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Vol.24 電子辞書はいつから持たせるべきなのか

 

 皆さんは「ipod」をお持ちですか? 使っていない人の多くは、かつての「ウォークマン」の進化形くらいにしか考えていないでしょう(私もそうでした)。しかし、それが大間違いだということをつい先日知りました。実は、私の周辺にいる「法律を教える大学講師」がほぼ全員、六法全書を「ipod」にインストールしている事実を知ったからです。「重い六法を持ち歩かなくて済むことは法律を学ぶ者たちの悲願でしたから」とおっしゃる先生までいて、ちょっとびっくりしました。そしてそれ以上にびっくりしたのは、そんな便利な時代になったにもかかわらず、ほぼすべての先生が「学生たちには紙の六法全書を使わせる」とおっしゃっていたことでした。
 これと同じことが、中学生では英和辞典や古語辞典などにおいて起こっているようです。電子辞書の方が軽くて使い勝手がよいにもかかわらず、学校では「紙の辞書を使いなさい」と指導しているようです。では、電子辞書をいつから持たせることがベストなのでしょうか。

中学生の3人にひとりが電子辞書を所有

 子どもたちの電子辞書所有状況・使用状況に関するアンケート結果(保護者が回答)を見てください。

      

 この結果によると、中学3年生においては約半数が電子辞書を持ち、そのうちのおよそ80%が実際に使用しているようです。ただしこの調査では「公立中・私立中」の区別がありません。公立中で展開される英語の授業では、単語調べは「教科書の巻末を見て終わり」の場合も多く、電子辞書はもちろん紙の辞書でさえも必要としないケースもあるようですから、私国立中学に限った場合の所有率・使用率は、この調査結果の数字以上に高いと思われます。
 ちなみに、私が教務アドバイザーとして関わっている私立中学の場合だと、最初は紙の英和辞典(安価)を購入してもらって辞書の引き方を練習します。その後、国語で本格的に古文を勉強するようになったところで「古語辞典入りの電子辞書」の購入を許可する流れになっています。子どもたちは、この段階で初めて「本格的な英和辞典」を電子辞書で入手するのです。
 中学生になると教科書・ノートだけでなく、部活の道具なども持ち歩きます。学校まで徒歩で数分という公立中に通っているならともかく、電車やバスで移動することが当たり前の私立中の場合、重い辞書を持ち歩かせることには、特に1~2年生の間はマイナスの要素も多いと判断できるからです。

 

電子辞書or紙の辞書?

 さて、六法であれ英和辞典であれ、どうして「学生には電子辞書を使わせたくない」と考える先生が多いのでしょう。大学の先生の理由は、「紙の場合、自分の調べたい内容だけでなく、その周辺の内容も自然に目に入る。『ついでに』入ってくる情報量を無視してはいけない」というものでした。また、英語の先生の中には「紙の辞書で一文字ずつ点検することで、英単語のスペルを記憶しやすくなる」とおっしゃる人もいます。どちらも一理あるでしょう。彼ら自身はそうやって勉強してきたのでしょうから。でも、私は反対です。これらの主張は、最終的に先生にまでなった人だからこそ「当時も楽しくやれた」だけなのではないかと私は思うのです。

 

現在の中学生事情

    

 今の中学生は、我々の頃と違って非常に忙しい毎日を送っています。時間に追われた生活をしている彼らには「どうやって自分の時間を作り出すか」という工夫をさせるべきだと思っています。
 塾での指導においても、昔は「長い時間机に向かって勉強している」子どもを褒めたものですが、今は「自分で工夫しながらサッサと勉強を終わらせる」子どもを褒めてあげるべきだし、そうしないとほぼ例外なく中2あたりから勉強を嫌がるようになってきます。「勉強=自分の自由時間を奪うもの」と認識するからです。日々の勉強の中に「どうやって早く終わらせるか」といったゲーム感覚を植えつけるだけでも、彼らの集中力は格段にアップするのです。
 だから、電子辞書の方がひとつの英単語を調べるのに半分の時間で済むのならば、わざわざ苦労させる意義を私は感じません。それは、実際に塾で電子辞書を片手に勉強している子どもたちを見てきて、その子どもたちが英語の学習において特に苦労している様子を見ていないから言えるだけなのかもしれませんが。     

判断のベースは小学生にあり

    

 今回のテーマである「電子辞書をいつから持たせるべきなのか」について、明確な解答なんて実はありません。「『ipod』は辞書も入るんだよ、勉強にも使えるんだから」と、中学の入学祝いにおねだりされて、よくわからないまま買い与えてしまうというケースは避けたいものです。
 こうしたツール(携帯電話も含めて)をいつから持たせるべきなのかについては、個々の家庭においてメリット・デメリットを考えながら、お子さんが小学生のうちに話し合っておくことをお勧めします。その上で、先生方がおっしゃるようなメリットを紙の辞書に感じておられる方は、この時期までに辞書の引き方、使い方、メリットをキチンと教えておくべきでしょう。「知識を得ることの大切さ、面白さ」を教えるのは、やはり小学生のうちだと思います。     

 

vol.24 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2010年 3月号掲載

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