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Vol.175 保護者こそ知っておきたい新科目「公共」の中身

 40年の長きにわたって高1で学習していた「現代社会」が、この春から「公共」という新しい科目に変わったことをご存じでしょうか。世の中の変化に伴って高校生が知っておかなければならない基本知識は大きく変わっています。その土台はもちろん小中学生の間に培われるべきものであり、我々が子ども時代には想像すらできなかった準備が求められつつあります。

新科目「公共」が誕生した理由

 我々保護者世代が高校生だった頃には信じられなかったことですが、18歳で選挙権を得られるようになった現在では、高校3年の教室の中に「一票を通して世の中に意見が言える、社会的に責任を持つ大人」が混在しています。一票を投じる理由は経済や政治、あるいは日常の生活を基準にするなどさまざまですが、無責任な理由ではなく一人の大人として社会に参加するために、必要な知識を学ぶことはもちろん、さまざまな社会的課題に対して適切に判断し、解決する力を身につけていなければなりません。新科目「公共」は、在学中に選挙権を得る高校生に主権者としての自覚や役割を教育するために高1もしくは高2の必修科目として登場したのです。
 1982年に「現代社会」が登場したときには、地球環境やエネルギーの問題などが新しいテーマとして取り上げられましたが、今回の「公共」では法律・政治・経済が幅広いジャンルで扱われます。少子高齢社会における社会保障、安全保障や国際貢献といった大きなテーマから、消費者教育(各種契約に関すること)、情報リテラシー(ネット上のトラブルを想定した著作権や個人情報管理など)といったこれまで学校では学ぶ機会のなかったものまで題材となっています。著しく変化する世の中で、高校生たちが自らの人生を歩いていくために一度は考え知識を得ておかなければならない課題ばかりです。
 授業の進め方も従来の座学中心ではなく、グループワークや討論・ディベートも取り入れ(現在はコロナ禍で十分に取り組めていない可能性がある)、主体的に参加し自分の意見を選択・決断する過程を経験していきます。例えばコロナ禍における政府の対応がわかりやすいのですが、世の中には「唯一、絶対の正解」などない場合のほうが多いはずです。たくさんある「正解の可能性」を吟味し、その中から最適解と思われるものを決断して選択しているはずです。この「公共」の授業は、従来のようにある事象について一方的に教師が正解を教える場ではなく、たくさん考えられる「正解の可能性」の背景や他人の考え方に触れ、自分なりの考えを構築するための練習の場と位置づけたほうが良いかもしれません。

大学入試問題はどうなるの?どんな準備をすればいいの?

 新科目「公共」が必修科目である以上、大学入試への対応が気になるのは当然です。ところが授業では、前述のように「教科書の重要語句にマーカーを引いて、先生の説明をノートに写して覚えテストに備える」形態とは限りませんので、どのような準備をすればよいのか戸惑う生徒も出てくることでしょう。大学入学共通テストでは、現高1生が大学入試を迎える2025年1月からのスタートに備え、すでにサンプル問題が公表されています。

例1

 紹介している問題は「生徒による模擬国会」がテーマです。他には「食品ロス問題解決にむけての考察」「SDGsに関する生徒の探究学習」が大問として扱われています。いずれも生徒が授業中に議論している場面を再現しようとしており、共通テストの他教科に見られる「生徒同士の会話文」を読み込む必要があります。また、図表や資料の情報量は従来の「現代社会」よりも増えることが見込まれており、普段から情報を早く正確に読み取る力を身につける必要があります。
 そのため、問題として紹介されるテーマの予備知識は不可欠です。これまで以上に知識を持っていることの重要度は増してきます。さらに、公立中高一貫校の検査問題に類するような「情報を読み取って、すばやく整理する経験」が必要になります。ただし、これらは大学入学共通テストに限った話であって、今後ますます活況になるであろう「総合型選抜(旧来のAO入試、推薦入試)」における小論文や面接では、普段の授業で身につけた経験がより試されることでしょう。
 例えば「ウクライナへのロシアによる侵攻」を挙げると、中3生で関心を持って自分で調べている生徒はとても多いのですが、残念ながら現在の仕組みだと高校入試には直接的な影響はなく、彼らの好奇心が受験の得点につながるとは限らないのです。今回スタートした「公共」という教科が彼らの関心や好奇心と受験を結びつける役割を果たすことで、小論文や面接あるいは現代文などの評価・得点にも好影響を及ぼすことでしょう。

小中学生も世の中に無関心ではいられない時代へ

 これだけ多様な題材を扱う「公共」ですから、忙しい先生だけの知識では補えないような専門性が必要となる場面もあることでしょう。すでに弁護士が外部講師として「公共」の授業に登壇したという報道を目にしたことがありますが、地域によって学校によって弁護士や医者、IT関係の専門家から場合によっては選挙管理委員会の協力を仰ぐ機会も出てくることでしょう。OB・OGの存在や学校の立地によっても実現度合いに差がつくでしょうから、長い目で見れば「公共」で学習する内容の深さは学校によって千差万別になることが予想されます。いま「どうせなら深くしっかりと学べる機会のある高校に行ったほうがよい」とお考えになった方は、お子さまの進学先を選ぶ際の1つのポイントとして覚えておかれることをお勧めします。
 ご家庭では、お子さまが広く世の中の事象に関心を持つような仕掛け作りも必要です。毎日ニュースを一緒に見て意見を述べ合う、あるいは「なぜ? どうして?」と自問自答する習慣を小学生のうちから少しずつ育てておきたいところです。新科目「公共」の授業スタンスは、小中学校の授業におけるアクティブラーニングと結びついていますから、今後積極的な子はこれまで以上に貪欲に知識を吸収し、受け身な姿勢で学ぶ子との差を拡げていくことでしょう。勉強に対する姿勢はもちろん、勉強の楽しさを早く知っておくことの大切さをこの科目が教えてくれているのです。

vol.175 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年11月号掲載

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