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Vol.75 小学生の「読書習慣」に関する昔と今

 

 いま私の手元に、1989年に調査が行われた「小学生の読書」に関する資料があります。教育を取り巻く環境が大きく変わったといわれる昨今、25年前と比較して変わったもの・変わらないものをしっかり把握しておくこと、そしてこの冊子を手に取っている皆さまの多くが該当するであろう「当時の小学生」の姿を思い出し、21世紀を生きるお子さまの生活と重ね合わせてみることは、これからの子育て・教育環境の整備にとっても大変有意義な情報であろうと思い、今回紹介させていただくことにしました。それでは25年前にタイムスリップしてみましょう。

25年前から変わらない「読書」への危機感

 この資料の冒頭には、こんなことが書かれています。
 『昨今の目覚ましい科学技術の発達で私たちの生活の中に入り込んできた新しい情報メディアは、小学生の世界にもパソコンやビデオの普及といった形で浸透し、その生活に大きな影響を与えている。このような時代の趨勢[すうせい]の中で、読書の重要性が強調されている』
 25年たった現在でも、「パソコンやビデオ」の部分が「インターネットや携帯電話・スマートフォン」に変わっただけで、子どもたちを取り巻く状況を心配する大人たちの様子が何ら変わらないことがわかります。
 おそらく当時も「子どもたちの読書量・時間」の減少を憂慮する声は大きかったはずです。25年前の子どもたちは、主に家庭でどのような時間の使い方をしていたのでしょうか。
 この調査は、全国規模で偏りのない結果がでるように、対象を全国6都市(地域別)から選定されています。皆さまの小学生時代と比較して大きな差異がありますでしょうか。そして25年後の現在、皆さまのお子さまの日常と比べて時間の使い方に変化が見られるでしょうか。

 

一日の読書時間とその他の活動時間との比較(単位:分)

本を読む テレビを見る ゲームをする 勉強する マンガを読む 外で遊ぶ
全体 42.4 140.6 32.8 79.0 50.4 101.2
学年別 5年生 43.9 140.0 35.8 73.8 51.2 108.4
6年生 41.1 141.2 30.0 83.9 49.6 94.1
性別 男子 36.9 146.6 52.5 74.3 54.5 119.4
女子 48.1 134.5 12.9 84.0 46.0 83.4

 おそらく変化が大きいのが「外で遊ぶ」「テレビを見る」時間だと思われます。最近の小学生は塾や習い事で放課後は忙しく、外で遊ぶ時間を捻出することは大変だと聞きますし、テレビより動画サイトを視聴する時間のほうが長いという声もよく耳にしますから、どちらも時間が減少していると予想されます。その分増えていると思われるのは、ゲーム、インターネットに要する時間でしょう。機器が携帯型に変化したこともあって、保護者がしっかり管理しないとついつい時間を浪費してしまいがちです。
 このような環境の変化により、現在の小学生が25年前と同様の「1日40分の読書時間」を捻出することは、子どもの自主性に任せるだけでは難しくなっていると思われます。実は、この資料には「読書」と「国語の成績」の相関についても紹介されていて、「1日にほとんど本を読まない(読書時間0分)」と回答した子どもが全体の4分の1もいるにもかかわらず、国語の成績が下位と位置づけられている子どもたちの平均でさえ25年前は「1日平均32・7分」の読書時間が確保されていたというから驚きです。ちなみに上位の平均は52.7分、中位の平均は42.2分となっていますから、「自分の子どもに読書習慣がない」と嘆かれる方は、ご家庭で意識して「読書時間を作りだす」ように仕向けていくことが必要です。


読書習慣を形成する要因は何だろう

この資料には「読書習慣がついている子どもの傾向」に関する興味深い調査結果があります。読書習慣がついている子どもについて、例えば「算数の成績」との相関を見ると、「とくい」と答えた割合が54.5%、「にがて」と答えた割合が46.4%となっており、読書習慣と算数の成績には関連性が低いことがわかります。
 あくまで25年前の結果ですが、読書習慣をつける要因となっているであろう項目を5位から順に紹介していきますので、お子さまの読書習慣について気にされている方は参考にしてください。
【5位】家での勉強時間 多い55.4%に対して少ない39.1%で差が16.3%
【4位】家の人の読書 (親が)読書好き57.6%に対して嫌い39.3%で差が18.3%
【3位】テレビ視聴時間 少ない67.1%に対して多い42.8%で差が24.3%
【2位】国語成績 とくい64.2%に対してにがて36.4%で差が27.8%
 となっており、活字に触れる時間の差が読書習慣に影響すること、そして国語の成績に影響することは間違いないようです。ゲームや動画視聴で時間を浪費する傾向のある小学生には、歯止めをかけて活字に触れる機会を増やす必要がありそうです。
 それでは第1位です。意外かもしれませんが「学校」でした。この調査対象となったのは16の小学校ですが、読書習慣がついている子どもが在籍する割合は、最大の学校の73.0%に対して最小の学校では35.1%と、37.9%もの差がついていたのでした。
 この学校間格差の原因として、調査結果では「学校図書館の利用度の差」を挙げています。読書習慣が身についている子どもが多い上位3校(以下A)と、下位3校(以下B)を比較すると、「学校図書館で本を読んだり借りたりすることがほとんどない」と答えた割合は、Aの18.6%に対してBでは63.2%。また、「学校図書館で読んだり借りたりする本の数は3、4年のほうが多かった(調査は5、6年)」だと、Aの32.8%に対してBは60・9%にも達しているのです。
 この原因が「学校ごとの読書に対する姿勢の差」にあることは間違いありません。図書館の使いやすさはもちろんのこと、本の種類や冊数など、子どもたちの興味や関心を高めるような仕掛けがあるかどうかで、子どもたちの読書習慣は変わってくるのです。

 この調査から25年経って、今では多くの小学校や中学校で「朝読書」の時間が設けられています。
 小学生でさえスマホを持つ時代だからこそ、「自分で本を読む」ことを学校や家庭で指導することが重要視される時代となりました。保護者として小学校に出向く際はもちろんのこと、特に私立中学進学をお考えの方は、「学校公開・説明会」の折に図書館の様子をチェックされることをお勧めします。図書館には、その学校の「読書習慣への意識」がそのまま映し出されています。


資料:「小学生の読書(1989年)」ベネッセ教育総合研究所

vol.75 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 7月号掲載

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