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Vol.71 お子さまの計算力を点検してみましょう

 

 1月号で紹介した「算数の学習に関する意識調査」の中で、計算問題のでき具合と算数の好き嫌いとの相関が4年生の段階で顕著になっていることをお伝えしました。学年末を迎えるにあたりお子さまの習熟度を点検しておきたいと考えるおうちの方は多いと思いますので、計算問題の調査結果をもとに差がつき始める3年生から5年生までのチェックポイントについて学年別に紹介していきます。

3年生のポイント

① 69÷3
② 4.7+9
③ 13-1.8
④ 298×436

 ①はおよそ3割の児童が間違えており、誤答の多くは「9あまり42」となっています。商が2桁の数になる計算の仕方が定着していないこと(九九の範囲で処理してしまう)が理由です。次に、3年生にとってハードルが高い計算である「小数と整数の混じった計算」について見ると、②は3人に1人が間違えており(誤答は「5.6」が圧倒的に多い)、③は半数を超える児童が間違えているので要注意です。
 ③に注目すると、誤答はくり下がりの計算で間違えた「12.2」よりも「0.5」「1.5」が目立ち、位取りを全く気にしていなかったり、「ひく数・ひかれる数」の概念を意識せずに計算したりしている傾向が見てとれますから、お子さまが同様の間違いをしている場合には時間をかけて復習する必要があります。
 ④は発展的内容とされている「3桁×3桁」のかけ算で、正答率は3割を下回っています。誤答は「10728」が最も多く、筆算に慣れていないこと(百の位をかける作業に慣れていない)が主たる原因ですが、大人から見れば「100×100=10000を知っていればおかしいと気づく」はずのものですよね。こうした「ちょっとした点検」は誰かがアドバイスしてあげるしかありません。「計算のやり方」だけを覚えている子どもはいつまでたっても自分の出した答えに疑問を持つことがないので、おうちの方のちょっとしたアドバイスは有効です。

 

4年生のポイント

① 23-1.8
② 6÷8
③ 17-4×3+8
④ 17.9÷7 を小数第一位で四捨五入

 ①は正答率29.4%、つまり10人に3人しか正解できていない問題で、3年生で理解できなかった計算のしくみ(位をそろえて計算すること)が不十分なままであることを示しています。②は「答えが小数になる整数÷整数の計算」ですが、4人に1人が間違えていて誤答の多くが「75」であることから、小数点の打ち方が理解できていないことが原因です。この計算は後に学習する「割合」を求める際に必要となりますから、この不出来こそが「割合」の概念を習得することの妨げになっている可能性が高く、お子さまに理解不十分の傾向がみられるときには、早めに計算ドリルから一緒にやり直してあげることをお勧めします。
 ③の四則混合計算は正答率が6割を下回っている問題です。誤答例は17-4を先に計算してしまった「47」が多いかと思いきや、最も多かったのが「3」であり(おそらく17-20を計算し、負の数を学習していないので-3ではなく3と答えた)、計算順序の決まりが身についていないだけでなく、目の前の数字をただゴチャゴチャといじっているだけという様子がうかがえます。この計算が不安定のままだと、中学生になって最初に学習する「正の数 負の数」でいきなりつまずく原因となります。
 ④は正答率が4割を下回っており、四捨五入が4年生にとって最も頭を悩ませる内容であることを示しています。①の正答率からもわかるように、小数を自由自在に扱えるようにしておくことが4年生にとって最重要課題なのです。


5年生のポイント

① 5.6÷2.86 商を小数第一位まで求め余りも求める
② 9.8-2.8÷0.4
③ 7/10 - 1/6
④ 8.4÷□=3.5

 5年生で最も正答率の低い分野は「小数÷小数の計算」で、余りまで求める計算が極端に弱くなっています。この計算は大人や大学生でも間違える人が多く(中学生以降は分数計算となるので余りを求める作業を必要としないから)、子どもへの説明に窮するおうちの方も多いことでしょう。余りの小数点をうち忘れたり、位置を間違えたりと計算ミスが出やすいため正答率が低くなりがちです。①の正答率は29.5%でなんと10人に7人が間違えています。誤答で最も多いのは「1.9余り166」ですが、私が心配しているのは「『余りの数は割る数より小さい』という基本ルールを無視して答えを書いている子ども」が多いことです。3年生のポイントでも説明したとおり「自分の出した答えに疑問を持たない」まま5年生まで学習が進んでいることを危惧しています。「答えの見直し」といえばもう一度計算をし直すことだと考えている子どもは多いですが、この分野の学習を通して「正しい見直しのやり方」を再点検してあげることが必要なのです。
 ②は少々意地悪な計算で、「9.8-2.8」が計算しやすい数であるがゆえに「7÷0.4=17.5」の計算をしてしまった人がとても多くなります。③は3人に1人が間違えていますが、その理由の多くが「約分ミス」でした。子どもはもちろん大人でも「ケアレスミスだよ」と楽観視しがちですが、「約分が必要かもしれない」という注意力のなさはミスではなく実力と言わざるをえません。
 ④は正答率が54.4%とおよそ半数の5年生が間違えている問題です。誤答の多くは「29.4」、つまり8.4×3.5の計算をしているのですがこれは深刻な状態で、「割り算の概念」を無視して計算の方法(8.4÷3.5なのか、8.4×3.5なのか)ばかりに気をとられていることの表れなのです。8÷2=4であることを思い出せば□に入る数字が2に近い数であることはイメージできるし、8.4÷29.4の計算結果が1より小さくなることもちょっと冷静になれば気づくものです。その「ちょっと待てよ」と立ち止まることができない状態こそが、算数・数学の学習方法が間違っていることを意味します。④の計算をチェックする際には、お子さまの「考え方」も一緒に確認しておきましょう。もしも前述の傾向が見てとれるようであれば、おそらく文章題で式を作るときにも「これはかけ算なのか、割り算なのか」という計算方法を先に気にするはずです。これではどれほど多くの問題を解いたとしても、残念ながら状況が好転することはありません。大切なことは文章に対峙する際の「考え方」がずれていることを知り、計算問題の段階から修正してあげることなのです。

答え
3年生:①23 ②13.7 ③11.2 ④129928
4年生:①21.2 ②0.75 ③13 ④2.6
5年生:①1.9余り0.166 ②2.8 ③8/15 ④□=2.4

参考:『小学生の計算力に関する実態調査2013』 ベネッセ教育総合研究所2013年

vol.71 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 3月号掲載

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