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Vol.33 教科書は本当に紙からデジタルに変わるのか

 

 「デジタル教科書教材協議会(DiTT)」なるものをご存知でしょうか?昨年末に総務大臣が「2015年までにすべての小中学校の児童・生徒にデジタル教科書を配備する」という目標を掲げたことから始まったもので、教科書を紙からデジタルに変えて、すべての小中学生が使えるような教育環境の実現を目指すための協議会です。ソフトバンクの孫正義氏や陰山英男氏(百ます計算で有名な方)などが発起人をされています。
 わかりやすく言えば、現在の教科書がiPadに変わるということですが、皆様はどのように思われますか。実は教育に携わる人々の間でも、賛否両論真っ二つなのです。

紙からデジタルへ

 まず、私自身の考えは「賛成」です。その理由は、簡単に言えば「子どもが(よい方へ)変わる」と思うからです。ただし、全面的に賛成というわけではなく、解決すべき問題点も数多くあると思っています。
 これまでの学校教育では、『知』は先生から子どもへ与えられるものでした。親鳥とひな鳥の関係と同じで、親鳥(先生)が用意してくれる『知』という名のエサを、ひな鳥(子ども)が口を開けて待っているという構図、と言えばわかりやすいでしょうか。それが、デジタル教材を導入すると、『知』は自ら獲得するものに変わります。これは、学校教育の根幹を揺るがすほどの「子どもにとってプラスの変化」であると、私は思います。
 たとえば社会の授業だと、デジタル教科書の中には地図帳も国勢図会も入っているので、デジタル教科書に触れるだけで、どんどん関連情報が画面上に出てくるわけです。NHKのアーカイブとリンクしていて、教育テレビの映像だって見ることができるようになるでしょう。すでに民間では芸人やアイドルたちが自分のデジタル教科書に登場し、重要事項を説明してくれる動画が開発されています。
 すると、先生の仕事は「きっかけ作り」と「教室・児童管理」ということになります。これまでは、先生が説明する内容を教科書で探し、板書された事項をノートに写すことが勉強でした。
 それが、先生の発する「きっかけ」を元にして、自分で検索しながら発見していくことが勉強となるのです。授業の主役が先生から自分に変わる。これは学校教育における大転換です。

 

デジタル教科書の可能性

    

 先生が提示する「きっかけ」を元に、50分あれば子どもたちはどれだけの『知』を獲得できるでしょうか。我々だって50分ネットサーフィンをすれば、初めの検索とは全く違う方向に関心が向くことだって少なくありません。次々と「発見」があり、毎日がバーチャルな社会見学になりますから、子どもは勉強に対してワクワク感を覚えることでしょう。子どもたちの「知的好奇心」や「主体性」を養うには非常に効果があると思います。こうした授業の中から適性や興味を発見することができれば、勉強に対する前向き度は、さらにアップしていくことでしょう。
 もちろん、従来型の『知』の獲得に関しては、授業冒頭に「必ず調べなければならない重要事項」を設定しておいて、それに関しての確認テストを行い定着度を測ることで解決するでしょう。つまり、最低限必要なノルマをこなしてしまえば、体は教室内にあったとしても、デジタル教材のおかげで頭は教室の外へ飛び出していくことが可能になります。地理の内容で始めた検索が、いつのまにか「地域の歴史」へ変わっていくこともあるでしょう。それくらい積極的に、自ら『知』を獲得する姿勢を育てるのが、デジタル教科書の可能性だと私は思います。     


デジタル教科書と教育現場

    

 しかしながら、教育現場は大変です。30人の子どもたちがそれぞれ違う関心に向かうわけですから、管理する側は「いつ、誰が、何をしているか」をしっかりチェックしておく必要が生じます。高度な教室管理能力が要求され、これは教員にとって大きな負担になることが予想されます。
 そもそもにして、教員の多くは「教えることが好き」「子どもの頃に習った先生に憧れて」といった動機で仕事をしているわけです。自分が子どもの頃に受けた授業を理想とする人が多いということは、逆に「それができなくなる」デジタル教科書の導入には反対する声も少なくないでしょう。
 そして、親の立場からも反対の声が挙がるでしょう。やはり「自分たちが受けた教育の型」をベースにして考える人が多いでしょうから、「紙を使わない」「鉛筆すら持たない」ことで学力が身につくのかどうかを不安視する声は挙がって当然です。     

『知』を獲得できる教育環境とは

 この機会に皆様に問いかけたいことがあります。教育とは「何のために」「誰のために」行われるべきなのでしょうか。正解などないし、人によって意見が割れて当然です。ただ、「子どもの存在を忘れてはいけない」ということは忘れないようにしたいですね。
 容易に予想できる賛否それぞれの意見には「子どもにとってどうなのか」という視点が消えていることを、私は心配します。これだけ見通しの暗い21世紀の日本の将来を支えていかなければならない子どもたちの教育について、「子どもたちをどのように育てるべきか」という育成のビジョンより、大人の都合や主観が優先されていいものなのでしょうか。
 そして、国がビジョンを提示しないのであれば、子どもの将来を考えるのはご家庭の役目です。「国がどうなろうが、ウチの子だけはしっかり生き抜けるようにする」という大局観の下に、進学する学校を選んでください。公立がデジタル化されたとしても、私立の中には反対の態度を示すところがたくさん出てくると思います。本当の意味での「学校選択」がこの頃から始まるのではないでしょうか。

 私がデジタル教科書に「賛成」したのは、「子どもたちの20年後にプラスになると思うから」の1点だけです。公立であれ私立であれ『知』を自分で獲得できる姿勢を身につけた子どもであれば、たくましく生き抜いてけると思いませんか。

   

vol.33 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2010年 12月号掲載

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