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Vol.72 急激に進化する「映像教材」のいま

 

 昨年から今年にかけて、スマートフォンやタブレット端末を利用した「映像教材」に関する報道が多くなりました。高校生向けが中心だったものが、今では小学生・幼児向けのサービスを開始する事業者も増え、公立小中学校での利用も始まっています。子どもたちの学習環境はどこまで変化していくのでしょうか。

こんなにある「映像教材」の事例

 まずは、ここ数か月の間に報道された小中学生に関わる「映像教材」の事例についていくつかご紹介します。
(1)啓林館(算数の教科書でおなじみ)
 学習参考書・問題集など自社出版物の紙面を動画授業として配信するサービスを開始。参考書を執筆する有名進学校の教員20人が設問ごとに動画で解説してくれる。対象は啓林館の中高生向け参考書のうち高校用数学・英語・理科、中学校用など19冊分。利用料は月額500円。携帯料金で一括決済でき、1か月ごとに契約更新しなければ自動的に退会処理される。子どもが使わないのに利用料だけ払うのを防ぐ。
(2)ディー・エヌ・エー(携帯ゲーム、プロ野球チームでおなじみ)
 スマートフォンやタブレット端末向け映像教育講座を立ち上げ、小学校入学前の子どもを対象にした「小学校入学準備号」の提供を開始。4月からは「小学1年生講座」を開始。受講料は小学校入学準備号が無料、小学1年生講座は6月末までの無料提供を経て7月から月額980円。対象学年は中学生、高校生向と順次広げる予定。
(3)ベネッセコーポレーション
 中1向け教材に独自の端末を導入。今春、小1~5、中1~3、高1に対象を拡大。通信教育教材を自宅で端末を使って学ぶ。
(4)その他
 すららネットは旺文社の中学生向け英単語問題集の配信を開始。ブックライブは英俊社が刊行する中学・高校別の入試問題集112冊を電子書籍化。学校での導入事例も報告されています。
(5)東京都荒川区
 4月から区立の全34小中学校にタブレット端末約9200台(先行配布分を含む)を配布すると発表し、14年度区予算案に事業費約8億円を計上した。区内24の小学校(児童約8000人)では学年に応じて配布比率を変えて交代で端末を使うが、中学校10校(生徒約3000人)には1人1台を貸与する。
(6)佐賀県武雄市教育委員会
 自治体単位で「反転授業」に取り組む方針。反転授業とは、子どもが自宅に持ち帰ったタブレット端末で動画教材を見て予習し、自分の考えを端末の「小テスト」に回答した上で学校の授業に臨み、意見を出し合いながら考えをまとめたり問題を解いたりして、学力の定着を図るというもの。
(7)早稲田大学
 開講科目の講義内容を紹介する動画やオンデマンド授業動画などを配信する授業内容公開サイト「WASEDA COURSECHANNEL」を開設。学生や保護者はもちろん、社会人も含めて誰もが講義内容を動画で視聴でき、英語による授業コンテンツは早稲田大学高等学院や伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校で教材としての活用も検討されている。

 

「映像教材」の効果は使い方次第……

 映像教材に最も期待されるもの、それは前述の「反転授業」の効果です。これまでは、一部の進学塾で先取り学習を進めていた子どもたちだけができていた予習を、民間サービスであっても安価で利用できる映像教材を上手に用いることで、誰もが自宅で行えるようになります。
 我々がかつて受けてきた学校教育では、知識は先生から子どもへ与えられるものでした。親鳥とひな鳥の関係と同じで、親鳥(先生)が用意してくれる知識という名のエサを、ひな鳥(子ども)が口を開けて待っているという構図だったわけです。
 ところがこれからは、映像教材を手にできる子どもであれば、本人のやる気次第でいくらでも知識を先に吸収できるようになります。知識は与えられるものではなく、自ら獲得するものに変わるのです。自主性を養うという点において、これは学校教育の根幹を揺るがすほどの「子どもにとってプラスの変化」であると思います。
 その一方で、知識の吸収に貪欲でない子や学習習慣ができ上がっていない子にとっては効果が期待できません。興味や関心を持って教材に接しないと「ただ動画を見ただけ、何も頭に残っていない」ということは充分に起こり得ることですし、タブレット端末であれば寝転んで布団の中でも見ることができるわけですから、「学習習慣を身につける」という観点から子どもの様子にイライラするおうちの方も増えることでしょう。おうちの方がいくら「勉強しなさい!」と叫んだところで、子どもに「今、ちゃんとやってるでしょ(ニヤリ)」と寝転んでタブレット端末で動画を見ながら言われてしまっては、その効果には疑問符がつきます。
“何を、いつ、どのように勉強するのか”
について、おうちの方がチェックしてあげることが映像教材を利用する上での注意事項と言えるでしょう。


先生の役割も大きく変わる

 タブレット端末を配布・使用する学校は今後ますます増えることが予想されます。その結果、授業の進め方が大きく変わりますから、先生に求められる役割や資質も当然変わります。
 これまでとは違って先生自身が知識を伝えるわけでなく、子どもたちは基礎知識を頭に入れてくることが前提になっていますから、授業の進め方には工夫が必要です。予習をしてきていない子の扱いをどうするか、意見を出し合う際には「お客さん」になっている子がいないか気を遣う必要があります。 つまり、先生にはコーディネーターとしての役割や教室管理能力が今まで以上に求められることになるのです。30人もの子どもたちが何を学び・考え、何を発信しようとしているのかチェックすることは、私が想像する限り大きな負担だと思います。 先生の中には「教えることが好き」「自身が子どものころに習った先生に憧れて」といった動機で仕事をしている方がたくさんいます。それができなくなるかもしれない映像教材の導入は、先生方の仕事観を変えてしまうような一大事になるかもしれません。

 映像教材の最大のメリットは「何度も繰り返して見ることができること」です。何度も繰り返すことで映像の内容を自分の頭の中にコピーしてしまえば受験にも効果が期待できます。その反面、皆さんが受講されている作文講座や算数・数学など、知識を得ることがゴールではなく、その活用に主眼が置かれる勉強については過度な期待は禁物です。映像教材はあくまでも「出演者のまねができるようになる」ところまで。これが勉強といえるのかどうなのか、あと数年は試行錯誤が続きそうですから、特に小学生に対しては使い方に注意が必要ですね。


vol.72 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 4月号掲載

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