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Vol.188 文系を選ぶ子、理系を選ぶ子、何を重視して決めているの?
多くの高校では、高1から高2に進級するタイミングで「文理選択」があります。これは、世の中の景気(就職活動の状況)と連動する傾向があり、コロナ禍前の数年のように就職事情が活況の際には文系志向、不安定な時期には女子の医療系を中心とした理系志向が目立ってきます。お子さまもあと数年後に直面する進路選択について、高校・大学生の先輩方が回答した文理選択に関するアンケート結果を紹介していきます。
文系・理系はいつから意識すればいいの?
今回は、理系選択者の動向を中心にコメントしていきます。みなさまが文理選択の決断をしたときのことも思い出してみてください。いつ頃から、何を重視して決めましたか。まずは、表1をご覧ください。
理系進学者に限ると、中学生あるいは高校受験時までに4割弱がすでに決めています。もちろん「自分の適性がわからない」「どちらにするべきか迷う」生徒もたくさんいるはずです。ただし、理系進学の場合、目標決定が早ければ早いほど多くの受験生を悩ませる数学への取り組み(先取り学習や入試問題への挑戦など)が有利になりますから、できれば高校入学時には方向性を決め、高1から必要な準備を進めておきたいところです。文系進学の場合は、高校後半~受験直前期の間に文転する人が昔も今も一定数いますから、高1冬の段階で自分の適性を見極められなくても理系に比べれば焦る必要はありません。
文系・理系を決めた理由
表2と表3では、文系・理系を選択した理由を紹介しています。「学べる内容に興味がある」という項目の数値が高くなるのは当然として、文系と理系で選択理由に明確な差がついているものにご注目ください。文系選択者においては、特に女子で「理系科目が苦手だったから」の項目が「得意だ」「興味がある」といった積極的な理由よりも高いことがわかります。理系を選択した女子が、文理選択時に科目の得手不得手をそれほど理由として判断していない(表3参照)ことと比較しても、高校入学~高1夏休みの間で「理系科目への苦手意識」を持たないことが自身の将来の選択肢を広げるためのポイントになっているようです。
文理選択時に抱えた悩み
ところが、文理選択決定までの途中経過に注目すると意外なことが見えてきます。表4と表5をご覧ください。理系を選択した女子の約6割が「苦手科目があって不安だ」と答えています。簡単にいえば、自身の中で理系科目(おそらく数学)に対する不安を抱えているのは皆同じで、「それでもチャレンジする→理系」「苦手だからあきらめる→文系」といった構図になっているのです。
もう一度、表2と表3をご覧ください。文系理系の選択に際して、自分の選択した進路に関連する科目が「得意だった」と答えた割合は男子では文系・理系で変わりませんが、女子だと理系のほうが文系より20ポイント以上低くなっています。得意ではない、むしろ苦手という教科について、そこであきらめてしまうのかそれとも粘り強く向き合い続けるのか。これは「本人の属する環境、周りにいる人から受ける影響」によって、大きく変わってくると私は強く思います。
数学が苦手で心が折れそうになったときに、絶対に大丈夫だからと背中を押してくれる人がいるかどうか。一緒に歩みを進められる友人がいるかどうか。想像してください。周りが私立文系への進学を目指した準備をする中、ひとり理系に向けて準備を進めることができるでしょうか。
少なくとも理系進学を目指すなら、早めに決断して同じ目標を持つ仲間がたくさんいる高校に進学したほうがよいでしょう。また、ご家庭の方針や理解、応援も不可欠です。どうか「数学苦手でしょ、無理だよ」なんて言わずにお子さまをサポートしてあげてください。苦手意識を持っている子のほうが多いのですから。
出典:Studyplusトレンド研究所「文理選択に関するアンケート調査」より
https://www.trend-lab.studyplus.jp/post/20230824(参照2023-11-7)
vol.188 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2023年12月号掲載