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Vol.178 消えゆく公立高校の「推薦入試」、本当にもう価値はないの?

これまで何度かお伝えしてきていますが、近年の大学入試では私立大学を中心に総合型選抜と呼ばれる入試システムが急激に普及し、推薦入試の価値が高まっています。その一方、全国の公立高校入試に目を向けると、この10年ほどの間で学力回帰の傾向が強まり「従来型の推薦入試」を廃止する地域が続出しているのです。「推薦入試」の価値は15歳と18歳ではそんなに変わるものなのでしょうか。

公立高校の「推薦入試」が衰退した理由

 90年代から00年代にかけて、ほとんどの地域で公立高校の入試には「推薦入試」と「一般入試」の2種類が用意されていました。ところがこの10年ほどで脱ゆとりの路線にしたがって多くの地域が学力重視の判定に回帰しており、推薦入試の仕組みそのものを廃止したり、学力試験も課す新たな仕組みにリニューアル(校長推薦を必要としない仕組みや、特色化選抜などの名称への変更)したりする動きが現在も続いており、今春(2023年春)からもいくつかの県で新しい選抜方法がスタートします。
 保護者の皆さまが中学生時代に運用されていた、中学校長の推薦が必要な「推薦入試」が公立高校入試で現在なお続いているのは、首都圏では東京のみとなっていることを覚えておいてください。私の住む埼玉県では、2009年頃には学力検査を必要としない「推薦入試」で公立高校進学者の4割程度が合格を手にしていましたが、現在はこの仕組みそのものが廃止されていて志願者全員に5教科の学力試験が課されています。

東京都の「推薦入試」では何が問われる?

 そんな中、首都圏で唯一「学力検査のない推薦入試」を続ける東京都の試験内容をご紹介します。小論文もしくは作文と集団討論が課せられており、誌面の都合もあって大学合格実績が注目される一部の高校しか紹介できていませんが、その内容の一部を参考1・参考2で紹介していますのでご覧ください。参考1の小論文・作文では、課題のテーマのみならず制限時間に対する分量(文字数)にもご注目ください。その場で与えられた課題に対し、自分の考えをまとめ、構成まで考えてこれだけの分量を記述するには、社会の様々な事象に対する幅広い関心はもちろん国語力もかなりのレベルが要求されます。中堅レベルあるいはそれ以上の大学入試で課せられる小論文の内容と比べても遜色ないことがおわかりいただけることでしょう。参考2の集団討論では、与えられる課題の多彩さに加え、考える時間がどこの高校でも5分弱しかないことをご確認ください。普段から様々な事象への関心・問題意識を持ち続けていないと考えをまとめることすら難しい話題もなかにはあります。例えば三田高校の「高齢者の運転免許返納」では、自分の親族や周囲に該当者がいるかいないかによっても意見の具体性や説得力に違いが生じることが想像できます。立川高校の「新しい道具を考える」という話題では、皆さまは5分でとっさに思いつくでしょうか。もしかするとお子さまのほうが実用的で大人をうならせるようなアイデアが出るかもしれませんね。

例1

 集団討論でもう一つ注目したいのは自由討論です。就職活動におけるグループディスカッションと同じで、自分の主張を一方的に話すだけでは評価されることはありません。他人の考えを尊重しながらも自分の主張に納得してもらい、全員が満足するゴールを想定して会話を続けなければなりません。
 先に話して突破口を開くほうが得意なのか、それとも後から話すのか。進行役がいない場合にはチーム内での役割分担も考えながら、となれば中学生といえども普段から建設的な議論やその雰囲気に慣れていることも必須条件になることでしょう。入試突破を目標にした小手先のテクニックだけを身につけても対応できないことがおわかりいただけると思います。中3段階でこうした選抜方法を得意とする生徒であれば、ペーパーテストで測る学力とは別の尺度でかなり優秀であり、将来多方面で活躍できる下地を持っていると言えるでしょう。自分の強みを活かせるので大学入試における総合型選抜や就職活動においては相当に有利であることが推測できます。

入試制度とは関係なく幅広く世の中に関心を持つことが大切

 我々保護者世代が子どもだった頃に比べると、良くも悪くも今の子どもたちは世の中とつながる機会が段違いに増えています。良いほうに目を向ければ、世界中のニュースに触れられることはもちろん自分が関心を持ったことに対してSNS等を通して直接その道の第一人者にコンタクトを取ることだって可能です。百科事典を隅から隅まで読んで知識を吸収していた時代とは違います。子ども自身にその気があれば、保護者の適切なサポートがあればどこまでも可能性は広がり成長できる時代です。特に中学生になると、毎日忙しくてどうしても視野が狭くなりがちですから、世の中に無関心で毎日を過ごす子との差はこれから先ものすごいスピードで開いていきます。学力回帰の傾向が顕著だからこそ、参考1参考2について堂々と自分の意見を述べられる視野の広い中学生は貴重であるはずです。その土台は、受験を意識しなくて済む時期に何でもいいから自分が興味を持てるものに出会い、それを深く掘り下げる経験の積み重ねによって作られるのです。

vol.178 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2023年2月号掲載

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