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Vol.56 子どもたちの算数嫌いが増える理由

 

 小中学生を対象として行われている全国学力調査は2007年から実施されていますが、このたび07年から10年までの4回分を一括した分析結果が発表されました。算数については、小6の半数近くが「小数のかけ算・割り算」の意味が理解できていないという深刻な結果が報道されました。今回はその背景と予防策について紹介していきます。

小6生は何につまずいているのか(1)

 文部科学省の国立教育政策研究所が発表したデータによると、「小数のかけ算・割り算」において、「90×0.7」といった単純な計算の正答率は高いものの、文章題から計算式を導き出す問題では正答率が低く、「赤いテープの長さは120cmです。赤いテープの長さは白いテープの長さの0.6倍です。」という文から長さの関係を正しく表した図を選ばせる問題の正答率は、わずか34.3%しかありません。また、「白いテープの長さを求めなさい。」という問題(式を作るだけ、解答は必要ない)でさえ、正答率が41.3%に留まっているというのです。

      

 ここには2つの大きな問題が見え隠れしています。まず、白いテープの長さを求める式を作る問題においては、子ども達が「120×0.6(不正解)」なのか「120÷0.6(正解)」で悩んでいることがわかります。事実、不正解の式を選んだ子どもの割合は48.6%と正解者の割合より高くなっていて、事態の深刻さを紹介する最適な事例となってしまいました。
 その原因として、
「赤いテープの長さは120cmです。赤いテープの長さは白いテープの長さの0.6倍です。」
       ↓
「120(赤)=白×0.6(倍)」

と、和文英訳と同様に「文章を式に翻訳するイメージ」がつかめていないことがあげられます。この式を作ってから「120÷0.6=白」と変形するのが道筋ですから、翻訳できないことには一歩も前に進めないことになってしまいます。ここでは、普段から文章題を「今勉強しているのは割り算だから、割り算で解けばいい」といった感じで計算を作業として扱ってしまい、この「翻訳するイメージ」をおろそかにして解き方だけを覚えてきた子どもたちには共通してこの傾向が見られることをお伝えしなければなりません。そして、この傾向を中学生になるまで放置してしまうと、その後どれだけ勉強に時間を割いても、問題数を増やしても状況が急激に好転することがないということを、普段中学生に数学を教えている者として明言することができます。

 

小6生は何につまずいているのか(2)

 次に、図を選ばせる問題からは「赤いテープは白いテープの長さの0.6倍です」という文から赤いテープが白いテープより短いことをイメージできないこと、つまり「0.6倍ということは計算結果が元の数字より小さくなる」ことを意識できていない子どもたちが多いことがうかがえます。事実、紹介した問題(1)の正解は4番ですが、不正解の3番を選んだ割合が50.9%と半数を超えていて、子どもたちが、長さの関係を全くイメージできていないまま機械的に式を作り答えを出そうとしていたことが推測されます。
 こうした傾向は、この10年余りで見られるようになったものです。2008年の全国学力調査の出題でも(下図参照)正答率が45.3%しかなく、今年の小6生と同じ傾向がすでに見られていました。

         

 さらに、全国学力調査の前身ともいえる「計算の力の習得に関する調査(平成18年)」には、5年生で学ぶ小数同士のかけ算「0.7×0.4」の正答率が、平成10年に比べて21ポイントも低下した56%となってしまったこと、さらに「2.8(0.7より大きい値になっている!)」という誤答が37%もあったことが記載されているのです。
 こうした結果から、ここ10年ほどの間で「かけ算、割り算の解き方」は習ってきたけれど、自分が何をやっているのか、何を求めようとしているのかといった「計算の意味」については、しっかり理解できないままに終わってしまっている子どもたちが急増していることがわかります。子どもがテストで「×」をもらってきたとき、ほとんどの保護者は計算ミスととらえて勉強不足を叱るのかもしれませんが、これではいくら計算量を増やしても正解はできません。単なるミスでは済まないもっと深い問題が今の小学生の根底にあることを、是非知っておいていただきたいのです。     

今から身につけたいちょっとした習慣

    

 みなさまも小学生の時に「きちんと式を作りなさい」と指導されたことがあると思います。今の子どもたちも同様ですが、答えを求めるまでの過程においては「文章を読む(→翻訳する)→ 式を作る(→式の意味を吟味する)→ 答え」と、カッコで示した部分を意識して、普段の勉強の様子を見てあげてください。「これは割り算ね!」と計算の方法を確認する前に、文章を翻訳することはもちろん、できれば図に表すところまでを習慣にしておくと、割合や比を学ぶ際に有効です。
 また、最近の子どもたちの傾向として、「ありえない誤答」というものがあります。自分の計算ミスを吟味することなく、車の速さを「時速900km」とか「時速7km」などと平然と書いてしまうケースがよく見られます。この時「ちょっと待てよ」と自己チェックができるようになるだけでも、算数の勉強が作業から思考に変化していきます。「明らかにおかしいことに(自分だけ)気がついていない状態」は計算ミスでも注意力不足でもありませんから、お子さまの答案やノートを確認する時のポイントとして覚えておいてください。     

vol.56 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2012年 11月号掲載

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