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Vol.53 最近の大学生が考える「自分の将来設計」とは
急激に進む企業のグローバル化や就職活動の複雑化などによって、最近の大学生は、大学生活を満喫する暇もないほどに忙しく、自己研鑽やインターンシップなど早い段階から「大学卒業後」に向けた準備を始めなければならないといいます。
今回は、早稲田大学学生部が発表した「学生生活調査報告書2011」を基に、最近の大学生が考える「自身の将来設計(キャリアプラン)と準備」について見ていくことにします。
卒業後の進路希望について
全体では「民間企業」と回答した学生が47.4%と約半数を占め、「大学院へ進学」の12.1%、「公務員」の11.1%に大きく差をつけています。民間企業を希望する学生の割合は、37.8%(04年)、37.4%(05年)、38.8%(06年)、39.5%(07年)、46.3%(08年)、41.7%(09年)、45.9%(10年)と推移しています。09年度の一時的な減少は前年のリーマンショックの影響が想像されるため、全体的には増加傾向にあることがわかります。文系・理系の比較では、民間企業を希望する学生については差がないものの、理系では大学院進学希望者の割合が文系に比べて高く、公務員志望者では文系が理系に比べて多くなっています。
卒業後の進路はどのように考えていますか (主なもののみ)
全体 | 文系 | 理系 | |
---|---|---|---|
民間企業 | 47.4% | 47.6% | 46.8% |
公務員 | 11.1% | 13.2% | 4.8% |
大学院に進学 | 12.1% | 7.9% | 24.7% |
小中高教員 | 4.5% | 5.4% | 2.0% |
大学教員 | 3.1% | 3.4% | 2.1% |
研究所・シンクタンク | 2.7% | 1.3% | 7.0% |
未定 | 9.7% | 11.0% | 6.1% |
将来の進路についての不安
全体では「志望する進路が絞りきれない」の32.6%、「志望する進路先に進む能力がない」の31.4%、「志望する進路で自活できるか心配」の30.2%、「やりたいことがみつからない」の27.0%、「進路先でやりたいことができるかわからない」の25.9%の順で、ほとんど差がついていません。
この項目で注目すべきこととして、保護者の皆様には「やりたいことがみつからない」と答えた学生の多さを挙げておきます。学年別にみると、1年生が33.1%、2年生が36.2%、3年生が31.5%となっていて、3年前の調査と比べても各学年で3ポイント以上の増加になっています。
進路を考え始めた時期を「大学に入ってから」と答えた比率が45.7%と高くなっていることを併せて考えると、大学生のおよそ半数が「将来何をやりたいか」という自分のビジョンを描くことなく入学し、なんとなく大学生活を過ごし、およそ3割が方向性を見出せないまま就職活動に突入している様子がわかります。報道でよく目にする「何十、何百社とエントリーしても落とされる大学生」が生まれる要因の一つには、「自分の適性や興味関心を見極められないまま就職活動を迎えてしまう」学生たちの増加が関係あるのかもしれません。
大学生活をより充実させるためには、「大学で何をやりたいか」「将来どんな職業に就きたいのか」という明確なイメージを持って入学してくることがポイントのようです。
皆さんのお子さまは「将来の夢」をお持ちでしょうか。なれる・なれないは別として、こうした「夢」を持ち続けて大人になれる人は、そう多くないようです。
「やりたいことがみつからない」と答えた学生の比率
全体 | 27.0% | 4年生 | 17.2% |
---|---|---|---|
1年生 | 33.1% | 5年生以上 | 24.8% |
2年生 | 36.2% | 修士課程 | 15.6% |
3年生 | 31.5% | 博士課程 | 2.5% |
進路を考え始めたのはいつくらいからですか?
大学に入ってから | 45.7% | 中学生以前 | 5.2% |
---|---|---|---|
高校生の頃から | 28.2% | 大学院に入ってから | 5.7% |
中学生の頃から | 7.4% | その他 | 7.9% |
大学院学生について
特に理系の場合には「大学院に進学する」という選択肢も考慮しておく必要があります。しかしながら大学に残って研究を続けるということは、保護者にとって経済的負担も大きなものとなります。
報告書によると、大学院生の経済状況は、昨今の景気低迷の影響を受けて非常に厳しいものとなっています。大部分の大学院生は奨学金や近親者からの支援が不可欠となっており、「自立している」と回答した学生であっても、およそ1割が近親者からの支援を受けていることから日々の生活費や学費をすべて賄うことは難しいようです。
こうした現実を理解した上で「大学院を受験した理由」に目を向けてみます(複数回答可)。「(学部で学んだ)学問をさらに探求したい」と答えた人が59.5%、「希望の職種に就職するために不可欠な深い知識を得るため」が35.9%となっている一方で、「就職する意志がなかった」が14.7%、「就職できそうになかった」が10.8%もいるのです。
「将来の夢」を早期にみつけておくことは、お子さまにとって勉強はもちろんのこと、人間的に成長していくためにも大きなモチベーションとなるのです。これだけの経済的負担がかかる以上、大学院には「夢を追って」進学してほしいものですね。
あなたは経済的に自立していますか
はい | 22.9% |
---|---|
いいえ | 74.6% |
無回答 | 2.5% |
現在の学費・生活費の収入源として該当するものは何ですか(2つまで選択)
全 体 | 自立している | 自立していない | |
---|---|---|---|
現在の就業による収入 |
28.8% | 55.2% | 21.5% |
本人の預貯金・株式・不動産等 |
17.6% | 32.1% | 13.3% |
奨学金 |
46.4% | 47.8% | 45.8% |
近親者(親・配偶者など)の支援 |
65.1% | 9.7% | 83.5% |
その他 |
3.7% | 8.2% | 2.3% |
参考 早稲田大学学生部 学生生活調査報告書2011
vol.53 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2012年 8月号掲載