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Vol.189 「オンラインとの上手な付き合い方」はいつ学ぶべき?

 秋以降、小中学生の間では体調不良者が続出しています。ところが、集団塾ではオンラインで自宅から授業に参加できる仕組みや録画による授業の視聴が一般的になって欠席対応はコロナ禍前とは様変わりしています。オンライン専門の塾や家庭教師の存在も知られるようになって、一部の小中学生と保護者にとってオンラインは当たり前のツールになっています。一方、2020年の一斉休校以来オンライン授業とは無縁という子どももたくさんいて、オンラインを使いこなす経験値の差は年々広がっているように感じます。今後彼らが大学生・社会人と成長するにつれてこの差がどんな影響を及ぼすのでしょうか。

オンライン面接・テレワークは今後当たり前になっていくの?

 今回ご紹介するデータは、コロナ禍によって最も景色が変わってしまった「就職活動」の周辺に関する調査結果です。2023年春入社の新入社員は、大学2年の春からコロナ禍に巻き込まれ、学生生活はもちろん就職活動まで先輩たちとは違う環境で歩むことを余儀なくされました。そんな彼らがオンラインやテレワークに対して抱く積極的な印象は、コロナ禍前に逆戻りすることはないだろうと表1のデータが教えてくれています。これは小中学生にとっても「オンラインとの上手な付き合い方」が問われる場面がいずれ来ることを意味します。
 就職活動時の面接については、オンラインでのやり取りやカメラの使い方などすべてにおいて慣れているからでしょうか、「オンラインの方がやりやすい」と回答した人が前年に比べても5ポイント増、すべてが手探りだった2020年就活組に比べると2倍に増えて過去最高になっています。あと5年10年もすれば、就活時の面接はもちろん大学入試(総合型選抜)の面接もオンラインの利用が標準になっていることでしょう。次に、テレワークに関する意識を表2で見てみましょう。
 テレワーク制度については、「利用したい」と回答した割合が過去最高の85・4%となりました。コロナ禍をめぐる世の中の情勢が変わったことでテレワークを減らす企業も増えていると聞きますが、新卒採用の面で見れば学生時代からテレワークの感覚に慣れている学生たちから見ればマイナス評価です。一方、学生にとってテレワークは評価が「成果主義」になることがセットなので、オンラインだから自分の部屋だからといって気を抜いたりサボったりすることはできないことを知っておく必要があります。これは小学生にとっても無縁なことではなく、こうした世の中の変化やニーズをお子さまに伝え我々の時代には想像もできなかった「オンラインだからといって手を抜かない勉強習慣の確立」にトライさせる必要が生じています。この部分について、さらに詳しくご紹介していきます。

(表1・表2)

テレワークをしたくない理由から見える自己管理の難しさ

 今度は新入社員が「テレワークをしたい/したくない」と考える理由に注目してみます。表3・表4をご覧ください。
 表3では、2023年に初めて「時間を有効に使えるから」が「通勤電車の密を避けられるから」を上回りました。テレワークを求める理由が、とうとう「通勤電車がイヤ」というネガティブなものから「時間を有効に使いたい」というポジティブなものに変わったのです。この変化は、おそらくそれほどの時間を置かずに学生の「オンライン授業」についても同様の変化が見られることでしょう。
 一方、表4のテレワークをしたくない理由に目を向けると、半数弱の人が挙げている「仕事上の質問や確認がしにくい」はもちろんですが、2022年から2023年で24・6ポイントも増加した「一人で仕事するのが不安」にご注目ください。これは「仕事の成果に対する不安」だけではなく「ついつい自分に甘えてしまう」ことへの不安だと読み取るべきです。この数値は、一斉休校時に高校生・中学生だった世代が新社会人になるまで、おそらく増加し続けることでしょう。
 私が見ている限り、オンライン授業においてはカメラをONにすることが求められていればまだしも、大学生のみならず中学・高校生でも身だしなみを気にしてカメラをOFFにしたがる傾向にあります。すると、寝転んで映像を見ていてもダラダラしていても注意されることがありませんから自分に甘えてしまう(授業に集中せずスマホで別のことを行うなど)可能性は高くなります。
 もちろんテレワークでも同じことが起こりうるわけで、現在を過渡期として今後わが国でテレワーク導入が進めば進むほど多くの企業が「採用する人材のチェックポイントを変える」ことになるでしょう。もしかするとちょうどその転換点に立つのが現在の小中学生、すなわちみなさまのお子さまかもしれません。その可能性はけっして低くないはずです。
 とするならば、現在小学生のお子さまにはオンライン授業や映像教材を「どうせ効果が出ないから」と遠ざけるのではなく、画面に向かっていながら自分で自分を管理する経験の場にしてあげたいところです。新社会人だって不安視する割合が高いのですから、最初は「ただ動画を見ただけ、何も頭に残っていない」結果になることだってあるでしょう。その失敗も糧にして彼らに「どういう付き合い方をすれば効果が出るのか」を気づかせる必要があります。そのためには、ジャンルは何でもいいので保護者自身も一緒に「興味や関心を持って積極的に参加する」ことで見本をみせてあげることが一番効果的だと思います。

(表3)(表4)

出典「2023年度(第34回)新入社員の会社生活調査」産業能率大学総合研究所 2023年

vol.189 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年1月号掲載

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