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Vol.176 中学生になっても影響する「算数」の弱点はここをチェックして!
現在(2022年秋)中学2年生の生徒たちを指導していて、例年以上に「比を使いこなす練習が不十分」という印象を受けています。文章題でも一次関数でも、中2の学習では「比」の習熟度が学習内容の理解に大きく影響を及ぼし、どれだけワークなどで学習量を増やしたところで効果が得られないからです。生徒たちに話を聞いてみると、どうやら「(習ったことを)忘れた」ではなく「最初から理解できていなかった」ケースが多いのです。
小学5年生・6年生の学習は「慣れるまで継続」が鉄則
この原因について、私もみなさまもおそらく同じことを想像されるでしょう。それは「彼らは小6のときにコロナ禍の休校騒ぎに巻き込まれ、カリキュラムが早回しで進んだ」学年である点です。
小6で一番重要な単元「比」は、例年9月頃から学習が始まり卒業までの半年弱で何度も復習することで定着を目指します。それでも理解があやふやなまま中学へ進学する生徒は大変多いため、前述の一次関数などの単元学習時はもちろん、高校入試に向けての受験勉強時に苦しむことになります。この「比」の学習時期が後ろ倒しになった2020年度は、おそらく多くの小学校で充分な復習・演習の時間をとれないまま子どもたちを中学に送り出しているはずです。これは当時の小6に限った問題ではありません。当時の小5(現中1)では「割合」の学習において同じ課題が生じていないはずがありません。それを裏付ける資料をご紹介します。
令和3年度(2021年度)「埼玉県学力・学習状況調査」で出題された算数の問題をご覧ください(資料1)。
正解は「9/2L(または4 1/2L)」
なのですが、正答率はなんと6.2%と大変低いものでした。もちろん、問題の指示を無視して「4.5L」と書いた児童が18・5%もいたことが一因として挙げられますが、それを加えたとしても正解者が約25%(4人に1人)しかいないことに衝撃を受けました。小学生の指導でよく見られる「式を書いて求めましょう」という指示にしたがえば、
15 ÷10 ×3
を計算するだけなのですが、小5で学習したはずの「10等分→ ÷10 」を理解できておらず式で表せない子が多いという実態が浮かび上がってきます。
次の資料2もご覧ください。
現中2が中学入学時に解答したこの問題では、正答率が42・9%とのことです。資料1の解答状況よりも良いようにも見えますが、新中1の半数以上が間違えているという点で危機的な見方をするほうが適切だとお考えください。解いたのに間違えたというケースでは、2/3dLと2/5㎡という数字だけを見てかけたり割ったりしてみただけという事例が大変多くなります。例えば、誤答例として紹介されているのが「5/3㎡」で24・6%(4人に1人)なのですが、これは単純に
2/3÷2/5
と、意味を理解しないまま計算方法だけ追い求めていた結果です。正しくは、
□÷2/3=2/5
と立式すればよいのですが、比を学習した後ならば、
2/3dLで2/5㎡→(3倍して)2dLで6/5㎡→(2で割って)1dLで3/5㎡
と頭の中で処理するだけで済みますから、無理して立式する必要もありません。
この作業は、感覚をつかんで使いこなせるようになるまで何度も何度も練習する必要がありますが、きっかけを保護者が与えておけば小5の時に感覚を身につけてしまうことは大変なことではありません。小6であれば比の学習が始まる前に必ず割合を復習しておくこと、小5生の保護者の方はたとえ割合が未習であったとしても、「○%増量」や「○割引」といった表現を目にした機会などをきっかけにして、その際にどの程度お得になるのか具体的に考える、あるいは消費税の計算について考えるといったことを、お子さんと一緒になって面白がってやってみることが大切です。
小学4年生が問われる「保護者世代が習ってない」視点
最後に、資料3をご覧ください。
このグラフのように、情報は加工することで、いかようにも印象を変えることが可能なのです。チラシやCMからプレゼン資料に至るまで、私たちが普段目にする情報の中には発信側の意図に基づいて加工されているものがあるかもしれません。小学・中学・高校と一貫して学ぶ「データの活用」を通して、統計的な記事や報告を読む際のポイントを身につけ、小学生のうちから「加工された情報にだまされない目」を養うことが目標になっています。情報時代、算数の学びを作業から思考へと変化させるべきタイミングが早まっています。普段の生活で意識しておかないと大人でも間違えるのですから、お子さまの学習状況をこの単元でもチェックしてあげてください。
出典:令和3年度「埼玉県学力・学習状況調査」報告書学習のポイント
vol.176 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年12月号掲載