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Vol.39 親が考える教育像はこの20年でどう変わったか

 

 教育は「未来への投資」とよく言われます。いま私の手元に、1992年に調査が行われた「親たちが考える2000年の教育像」という資料があります。20年前に小学生だった方にとっては、まさしく皆様の「お父さん・お母さん」が考えていた教育観を調査したものになります。教育を取り巻く環境が大きく変わったといわれる昨今、20年前と比較して変わったもの・変わらないものをしっかり把握しておくことは、現在子育て真っ最中の皆様にとっても大変有意義な情報であろうと思い、今回紹介させていただくことにしました。それではご一緒に20年前にタイムスリップしてみましょう。

1992年の大学進学率はこうだった

 まず始めに、この調査が行われた1992年当時の大学進学率を参考にしながら、現在との時代背景の違いを確認しておきましょう(表1)

 

(表1)大学進学率の変化

                                                       
 大学(短大含む)への現役進学率4年制大学への進学率(浪人含む)女子の短期大学進学率
 全体全体男子女子 
1992年32.7%26.4%35.2%17.3%23.5%
2000年45.1%39.7%47.5%31.5%17.2%
2009年53.9%50.2%55.9%44.2%11.1%
 

(表2)どの学校まで進学してほしいか(1992年)

                                                       
 高校まで専門学校まで短大まで4年制大学まで大学院までその他
全体13.2%10.5%13.3%54.7%2.6%5.7%
小4男子14.7%6.8%1.0%69.7%3.7%4.1%
小4女子16.4%14.0%23.9%38.1%2.0%5.6%

 2009年の数値に代表されるように現代は、わかりやすく言えば「クラスの半数が現役で大学に進学する」時代になっています。その大半が4年制大学へ進学しており、この20年における大きな変化として挙げることができるでしょう。また、この数字を押し上げている要因が「女子の高学歴志向化」であることは明らかです。

 

学歴への期待はどうであったか

 それでは、20年前の数値に目を向けていきましょう(表2)。当時の保護者は、自分の子どもにできればどの学校まで進学してほしいと考えていたのでしょうか。
 小4のデータに注目すると、大学・短大への進学を期待する親は男子で7割、女子で6割以上に達していることがわかります。92年当時の大学進学率(表1)に比べると極めて高い数値ではありますが、このときの保護者の志向や準備が、この世代が大学進学を迎えた2000年の大学進学率につながっていることは間違いありません。特に、女子に関しては男子に比べ調査結果と実際の進学率との差異が小さく、早い段階から準備することの必要性を裏付けています。

 

中学校の選択について

 大学進学希望の高まりを背景として、92年当時の保護者は子どもをどんな中学校に進学させることを希望していたのでしょうか。ここでは、地域別の調査結果(表3)を紹介します。
 東京における公立中学への進学志向が、この当時で63%しかなかったことに注目が集まります。一般には、中学受験熱の高まりは「ゆとり教育に伴う公立の教育に対する不信感」によるものと考えられ、2000年前後から過熱していったと考えられていますが、実はすでにこの時代から東京では「できれば私立へ」と考える保護者が多かったことを裏付けています。これには「どんな高校に進学してほしいか」という同調査での問いに、公立高校を選択した東京の保護者が半数を切っている(49.2%)ことからもわかります。というのも、当時は都立高校の大学合格実績が下降し続けていた時期であり、「公立に進んでも大学に行けない」と考える保護者が増え始めた時期なのです。その後、この10年あまりの都立高校改革に伴う大学合格実績の向上や都立中高一貫校の開校などによって、都立高校を取り巻く環境は大きく変わっているため、東京在住の保護者の考え方は多様化していることが予想されます。     

 

(表3)どんな中学に進学してほしいか(地域別)

                                               
(1992年調査)公立中学私立大学
附属中学
その他
私立中学
国立大学
附属中学
その他
無回答
岡山90.9%2.0%2.3%3.4%1.4%
秋田・岩手92.4%0.7%1.4%1.6%3.9%
東京63.4%17.2%8.9%5.0%5.5%
 

(表4)進学してほしい短大・大学のタイプ(父母の学歴別)

                                                                       
(1992年調査)父母ともに大卒いずれかが大卒父母ともに高卒
出席を厳しくして学業に専念させる(注1)41.0%46.4%47.8%
成績のふるわしくない学生はどんどん落第させる(注2)53.9%48.3%33.2%
成績や生活の状況を親元にきめ細かく連絡する(注3)18.5%28.0%34.6%
ビジネスや法律、行政の実務経験を持つ人が教授になっている56.6%53.0%48.2%
文学や歴史などの教養を高めることに力を入れている(注4)65.2%53.1%46.5%
礼儀作法や生活態度の指導に力を入れている(注5)42.7%59.4%67.5%
就職の斡旋に力を入れている55.2%58.9%63.0%
学者や研究者の養成に力を入れている(注6)45.5%36.4%23.6%

どんなタイプの大学に進学させたいか

 保護者が考える「進学させたい大学」のタイプは、表4を見てみると、この時代からすでに多様化が始まっています。現代においても、いわゆる「職業大学」「就職予備校」のスタンスを持った大学の増加が「大学教育とは何か」という本質的な議論を起こしたり、就職活動において「大学で何を学んだか」を問われたりする傾向の要因となっており、子どもに「どの大学で何を学ぶか」といった目標意識を早い時期に持たせることの重要性につながっています。
 当時は、大卒の親であればあるほど、注4、注6のように教養教育や研究者養成機能といった、非学校的・非職業的機能を求めていますが、逆に高卒の親であればあるほど、注1、注2、注3、注5のような学校的な指導(出欠や親への連絡)や礼儀作法や生活態度といった、職業人として一人前にしてくれる機能を求めていたことがわかります。しかしながらこれらの差異は、現代では多くの大学が当たり前のように提供するものとなっていて、むしろ20年間での保護者の志向の変化を読み取ることができる資料となっています。

 こうしてデータを読み解くと、おおむね20年前の保護者が想定していた傾向がそのまま現代にも見て取れます。だからこそ、今小学生のお子さまをお持ちの保護者の方々は「20年後の子どもの姿」を明確にイメージし、普段から会話を通して将来について伝えていくことが重要ではないでしょうか。

   

表2・3・4ベネッセ教育研究開発センター 「親たちが考える2000年の教育像」2000年
http://benesse.jp/berd/center/open/report/oya_2000/1993/index.html

vol.39 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2011年 6月号掲載

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