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Vol.54 小学生の親が知っておきたい「就活大学生の保護者事情」

 

 先月、次男が通う予備校で保護者向けの勉強会が開催されました。テーマは「大学生の就職状況・就活事情を勉強する」というもの。我が家も夫婦で参加しましたが、会場は大盛況で保護者の方々の関心の高さを感じました。予備校主催ですから、当然「だからこそ大学選びをどうするのか」という論旨へ進んだのですが、その途中経過で提示された「就活概況」や「保護者意識」などは、小学生の保護者の方々にも有益となるものが多かったのです。

就職内定率を鵜呑みにしない

 新聞報道などで「大学生の就職内定率」が扱われることがよくあります。文部科学省が発表しているもので、最近の数字だと、

 
2011 年
12 月1 日
71.9%
2012 年
2 月1 日
80.5%
2012 年
4 月1 日
93.6%

といった形で公表されています(平成23年度大学等卒業者の就職状況調査)。しかしながら、調査対象校・対象者の総数について聞いたことがある人はおそらくないと思います。
 調査対象校は112校(国立21校、私立38校、短大20校、専修学校20校など)で、調査対象者はわずか6250人でしかないのです。大学入試センター試験に参加している大学は国公立・私立あわせて800校以上、受験者は50万人以上であることや調査対象となる学校名が発表されないことを考えると、抽出調査とはいえ保護者としてこの数字を鵜呑みにして安心することはできません。
 また、各大学がホームページなどで公表している「学生の就職率」にもカラクリがあります。この数字の分母が「就職希望者数」であることを知っている方は、そう多くないと思います。例えば、首都圏のある大学の数値(概数にしてあります)を紹介すると、

 
全学部
男子 女子 合計
卒業者数 3100 名 2300 名 5400 名
就職希望者数 2200 名 1750 名 3950 名
就職者数 1950 名 1600 名 3550 名
就職率 88.6% 91.4% 89.9%

となります。全体では、5400—3950=1450名が「就職を希望しなかった」と読み取れますが、はたしてそうでしょうか。もちろん初めから大学院進学など進路が明確だった学生も含まれますが、その一方で「就職活動をしたがうまくいかず、結果的に大学院へ進学した」「内定をもらえなかったためにこの年の活動を諦め、就職浪人を決めた(卒業はする)」といった学生も含まれているのです。知らない人が見ると、「就職できなかった学生」は3950—3550=400名しかいないと思われがちですが、この400名は「卒業段階で内定はもらえなかったが、就職先を探し続けている」より厳しい状況におかれている学生だと認識してください。さらに「留年して就職浪人する学生」は、そもそも卒業者数にすらカウントされていません。1学年の在籍人数が公表されていないところに、もう一つのカラクリが存在するのです。
 こうした「数字の読み方」を学ぶと、大学生の就職状況の実態が「公表されている以上に厳しい」ことを理解することができます。逆にいえば、こうしたカラクリを知らずに就職活動中のお子さまに接すると、無用な混乱や不安を与えることにつながるようです。

 

保護者は『無責任な口出し』を慎む

 就職活動を終えた大学生への調査で、「最も役に立たなかったこと」に挙げられるのが「保護者の無責任な口出し」だったそうです。我々勉強会の参加者は最初こそ笑っていましたが、この話が深まるにつれて、笑い声はなくなっていきましたので、できる限り内容を紹介してみたいと思います。
 保護者は「(内定が出ない)子どもを心配して悪気なく」アドバイスをするのですが、これが「聞きかじり」であったり、就活の実態にあっていなかったりすることが、かえって子どもにストレスを与えることになってしまうそうです。そのアドバイスとして多いものは、内定が出ない大学4年生の子どもに対して、
 ・公務員試験を受ければ?
 ・英語が大切なんでしょ。勉強すれば?
 ・とりあえず資格をとれば?

という声をかけることだといいます。ところが、公務員試験を受けるには、数的処理・判断推理といった数学系の勉強も準備が必要です。大学受験で数学を必要としなかった学生の場合、こうした勉強は大学1年から続けておくことが一般的であり、大学3年や4年から準備を始めてもすぐに合格ラインまで到達するとは考えにくいのです。しかも就職活動を続けながらの勉強では十分な時間を確保するのが難しいわけですから、子どもにとっては「ありがた迷惑」でしかありません。英語や資格に関しては、親は「資格(TOEICの得点を含む)をとればなんとかなる、就職に有利だ」と考えがちですが、実態は「資格をどう活かすかというビジョンを提示できなければ、取っていない人と同じ」扱いしかされないといいます。
 このように、就職活動に関して報道されている内容には、「表面に出てこない実態」が隠されていることが多いのです。こうした実態を理解していない人のアドバイスは、子どもの側から見れば『無責任な口出し』としか思えない迷惑な話となってしまうのです。

保護者も『学び続ける』時代

    

 かつての日本においては、自分の子どもが「いい大学」に入った時点で、親は「これで子どもは一生安泰だ」と感じることができました。しかしながらこれだけ社会が変化している時代においては、勉強会への関心の高さが示すとおり、保護者の仕事は「子どもを一人前の社会人として世に出すこと(大学入学はゴールではない)」と変わりつつあります。だからこそ、我々保護者も「長期的視野にたって世の中の変化を観察し、勉強し続けること」が必要なのです。今回紹介したような無責任な口出しをする保護者たちは、ある段階から「自ら勉強し続けること」を放棄していたわけで、子どもにさえ迷惑がられてしまう事態は保護者自身の不勉強の結果が招いたものだと、あえて厳しく考えておくべきではないでしょうか。
 子どもの成長に合わせて、あるいは成長を見越した上で適切な情報収集を怠らず、さらにその情報を鵜呑みにせず取捨選択できるだけの「自分の方向性や観察力」を持ち続けること。こうした「デキる保護者」じゃないとダメなのか、と感じたからこそ、勉強会の参加者から笑い声がなくなっていったのでしょう。

vol.54 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2012年 9月号掲載

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