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Vol.44 「大学卒」の肩書きを手に入れやすい時代に親が意識すべきこと

 

 この5年ほどの間に、大学入試を取り巻く環境に二つの大きな変化が見られました。一つ目は「4年制大学への進学率が現役・浪人合わせて50%を超えた」ことであり、二つ目は「私立大学に入学した学生のうち、一般入試以外の選抜方法(推薦・AO入試等)で合格した人の割合が50%を超えた」ことです。これは、大学が「一昔前のように、ひたすら勉強して激戦を勝ち抜いた人だけが入学できる場所」ではなくなりつつある傾向を示しているのですが、その一方で「大学卒の肩書きだけでは通用しない時代」の到来を示唆しているのです。

いまどきの大学は本当に入りやすいのか?

 まず次の表をご覧ください。

 
 

平成23年度大学志願状況

                                       
募集人員志願者数志願倍率
国公立大学100,583504,1935.0
私立大学全体 ※1452,9973,210,0597.1
一般入試利用 ※2159,3371,707,63110.7
センター試験利用 ※342,053847,04620.1

※1 日本私立学校振興・共済事業団の調査結果
※2※3 代々木ゼミナールの調査結果

    

 平成23年度には、国公立・私立をあわせた4年制大学への入学枠はおよそ55万人でした。うち、国公立大学は10万人ほどの募集しかなく、狭き門であることはいうまでもありません。
 それに対して私立大学では、募集人員総数(約45万人)に対して、学力による選抜(一般入試・センター試験利用)の枠はおよそ20万人しかなく、選抜方法が多様化していることがおわかりいただけることでしょう。推薦・AO入試の割合もさることながら注目すべきはセンター試験利用入試で、その手軽さ(センター試験を受験しておけば、実際にその大学まで足を運ばなくても合否判定してくれる)から、全体でも非常に高い倍率となっています。例えば平成23年度の明治大学では、募集人員728名に対して3万6188名もの志願者(倍率は49.7倍!)を集めており、その合格ラインは難関国立大学に匹敵するとも言われているのです。     


私立大学の2極化が急激に進む

 いま私の手元にある「平成23年度私立大学・短期大学等入学志願動向(日本私立学校振興・共済事業団)」という資料から、私立大学への入学者に関してもう少し詳しく紹介していきます。
 合格者数を受験者数で割って求める「大学合格率」を見てみると、この合格率が80%以上(倍率が1.2倍に満たない)の大学が213校ある一方、合格率が50%未満(倍率が2倍以上)の大学もほぼ同数の194校あり、私立大学の中でも「定員確保に苦労する大学」と「しっかり選抜が行われている大学」に2分されつつあることがわかります。

 

平成23年度私立大学 合格率分布

                           
100%18校
90%台126校
80%台69校
70%台51校
60%台58校
50%台56校
50%未満194校

(注)この値が100%だと「全員合格」、50%だと「倍率2倍」、20%だと「倍率5倍」を示す。

    

 次に、入学者を入学定員で割って求める「入学定員充足率」を見てみます。これが100%を割る「定員割れ」の私立大学は223校で全体の39.0%を占めており、よく報道などで目にする「大学全入時代(えり好みしなければどこかの大学には入ることができる)」がすでに到来していることをうかがわせます。その一方、ほぼ同数の大学が110%以上の充足率を満たしており、私立大学の中でも「人気のある大学」「人気のない大学」の区分けが進んでいることがわかります。     

 

平成23年度私立大学 入学定員充足率分布

                           
60%未満32校
60%台26校
70%台49校
80%台56校
90%台60校
100%台121校
110%以上228校
    

 誌面の都合により詳しいデータ紹介は省略しますが、大規模大学や有名大学には充足率の高いところが多く、中規模以下の大学は学生が集まりにくい傾向があるようです。また、有名大学であればあるほど「入学しにくい(倍率が高い)」ことには変わりがないため、結果「一部の有名大学に受験生が集中して、これらの大学に関しては入りやすくなっていない」「それ以外の大学は受験生が集まらないので、入学しやすくなっている」という2極化が生じていることを読み取ることができます。     

「△△大学卒」の肩書き以外に何を身につけるか

 かつてのような「高い倍率の学力試験を乗り越えた」大学生がいる一方で、「低い倍率かつ学力試験なしで入学できた」大学生が急激に増えていることが、10年後の大学生(現在の小学生)にどのような影響を及ぼすのかについて考えてみましょう。新しい多様な選抜方法を経た今の学生たちが、その後社会に出てどのような評価を受けるか(プラスの部分とマイナスの部分の両方があるはず)によっても変わってきますが、おそらく社会全体からの「大学生のレベルが落ちている」という評価は、今以上に加速しているものと思われます。さらに急激なグローバル化によって企業が「学歴より実力」を重視する傾向が強まっていることもあり、結果みなさんのお子さまが大学を卒業する頃には、おそらく「大学卒」の肩書きは非常に軽いものになってしまうことが予想できます。どの大学に進もうとも「△△大学は出ています」といったスキルでは全く通用しない時代となり、「大学時代までに学業を含めてどのような経験をし、自身の能力が社会全体にどのような貢献をもたらすことができるか」といった、『肩書き以外のアピール力』で光り輝くことが、就職活動はもちろんのこと、社会人になった後でも必要とされ続けることでしょう。
 小学生のうちから作文を通して自分の考えを整理し表現する習慣を身につけることは、受験の得点には直結しないかもしれませんが、お子さまの将来にとっては「大学卒という肩書きよりも大切なもの」だと私は思うのです。

vol.44 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2011年 11月号掲載

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