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Vol.70 「選ばれる学校」になるための公立中高一貫校の取り組みとは

 

 いま私の手元には、東京都教育委員会が発行した「平成23年度進学指導報告書」があります。これを見ると、都立高校の進学指導(進路指導・教科指導)の実態を読み取ることができるのです。紹介されている高校のなかには、今話題の「公立中高一貫校」も含まれていますので、この場を使ってできる限り紹介していきたいと思います。

公立の学校に課せられる高い要求

 今回紹介するのは、都立桜修館中等教育学校に関する報告内容です。この学校は2006年(平成18年)に開校し、1期生から大学合格実績は目を見張るものがあるため、保護者の間でも注目されている学校です。この報告書は、1期生が高校3年として受験勉強に励んでいた1年間の実態について書かれたものだということを覚えておいてください。
 まず驚かされるのは、これを作成したのが学校の教員ではなく「進学指導アドバイザー」として学校の運営を客観的に診断した某大手教育系企業だということです。学校というと、我々はなにかと閉鎖的なイメージを持ちがちですが、公立の中高一貫校であっても都のバックアップのもと、民間のノウハウで評価・改善につなげるシステムがすでに構築されつつあるのです。
 報告書の内容に目を向けると、その項目は、

 (1)進学実績向上のための経営戦略の診断
 (2)進学指導体制の診断
 (3)指導力向上に向けた教科指導体制の診断
 (4)診断を受けての校長意見

となっており、「ここまで公表しても大丈夫なの?」と思わせるほどのリアルな内容になっています。
 例えば(1)に目を向けると、「今年度は1期生(高3生)の進学指導を優先させたが、次年度においては6年間を見通した指導システムの構築が課題」とあります。具体的には「高校受験のない中3・高1生の中だるみ対策としての学習指導システムを作ること」が課題とされていて、実力養成・実力測定の方策が具体的な教材名のレベルで記載されているのです。
 (2)では、学校側が「すぐに取り組める改善策」として提示した内容が目をひきます。教員の知識・スキルを上げるために「高3生の志望校検討会を実施し、夏休み前の段階で高3生全員についての課題と展望を共有する」といったものから、「予備校よりも早く夏期講習日程を提示する」というものまであります。ちなみにこの年に行われた夏期講習は60講座もあり、受講者は延べ1400人に達したそうです(1学年は160人)。
 先生方が最もシビアに評価されるのが(3)です。「国公立大学・早慶への進学率向上という目標に相応した指導計画・授業であるか」「入試頻出事項が授業内に生徒へ提示されているか」「上位層を伸ばす工夫をしているか」などが診断基準とされています。塾・予備校ならともかく、公立の中学・高校の教員がここまで求められることになるとは、おそらく先生方もビックリされているのではないでしょうか。課題・改善策として教科ごとに細かく専門的な指摘がなされています。授業で用いられたプリントに対するダメ出しまで書かれていて、その細かさには私も驚きました。

 

この学校が一番気にしていること

 次に紹介するのは(4)の校長意見です。ここから「現場が感じている学校の課題」を浮き彫りにすることができるので、この学校を進学先の一つに考えている保護者の方々にとっては最も知りたい情報になることでしょう。
 この学校が「開校6年目」の段階で問題視していたことは、私には「文理選択における理系希望者の少なさ」と読み取れました。改善策として「理系志望者を学年生徒数の40%程度に増加させるための方策を実施し、今までの取り組みについては改善・充実を図る」とあります。具体的には、

 (1)新中1からは、数学教員を必ず担任に配置する
 (2)理系大学院生によるワークショップを高1生対象に開催する
 (3)高2生対象に実施している首都大東京体験学習において、理工系講義への参加を充実させる
 (4)高1生対象の「大学教員による進路講演会」を実施する
 (5)中3生対象に東京大学見学会を導入・実施し、その際工学部とも連携を深める
 (6)10月からチューター制度を導入し、5名の東京大学理系学生を採用済

といったものが挙げられています。皆さんがこの学校の入学説明会に参加したとして、これらの施策を「約束します!」と宣言されたら、受験校の一つとして候補にいれますか? 私の妻にこの話をしたところ「受験させるに決まってるわよ」とのことでした。これが、この診断を実施する「本当の理由」 なのでしょう。


「進学実績」だけの学校選びは×

 これらの施策の良し悪しは別として、新設校に対する世間の評価が固定してしまう前に課題を分析し、改善策を入学説明会で発表してしまう流れを作ってしまうことは、受験校選択に悩む保護者に対する有効な情報開示となる上に信頼のおける学校としての評価にもつながるでしょう。
 公立中高一貫校の人気には、費用の安さだけではなくこうした情報開示も大きな役割を果たしていると思われます。塾・予備校・教育産業から「プロ」を呼んで進学実績向上のための診断を行うことまではできても、課題をすぐに改善するというところまでは私立中学・高校においてもたやすいことではありません。それを都が関わって公立中高一貫校で(いくつかの公立高校でも行われている)行っているところに、多くの人が驚き、教育環境の変化を感じ、そして期待をしているのです。
 ただし、気をつけなければならないこともあります。最近では「高校の予備校化」が問題とされている一面もあります。進学指導・進学実績を向上させることに気をとられるあまり「(生徒は)勉強だけしていればいいんだ」とばかりに、強烈な管理を課す学校も公立・私立を問わず増えているといいます。
 いまどき塾・予備校だってそんなことはしないのですが、心身ともに伸び盛りの中学・高校時代にはしっかり勉強することと並行して豊かな個性や創造性も育成しなければなりませんよね。
 お子さまが進学する中学・高校を選ぶ際には、学校説明会に足を運び「先生の表情」「在校生の表情」もしっかり観察することをお勧めします。勉強面の充実だけでなく生活面の充実はどうなのか、先生も生徒も毎日楽しく過ごせているのかどうかを、表情から読み取ってください。心からの笑顔と作り笑顔は明らかに違います。たとえ生徒から見えないところでこれだけの高いレベルのスキルを要求され、自身の課題を指摘されていたとしても、この仕事にやりがいを感じる先生方であれば堂々と胸を張って自分の勤める学校を薦めてくれるはずです。彼らの表情が2年後、3年後のお子さまの表情につながっているのです。

vol.70 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 2月号掲載

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