学者は68・3%で、コロナ禍前の2019年より14・8ポイントもの大幅増加となっています。特に総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(公募推薦・指定校推薦・自己推薦)を利用した場合、第1志望の大学への合格率が86・6%と非常に高くなっているのです。
 この結果に対して2つの要因が考えられます。1つ目は「コロナ禍の中、大学選びのための情報収集に制限がかかった」ということです。このアンケート結果によると、2 0 2 2年春の大学進学者のうち高校2年(2020年)時にオープンキャンパスへ参加できた割合は29・1%と低くなっています。2019年、2016 年の進学者は、高校2年時のオープンキャンパス参加率がいずれも70%前後に達していますので、この影響は大きかったと思われます。しかしながら、彼らは最後まで大学に足を運ぶことなく進学先を決めたわけではなく、今春から通い始めた大学のオープンキャンパスに限って見れば高校3年間のトータルで71・2%の人が参加しているというのです。
 つまり、今春の大学進学者の傾向として「事前にネットなどを使って入念に情報を集め、大学を吟味して志望校を絞り、最終確認としてオープンキャンパスに足を運んだ」ことがうかがえます。その上でその大学に進学できる可能性が高い入試方法(総合型・学校推薦型選抜)を選択しているのです。筆記試験を課す割合が圧倒的に高い国公立大学ではなく多様な入試方法を用意している私立大学を志望するのであれば、コロナの影響に関係なくこのスタイルは今後ますます受験生とそのご家族に受け入れられることでしょう。昭和の「たくさん受験して合格した大学の中から進学先を選ぶ」という受験パターンがすべてではなくなっていることを、我々大人が理解しておく必要があります。
 2つ目の要因として、コロナ前に話題となっていた首都圏や関西圏の私立大学(特に文系)の一般入試難化の影響が挙げられます。「大学の定員管理の厳格化」という話題を覚えておられる方もいらっしゃることでしょう。詳細は省きますが、この施策によって特に大規模な私立大学では一般入試の合格者を厳しく絞る必要にせまられたのです。その結果、受験生にとっては「難化しているから安全策で併願校を増やそう」という心理が生じ、金銭面での負担が増しました。私立大学側にとっては「入学者数が確実に見込める総合型選抜の入学者を増やす」のは当然で、コロナ禍の前から様々な改革を模索していました。早稲田大学は、コロナ前の段階で募集定員全体に占める割合を一般入試と逆転させて、総合型選抜を経た入学者を6割まで引き上げる目標を掲げていましたし、慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部(SFC)は、2021年度入試からAO入試の受験機会を年4回とし、それぞれ100名だった定員がいずれも150 名(合計300 名)と50%増員し、その一方で一般入試の定員は各学部50名ずつ減らしたのです。
 こうした背景は、国公立大学志望者には関係ない部分がありますが、私立大学志望者にとっては「一般入試離れ」の大きな原因の一つになったことが推測されます。

「大学入試は年内に終了!」が当たり前の時代になる?

 続いて資料2をご覧ください。大学入試では、毎年1月に実施される大学入学共通テストを皮切りに多くは2月中に一般入試が行われます。その一方、総合型・学校推薦型選抜は早いと9月頃から選考が始まり、多くは年内で終了します。総合型・学校推薦型選抜を利用する受験生の増加が「年内入試で合格を決めた」割合の上昇ペースからうかがえます。2022年春には、年内入試合格での進学者は47・0%と前回調査より7・9ポイントも増え、ついに年明け入試(一般入試)に肉薄しました。男女別に見ると、女子ではすでに年内入試で合格を決めて受験を終了するほうが多数派になっていることを知っておきましょう。

例3

 私自身が保護者として子どもの大学入試を間近で見てきた経験を思い出すと、受験当日に大雪が降って駐車場から車を出すのに苦労したこと、とにかく一校合格通知をいただけたことで安堵したこと、などから「受験を早く終えられるならばそれに越したことはない」という想いが強くあります。「推薦入試なんて受験じゃない!」とおっしゃる保護者や高校の先生が今でもいると予備校の先生から聞かされる機会が多々あるのですが、みなさまのお子さまが大学入試を迎える頃に「時計の針が逆回転して資料2の傾向が止まり、大学入試の動向が昔に戻る」ことは考えにくい状況です。どうかみなさまは世の中の変化に対応して情報をアップデートしておいてください。

お子さまの中学・高校選びにも影響がある?

 こうした変化を知っておくと、お子さまの高校選び(あるいは私立中学選び)にも影響がありそうです。中学・高校選びのポイントは様々あって、大学入試だけがすべてではないことは承知していますが、高校入試を経る場合には、偏差値だけでなく進学先の高校の進路動向にも注目し、お子さまの適性や将来の目標を大まかに見据えて、ミスマッチを防ぐ必要が生じます。
 総合型・学校推薦型選抜には高校時代の評定平均を出願基準とするケースが多いので、この制度を使える大学を目指したいなら、ギリギリの成績で自分の実力より高い高校に入学しても高校時代の評定が取りづらくなることは容易に想像できることでしょう。
 中高一貫校から大学入試を迎える場合には、中学時代などに一回勉強や生活のリズムが崩れてしまうと元に戻すのに時間がかかることを知っておき、総合型・学校推薦型選抜を視野に入れるならば、中学時代から油断せず評定はしっかり取り続けるよう保護者が管理することをお勧めします。

vol.172 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年8月号掲載

一覧へ戻る
春の入会キャンペーン
無料体験キット