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Vol.52 入試問題の先に見える未来

 

 いきなりですが、皆さんに「西暦3000年に世界はどのようになっているか、考えを述べなさい」という質問を投げかけたいと思います。ちょっと考えてみてください。10年後、20年後であればともかく、あと1000年後の世界なんて急に尋ねられても答えようがありませんね。たとえ普段から問題意識を持っていたとしても、「不意に聞かれて、すぐに自分の考えを述べること」は決して簡単なことではないはずです。ましてや、これが日常会話レベルでのやりとりではなく「自分の人生を左右する可能性がある」やりとりだったとしたら、皆さんはどのような返答を考えますか。

暗記だけでは通用しない入試問題

 種明かしをすると、この質問は今春(2012年)に一橋大学で出題された「大学入試問題」でした。しかも小論文ではなく、英語の自由英作文(120語~150語で記述)の問題なのです。一昔前の英作文といえば文字通りの「和文英訳」でしたが、いまどきは英作文にも「自由な発想」が求められているのです。出題者の意図は、「理解と記憶に重きを置いた英語力」のみならず「何を考え、自分なりに整理し、まとめるか」という問題解決能力のチェックも同時に行うことにあって、この段階までであれば小学生のお子さまにも「原稿用紙1枚ぐらいで」書かせてみることは十分可能なのです。
 この自由英作文の題材からもわかるように、「英語は自分の考えを述べるツールの一つである」ことを念頭において「独りよがりではない視点で物事を考え、それを的確に他者に伝え、課題を把握できること」を試される傾向が、大学入試のみならず高校入試においても高まっています。これは「社会からの強いニーズ」が背景にあることはもちろんですが、英語の試験でありながら「一般教養」「背景知識」「異文化理解」といった領域まで問うことによって、これまでの日本が量産してきた「暗記型の秀才」では対応できない能力、つまり「21世紀型の学力」を体現しているのです。
 このような背景を理解した上で、もう一度この問題を考えてみてください。小学生であれば「空を飛べるようになります」とか「念じたものをすぐに手に取れるようになります」といった、単なる予言の類で終わることもあるかもしれません。しかしながらこれが大学入試問題である以上、保護者の方々には「そのメリットとデメリット」まで論じていただきたいところです。これが問題解決能力を語る上での土台となるのです。実際に受験をして合格したある学生は「ドラえもんが量産されている世界になっている」と前置きした上で、「どこでもドアで旅行がしやすくなる一方、世界中の航空会社の雇用問題が起こる」と、メリットとデメリットについて述べたそうです。入試問題の解答にドラえもんを選択するアイデアを含めた自由度に驚かれたのではないでしょうか。こうした「事前に決められた正解のない問題」は、今後増えていくことが予想されています。

 

子どもたちに求められる問題解決能力

 こうした問題解決能力を持つことは、大学における研究はもちろんのこと、社会に出てから仕事を進めていく上で最も重要なスキルの一つであることは言うまでもありません。かつての大学生は日本国内における競争に勝ち残れば事足りていましたが、皆さまのお子さまは世界中(現在の世界人口は70億人といわれている)の学生との競争に勝ち残る必要があります。そんなグローバルな時代においても、変わることなく日本人が世界に誇れるスキルとは「組織をまとめる力」「リーダー力」「品質管理能力」だと言われています。私が先日、話を伺ったある経営者の方は、「様々な文化や慣習をもった多様な人材を束ねてプロジェクトを進めていくには、日本人の緻密さや配慮、観察眼が最適だ」と仰っていました。さらには「文化が違えば必ず摩擦は起こる。そこに折り合いをつけて前に進んでいくためには、問題解決能力を持つ者が必要なのだ」とも。
 この英作文のように一見漠然としてつかみどころのない事象をよく分析し、明確な根拠に基づき自分の意見を論じる習慣を、これからの日本を背負って立つ子どもたちには日常的に意識していてほしいのですが、お子さまの普段の生活はいかがでしょうか。「脱ゆとり」の反動で勉強量が増え、以前の価値観に従った「詰め込み」のシステムに翻弄されていないでしょうか。
 我々大人が気をつけておかなければならないことは、このような習慣が「ある日突然身につくものではない」ということです。この点に関しては幼少からの積み重ねが最も効果的であり、私の周りでは「中学生の時できない者は、高3になってもやはりできない」「高3でしっかりできている者は、中学生のときにもしっかりできていた」という傾向がはっきり見て取れることも覚えておいてください。

 

毎月の積み重ねが未来を拓く

 こうした観点に注目して毎月チャレンジしている作文講座に接してみると、「作文を書ける小学生」を育てる重要性がおわかりいただけると思います。作文を書く際のルールやテクニックの修得、あるいは「入試で困らないために」という目的はもちろんのこと、お子さまが社会人となるときに必要とされるスキルの土台を磨くという視点を持って続けていただけると幸いです。
 最後に、一橋大学以外にも、我々から見て「面白い自由英作文」を課す大学は少なくありません。東京大学は「今から50年の間に起こる交通手段の変化と、それが人々の生活に与える影響を想像して具体的に述べなさい(2008年)」、「絵に描かれた状況を自由に解釈して説明しなさい(2007年)」という出題をしています。いずれも50語程度の英文で説明することが求められているので、日本語では200字程度にまとめることができれば十分でしょう。

         

 模範解答を気にする必要はありません。時間のあるときに、リラックスして親子で考えてみてください。「自由に」「想像して」と問題文に明記してあることが、出題者からの明確なメッセージなのです。     

vol.52 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2012年 7月号掲載

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