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Vol.213 小中学生と「英検」の上手な関わり方を考える

 先日、「英検6級・7級」が新設されるとの報道がありました。目にされた方もいらっしゃるでしょう。実用英語技能検定(以下英検)では、準2級と2級の間に位置する「準2級プラス」が今年度から追加され、5級から1級までの8段階構成となったばかりですが、その下に基礎レベルを2段階加えるとのことです。今後は、中学生のみならず小学生にとっても英検チャレンジが当たり前になっていくのでしょうか。

英検の受験者数はどのくらい増えているの?

 2024年度の英検受験者数は約450万人で、コロナ禍直前の2019年度と比べてもおよそ56万人増えています。2024年度の内訳をみると、小学生以下の受験者は約55万人(全体の12%)で、2019年度よりもおよそ15万人の増加となっています。中学生と高校生(高専含む)の受験者数は約312万人(全体の約70%)とのことですが、高校生の受験者数がここ10年で約1.8倍に増加し、特に2級と準1級の受験者が増えているとのことです。中学生においては、3級(中学卒業レベル)の受験者に増加は見られないものの、準2級の受験者数は10年前の約1.6倍、2級の受験者数は10年前の3.1倍と、それぞれ急増しています。
 文部科学省の『令和6年度「英語教育実施状況調査」』によれば、中学卒業時に英語力が英検3級相当以上の達成度を持つ生徒は2023年度で50.0%、2024年度で52.4%とのことで、2027年度には60%を目指しています。調査を開始した2013年度は32.2%ですから、この10年ほどでどれほど底上げが進んでいるかがわかります。この底上げの最大の要因は「小学校で英語が教科になった」変化であり、小学生保護者の英検への関心を高める要因になっていることでしょう。かつては「中1で4級を取れたら充分」と言われていましたが、小学生の間に5級や4級、もっと上のレベルまで目指す子が増えているといいます。

英検はどのくらい入試に影響があるの?

 前述のとおり、英検受験者数はここ数年でみても増加していますが、その要因として「入試との関わり」を無視することはできません。大学入試においては、センター試験から大学入学共通テストに切り替わったタイミングで、英語の配点変更が行われていることを覚えておいてください。
 かつてのセンター試験では、筆記200点とリスニング50点の合計250点で設計されていた英語の配点が、現在では筆記100点とリスニング100点の合計200点になっています。これだけリスニングの比重が高まるとリスニング対策が必要になりますが、英検の教材・システムを利用することが便利で有用だと考える高校生が増えているのでしょう。もちろん、この影響を受けて高校入試でもリスニング対策は不可欠となっており、高校生と同様に英検を上手に使って準備する中学生はたくさんいます。
 次に、大学が個別に実施する入試においては、外部検定の結果を利用するケースが年々増えていることを覚えておいてください。外部検定とは、英検はもちろん、TOEFLやTOEIC、あるいは中高一貫校でよく使われているGTEC検定版、GTEC CBTなどのことです。
 では、具体的に2025年入試における外部検定の利用状況を見ていきましょう。
 表1をご覧ください。2025年入試では、国公立・私立を合わせて478校の大学が何らかの形で英語の外部検定を利用しており、これは全体の半数以上(63%)となっています。国公立大学の一般選抜(共通テストの後に実施される大学独自の2次試験)での利用率が低くなっていますが(表2参照)、私立大学の一般入試においては、およそ半数の大学が何らかの形で採用しています。2017年度に比べると3倍に増えており、すでに入試システムとして定着した感があります。
 かつて「AO入試・推薦入試」と呼ばれていた総合型選抜に目を向けると、国立大学のおよそ6割、公立大学のおよそ3割、私立大学のおよそ5割がすでに英語の外部検定を利用しているため、この制度を利用する受験生の急増によって、英検の受験者も合わせて増加していると予想できます。

(表1)

英検チャレンジは早ければ早いほど有利なの?

 今回新設される「英検6級」は小学校高学年から中学校入門期の、「英検7級」は小学校中学年の英語学習に、それぞれ対応させるとのことです。幼稚園でもオプションで英会話教室があったり、動画で英語に触れたりと、私自身の子ども時代とは比べものにならないくらい小学校低学年や未就学児が英語に接する機会は増えていますから、今回新設される級の検定にチャレンジするご家庭は多いことでしょう。ここでは、私が考えるメリットとデメリットについてご紹介します。
 メリットは、もちろん上手に使うことで「英語学習のモチベーションアップ」が期待できることです。「縄跳び検定」「スイミング検定」など、小学校でもよくある検定と同様に、適切な段階を踏み英語に親しみながら英検を目標として設定することは、自信や達成感につながり英語学習のさらなる意欲につながることでしょう。ただし、楽しく本人のペースにあわせて学習を進めることが不可欠です。縄跳びやスイミングほどは段階が細分化されていないので、検定日にあわせて急ピッチで仕上げて合格を目指したり、保護者の想定する取得スケジュールに本人をあてはめようとしたり、といった無理があってはいけません。これが「上手に使うことで」と注釈を入れた理由です。
 次に、デメリットとして「入試との関わりの危険性」が挙げられます。高校入試においても、英検取得によって優遇措置を受けられるケースが全国的によくあります。たとえば大阪の公立高校入試には、英検2級保持者は入試本番の得点の80%、英検準1級保持者は100%が保証され、入試本番の得点が低くても心配しなくてすむ制度があります。有効期限が設定されていないので、もしも小学生のうちに英検2級以上に合格してしまえば、高校入試の準備の仕方そのものが変わるため保護者からはかなり有利に見えることでしょう。特に上位校ではその傾向が顕著で、全国的に有名な北野高校では今春96.8%の生徒がこの制度を利用したというのですから驚きです。
 ただし、令和10年(2028年)の入試から保証する割合を10%ずつ下げるそうです。その理由はいろいろあるはずですが、その1つと考えられる、ある校長先生が令和2年に発表した文章をご紹介します。
 この資格を活用して入学した生徒の中から、「英語資格を取得してからは英語の勉強をしてこなかったので、高校の英語の授業についていけない」「資格を取った後も英語の受験勉強をしっかりしておくべきだった」という声が少なからずあがっている。保護者からも「資格取得後に英語の学習がおろそかになり、中学まで得意科目だった英語が高校では苦手科目になってしまったようだ」という意見もあった。
 いかがですか。高校生であっても英検取得によって油断やゆるみが生じるケースがあるようです。これが小学生ならどうなるでしょうか。英検取得がゴールではないことを理解している子ばかりであればいいのですが。
 

出典:旺文社教育情報センター「外部検定入試 2025年は478大学!」https://eic.obunsha.co.jp/file/exam_info/2025/0305_1.pdf
英語資格(外部検定)の活用を予定されている受検生の皆さんへ 令和2年10月24日 大阪府立大手前高等学校 学校長 松田正也
https://otemae-hs.ed.jp/otemae_wp/wp-content/uploads/2020/10/R2eigoshikakukatsuyou.pdf

vol.213 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2026年1月号掲載

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