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Vol.194 2022年を境に子どもたちの「時間の使い方」が変わっている!?
平成から令和、途中にコロナ禍を挟んだこの10年で、世の中は大きく変わりました。その中でも「時間の使い方」は、デジタルツールの普及などで我々大人が経験したことのない急激な変化が進み、これが子どもたちの未来にどのような影響を及ぼすのか想像できないために不安を覚えることがあります。今回は、すでに子どもたちに生じている変化を時系列で紹介しながら、我々大人が注意すべき点を考えていきます。
子どもたちの「時間の使い方」はどう変わった?
子どもたちの生活時間の変化に関する調査結果を紹介していきます。(表1)をご覧ください。2015年に比べて2023年を見ると、携帯電話・スマートフォンの使用時間が年代に関係なく増加していることがわかります。ほとんどの大人が「そりゃ増えているだろうな」という感想を持つと思いますが、実際に数値化された情報に触れてみると驚くばかりの結果なのです。
使用時間の増加割合は、この10年で小4~6年生で約3倍、中学生で2倍、高校生でも1.5倍となっていて、予想通り子どもたちが自由に使える生活時間のうちスマートフォンが占める割合が年々高まっていることは間違いないようです。また、コロナ禍の前から明らかな増加傾向にあったことも見てとれます。
次に、(表2)をご覧ください。子どもたちが家族と過ごす時間は、2015年からコロナ禍を経て増加傾向にあったのですが、2022年を境に減少に転じていることがわかります。特に小中学生の減り方は顕著で、子どもたちの生活時間に明らかな変化が生じていることを覚えておいてください。ただし、(表1)からもわかるように、減少した時間が必ずしもスマートフォンに使われているわけではなく、おそらく時間の使い方も「多様性」の時代になっていて、こうした調査では拾いきれないほど様々な選択肢が急激に普及しているのだろうと推測しています。私が知っている限りでは、大学附属高校に進学した生徒が高校生ながら「動画編集」の仕事を請け負って、在宅で自分の生活時間を使って仕事をし、得た報酬を浪費するのではなく投資に回している事例があります。
もう1つ保護者がチェックしておくべき変化が(表3)にあります。子どもたちの学習時間の総計も2022年を境に明らかな減少傾向に転じているのです。学校の宿題をする時間に限ってみると、中学生では2021年までおよそ1日50分程度で推移していたものが2022年には46.5分、2023年には44.6分と減少しています。小学生、高校生についても、詳細は省きますが同様の減少傾向なのです。
学校の宿題以外の勉強をする時間(学習塾を除く)も年代に関係なく2021年をピークに減少しており、特に高校生は2021年から2023年にかけてのわずか2年で20%も急減なのです。
そして、「大幅に時間を増やした項目が見当たらない」という事実もお伝えしなければなりません。(表2)(表3)で生じた余剰時間がどこに流れているのか、まだ明確な答えは見えていないのです。
時間の使い方や自己管理能力は早く学んだほうがいい
子どもたちの生活時間の使い方が2022年を境に変化しているという実態は、普段小中学生に接している自分でも気がついていませんでしたから、今回の調査結果を目にしてとても驚きました。そして、この結果を受けて私が子どもたちと向き合う際に注意すべきこと、みなさまがお子さまと向き合う際に注意すべきことを教えてくれました。
それは、この先の10年で、おそらく「自分に甘い人はどんどん置いていかれ、自分を正しくコントロールできる人には可能性が拡がっていく」二極化傾向が顕著になっていくことです。イチロー氏はかつて小学生に向けて「今は教える側が厳しく指導するのが難しい。そんな時代に誰が教育するのかといえば、最終的には自分で自分を教育しなくてはいけないという時代になったのだと思う」というメッセージを残しています。
世の中の変化に伴い、他人から厳しい指導や強制をされないというのは聞こえはいいですが、自分が身を置いた環境や経験・実績について、シビアに結果が求められる場面が多くなるであろうことを、小4〜6年生ともなれば想定しておかなければなりません。楽をしようとすればいくらでも手を抜ける時代だからこそ、自分の甘さと正面から向き合って改善できる人の魅力は高まっていくはずです。そのトレーニングを小中学生あるいは高校生の頃に経験したかどうかの差は、我々が子どもだった時代の何倍もお子さまの未来に影響を及ぼすことでしょう。
とはいっても、自己管理とはほど遠い日常を送る小中学生そして高校生が多いことも事実ですし、「小中学生にそんな自己管理なんて無理だよ」と考える保護者のみなさまも多いことでしょう。しかしながら、今回の調査結果からは、2022年を境に「自己管理できない状態を放置してはいけない」時代に転じていることが読み取れます。今日からでもできることを1つ2つと実行する必要があります。それを伝え理解させるのは、我々大人の仕事なのです。
出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2023」
vol.194 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年6月号掲載