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Vol.32 「推薦入試」から見る、21世紀を生き抜く力

 

 大学入試における「推薦入試」の位置づけは、この10年程で大きく変化しました。平成20年度に私立大学に入学した学生のうち、一般入試以外の選抜方法(推薦入試・AO入試等)で合格した人の割合は、とうとう51.4%と半数を超えました。国公立大学においても、かつては「推薦入試の募集人員の割合は定員の3割を超えない」としていた目安を変更し、上限を5割まで拡大していくことになっています。
 推薦入試は「少子化に伴う学生確保のための手段」というネガティブな一面があることは事実ですが、もしも目的がそれだけであるならば、国公立大学までもが比率を高めていく必要はないはずです。では、世の中や大学は、推薦入試を通してどのような能力を学生に求めているのでしょうか。

推薦入試に求められるスキル

 大学の推薦入試には、従来から行われてきた「指定校推薦」や「公募推薦」はもちろんのこと、最近では「AO(アドミッションズ・オフィス)入試」の割合が高くなってきました。学校長の推薦を原則として必要としない自由応募による入試のことです。ほとんどの場合、評定平均も問われず、他大学との併願も可能なケースが多いため、前述の「学生確保のための手段」と受け取られることも少なくありません。
 しかしながら、この「AO入試」の合否判定に用いられるのは、
①提出書類(志望理由書や自己推薦書)
②小論文
③面接・プレゼンテーション
などであり、この入試制度の意義を純粋に考えれば、「従来の入試制度では測れなかった能力を確かめようとしている」ことがわかります。
 この入試では、志望する大学に対して「自分で自分を売り込む」必要がありますから、自己分析力はもちろん、広い意味でのコミュニケーション能力も必要です。むしろ就職活動に近いイメージで準備をしておかなければならないのです。
 最も必要とされているのは「文章表現力」です。小論文はもちろんですが、志望理由書・自己推薦書を通して「大学で何をやりたいのか」という具体的なアピールが必要になります。他者の心を動かすような創造性と説得力を養うには、早い段階からの準備が必要であり、これは就職活動時のエントリーシートと同様の意味を持ちます。次に必要なのは「自己表現力」です。あいさつや適切な受け答えはできて当たり前であり、「他者の考えを理解し受け入れた上で、自分の主張をきちんと伝える」ことを踏まえた準備が必要です。自分の志望動機をプレゼンテーションさせる大学も多く「なぜこの大学でなければ自分の目標が実現しないのか」まで表現しなければなりません。「大学に入学したいから」という考えの学生はいらない、というのが推薦入試を実施する意図なのです。

 

推薦入試は「社会人基礎力」をチェックしている

 大学の大きな役割の一つに「世の中の変化に応じて、世の中が求める人材をタイムリーに供給する」ことが挙げられます。もしも大学が世の中の変化に疎ければ、そこでの研究内容や卒業する人材への価値が瞬時に暴落するからです。
 この10年ほどの間に、世の中からの要望は大きく様変わりしています。簡単にいえば「机に向かって黙々と勉強してきた優等生」ではなく、「仲間や同僚とチームで課題を克服し、プレゼンテーションで周囲を説得できる人材」の供給が求められているのです。
 経済産業省と大学が連携して、こうした「社会人基礎力」を身につけた人材を育てようという計画も進められています。大学入試を変えないと、中学・高校といった教育現場では「急激な価値観の変化」に気づかない可能性が高いからです。現実に、従来型の一般入試で大学に進学した学生が、在学中や就職活動時、そして社会人になった後に苦労しているそうで、これは社会全体にとって大きなマイナスであることは言うまでもないからです。

      

学力重視に戻る高校入試

    

 公立高校の推薦入試は、学力試験偏重から脱却するための切り札として、1980年代から各地で導入が進んできましたが、ここに来て全国的に見直しが進んでいます。これまでも何度か紹介してきたとおり「公立高校の予備校化」が急激に進むなかで、学力検査が実施されないために、入学者の学力面について心配する声が大きくなってきたからです。東京都立高校でいえば、日比谷、戸山といった進学指導重点校は、都全体の削減率よりさらに枠を絞って「学力重視」に移行していくようで、大学入試の変革とは、まさに180度反対に向かっているのです。
 高校入試と大学入試における「推薦入試」のあり方を並列に紹介するだけで、今の教育現場の「一貫性の無さ」がハッキリと読み取れます。「子どもたちをどのように育てていくのか」という方向性が、バラバラであり、そこに経営(生徒募集)の側面がプラスされるわけですから、これをスッキリと一本化するには大変な労力が必要です。
 最大の被害者となる可能性が高いのは、「言われたとおりのことをそつなくこなし、評価を得る」ことをヨシとする、従来型の価値観における優等生でしょう。素直であればあるほど、要求される価値観が変わるごとに混乱するでしょうし、順応するまでには大きなストレスを感じるでしょう。
 これだけ急激に変化する現代を、子どもたちがたくましく生き抜くにはどうすればよいのでしょう。「自分で考え・解決する能力」を磨くしかない、と私は思います。「社会人基礎力」の養成、私は賛成です。文部科学省ではなく経済産業省からの発信であるところに、深い意味を感じるのです。     

 

vol.32 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2010年 11月号掲載

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