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Vol.21 公立中高一貫校受検を考える前に

 

 昨今の景気動向が影響しているのでしょうか、最近保護者の方から「公立中高一貫校はどうなの?」という質問をよく受けるようになりました。費用面はもちろんのこと、質問してくる方に共通しているのは「公立中高一貫校であれば、それほどハードに塾通いをさせなくても、あるいは夜遅くまで勉強させなくても合格できるのではないか」という発想です。これはある部分では正解であり、ある部分では不正解なのですが(機会があればこの部分だけ別に扱いたいところです)。こうした発想を持つ方のほとんどが「公立中高一貫校のことはよく知らないのだけど、何となく公立中よりはマシかと思って」とおっしゃるのです。
 今回は、こうした質問を受けた時に私がどのような返答をしているか、その概要をお伝えしたいと思います。

異なる入学者選抜方法

 9月のある日、新聞に千代田区立九段中等教育学校に関する記事が出ていました。『中学段階を終えた1期生の生徒のうち、1割強に当たる18人が高校段階に進まず他の学校に入学した』というのです。
 この九段中等教育学校は06年に開校しているので、1期生が初めて高校段階(この学校では後期課程:4年生)に進んでいます。入学者は160人とされていますので、今春別の高校に進んだ「18人」という人数は、非常に重い意味を持ちます。
 報道では「学習態度に問題がある」などとして別の高校への進学を勧めた生徒が多く含まれていたとのことです。しかし東京都教委によると、都立中高一貫校で高校段階に進んだ生徒がいる学校(4校)あわせても、今年度内部進学せずに外部の学校に入った生徒は全部で5人程度だというのです。
 ここだけ切り取ってみると「なんて面倒見の悪い学校なんだ」と思われるかもしれませんが、少なくとも私が知る限り、06年の段階では先生方は毎日のように補習を組んで万全のフォロー体制を敷いていたことは事実です。また、学校説明会においては最初から「バリバリ勉強させます、進学指導に責任を持ちます」というスタンスを前面に押し出していました。ところがこの学校独自の事情によって、「区民枠」でも一定数を入学させなければならないため、入学の段階からある種の「矛盾」が生じていたわけです。09年度でも、この学校の入学者選抜の倍率は「区民枠」1.7倍に対し、「都民枠」10.0倍と大きな差がついています。この「区民枠」が決して『学力重視の選抜』になっていなかったことは、皆さんにも想像がつくのではないでしょうか。実際、高校段階に進まなかった18人のうち、16人がこの区民枠だったそうです。


6年一貫型と併設型

 公立中高一貫校には「完全一貫型(中等教育学校)」と「併設型(中学+高校)」の2種類があります。前者は高校から入学してくる生徒がいない分、6年間を通して無駄のない独自カリキュラムを組んで大学受験に備えます。九段中等教育学校も、上位レベルの私立に準じる形で『中高6年の学習内容を高2でほぼ終わらせる』カリキュラムを組んでいます。日々の授業のレベルもスピードも「かなり速い」ことは容易に想像ができますから、お子さまの性格やタイプ(処理能力が速いことが必須)をよく見究めておかないと、ミスマッチが起こることはある意味当然なのです。
 後者の場合、高校から入学してくる生徒がいるため、なかなか思い切ったカリキュラムを組むことができない学校が少なくありません。高校入学組と完全分離のタイプの学校であれば問題ないように思えますが、その場合でも「高校入学組が一貫性のカリキュラムに合わせる」スタンスをとれないと、学校運営上細々とした問題が生じるようです。高校入学組に合わせてカリキュラムをゆるめるようであれば、それはそれでせっかくの6年一貫でありながら、大学受験を考えた場合には心配になります。

 

主な併設型中高一貫校の1学年クラス数

  中学 高校
都立白鴎
都立武蔵
都立両国
千葉市立稲毛
県立千葉
さいたま市立浦和
埼玉県立伊奈学園 20

 ちなみに、私立であっても両方のタイプがあります。関東では年々高校での募集を停止する学校が増えており、「完全一貫型」で大学受験を目指すスタイルが主流になりつつあります。

より入念な情報収集を

 私の返答の概要が伝わったでしょうか。公立中高一貫校と聞くと、「新しい」「安い」といったイメージを思い浮かべる保護者の方が少なくないようです。しかしながら、実は学校ごとに方向性もシステムもバラバラなので、ある意味私立受験よりもしっかりした情報収集が必要とされます。また、公立である以上「校長の転勤」も避けられません。校長が変われば学校の方針そのものが変わってしまうことも不思議ではありません。入学した学校が「6年間同じ理念」で子どもに接してくれるのかどうか、まずはそこから確認してみてください。保護者の皆さんは「学校を見る目」を今一度養い、お子さんが最良の選択ができるよう導いてあげてほしいと思います。

vol.21 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2009年 12月号掲載

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