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Vol.27 正しいフォームで算数・数学を学べていますか?

 

 この春から、都内の予備校で「中高一貫校に通う新中学3年生」に数学を教え始めました。新規コース立ち上げのため、プロデューサーの役割も求められていたので、数学の授業コンセプトから自分で決めることができました。
 コンセプトは、「毀こわれた数学を治します」です。決めた自分でも「なかなか刺激的だな」と思っていたのですが、なんと開講の3週間前に定員締切になってしまいました。予備校側としてはホクホクなのでしょうが、私は中高一貫校に通う子どもたちの状況の深刻さ、保護者の悩みの深さに触れ、本当に複雑な心境です。中学受験からわずか2年、どうしてここまで毀れてしまったのか、これからどう治していけばよいのか。今回は、私が説明会で話した内容を誌面で紹介したいと思います。皆さまのお子さまの将来にも、少しでもお役に立てれば幸いです。

「正しいフォームで勉強していない子ども」が多すぎる

 ここでいう「フォーム」とは姿勢のことではありません。例えば「走り高跳び」を想像してください。小学校の体育の授業では「走り高跳びをやってみる」ことが目的なので、ゴム跳びの要領でも、棒と正対して頭から飛び込もうが、ケガさえなければ何も言われません。
 しかし、もしもオリンピックを目指すのであれば「背面跳び」をマスターしなければならないわけですから、小学生であろうがレベルが低かろうが、最初から「背面跳び」を練習するはずです。
 同様のことが算数・数学でも行われています。例えば「一次関数」の問題を紹介します。

      

 皆さんの中にも、中学生時代に例題と同様の解き方を練習された方が多いのではないでしょうか。実はこれ、数学を勉強する上での「正しいフォーム」ではありません。これは、一次関数の前に連立方程式を学習していますから、「とりあえずこの方法で解けば答えは出る。テストで点を取ることはできる」という緊急避難的解法なのです。教える側からしてもこの解法が楽なので、これをスタンダードとして指導する先生も少なくありません(むしろ多い)。私の授業に出ている、中高一貫校に通う生徒もかなりの比率で「この解法で習った」と言うのです。これでは「だったら中高一貫校に通う必要ないでしょ」と言いたくなってしまいます。
 はっきり申し上げますが、これでは単なる作業です。aのことを傾き(変化の割合)と呼びますが、この例題の解法では「傾きとは何か」という理解と、自分のやっている作業がリンクしません。だから、「傾きとは……」と聞かれたら、ただ暗記していた教科書の文言を思い出すだけになります。これでは驚きも感動も起こるわけがありません。中学受験レベルの文章題に方程式を持ち込むのも同様です。たとえ答えは正解であっても、出題者の意図や算数の面白さに触れることがないので、昨今話題に上る「頭の柔軟性」は全く鍛えられません。
 算数・数学では「なぜ・どうして?」という疑問を持ち、それを解決した瞬間がいちばん面白いものです。「正しいフォーム」には必ず「なぜ・どうして?」を解決する理由が隠されています。本来、こうした「本質に触れる勉強」ができる環境を提供するのが私学のメリットだったはずですが、あまりにも受験・テストの結果を追い求めすぎて、「とりあえずテストで点が取れるように」という指導にシフトしているとすれば、これこそ本末転倒ではないでしょうか。

 

問題集の答えを渡すか渡さないか

 特に中学受験算数の問題集については、保護者の間でも指導者の間でも「答えを渡すか渡さないか」では意見が分かれます。先に申しあげておくと、私は「渡す派」です。その理由として、「答えから逆算して、『なぜ・どうして?』を解決する手法は算数・数学では有効」だと考えるからです。だから、慣れるまで(宿題の目的はコレ)の間こそ、解答を渡しておいて「この答えになる理由を考えよう」という習慣をつけさせてあげるべきなのです。
 すると、「渡さない」派の多くは「答えだけ写して宿題を終わらせるからダメ」といった反論をします。別にこれは、日を改めて確認テストを実施すればよいだけだと思います。
 これを「やっていない」「できない」という指導者は、往々にして「自分自身が本質を理解できていない」可能性が高いと考えられます。だからいろいろと理由をつけて点検をせず、子どもに責任を押し付けている格好になっているわけです。保護者の場合は、自身が本質を理解していなくても不思議ではありませんが、その分「ノートやテストが○になっている結果」だけでチェックしようとしますから、ノートに×がついていたら、その過程がどうであれ「ちゃんと勉強しなさい」と叱ってしまう場合もあるようです。ただ正誤のチェックだけをして「気をつけろ!」と注意しても状況は何も変わりません。過程をチェックしてミスの内容を確認・修正する習慣を身につけさせることが最も重要だと、私は考えます。
 この部分を保護者が理解してあげていない場合、子どもは「問題を解く楽しさ」よりも「叱られないように振舞う」ことを優先しますから、解答を写して正解したふりをし始めるわけです。

 

算数・数学を勉強する理由

    

 「三平方の定理」を覚えていらっしゃいますか? ピタゴラスが見つけた定理で、おそらく中学3年のときに学習されたと思います。この定理は紀元前6世紀(約2500年前)に発見されたといわれ、今でも「人類史上最大の発見」とされています。ピタゴラスはどれほどの時間をかけて、何のためにこの定理を発見したのでしょうか。絶対に「行きたい大学があったから」ではありませんよね。算数・数学を勉強する理由を「テストのため」「受験のため」と考える子ども・保護者があまりにも多くなっている今の日本を、ピタゴラスが生きていたらどんな想いで見つめるのでしょうか。     

 

vol.27 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2010年 6月号掲載

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