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Vol.76 夏は自然科学にふれあう最大のチャンスです

 

 8月といえば夏休み。小学生の子どもたちは勉強に遊びにと充実した毎日を過ごしていることでしょう。そんな夏休みは使い方によっては「理科・自然科学の面白さ」に目覚める絶好の機会でもあります。
 小学生が夏休みに経験した出来事が「一生の記憶に残る」ことは我々自身が一番わかっていることです。皆さんはこの夏、お子さまにどのような経験をさせてあげますか。

夏休みの日常にある「自然現象」に注目する

 先日中学生の生徒たちと「ゴロゴロと雷の音が聞こえてきたら……」という話をしていてビックリしたことがありました。私が子どもの頃には、皆当たり前のように「ピカっと光ってから音が聞こえるまでの時間を数えて、雷が落ちた場所までの距離を推測する」ことをやっていたものですが、生徒たち(成績はよい)の中にはそんなことをやっている人がいないどころか教えてもらったことがある人すらいなかったのです。
 彼らは中学生ですから、理科の学習の中で「音の速さはおよそ秒速340mである」ことは習っているのですが、それが実体験と結びつくことなく知識として覚えているレベルで終わっているのです。光がとてつもなく速いことは誰でも知っていることですから、各自数えた秒数に340をかけるだけでおおよその雷との距離がつかめるのですが、いまどきの子どもたちの日常にこのような「知識を活かす機会」がないことを知って愕然としてしまいました。これでは「理科を好きになる」ことは難しいですよね。
 中学生で学習する理科の内容の多くは、それまでの「実体験の有無」によって知識の定着度が大きく変化します。音の速さを学習したときに「だから340をかけるのか!」と新たな発見がある子どもと、ただ板書を写して数値を覚えるだけの子どもでは、この分野への興味・関心の度合いがまったく違うことはおわかりいただけると思います。
 夏休みの夕方といえば夕立がつきものです。突然空が暗くなってゴロゴロと雷の音がし始めたときに、おうちの方が声をかけて親子で秒数を数えてみる体験だけでも、お子さまのその後によい影響があるかもしれませんね。同様にパソコンなどの精密機器の電源を切り、コンセントを抜く(いまどきは対策が施されているものが多いですが)方も多いと思いますが、その理由についてもお子さまに伝えておくとよいでしょう。
 また、「気温」というキーワードも重要です。毎年高温でニュースになる地域は熊谷(埼玉県)、多治見(岐阜県)など、けっして南国ではない場所です。どうしてこれらの地域が高温になるのか、原因を調べることで「ヒートアイランド」「ゲリラ豪雨」など現代の都市事情が浮き彫りになってきます。
 小学生の「日常生活」の中から見つけ出した興味・関心は、その後の学習はもちろん将来の進路選択にもよい影響を与えるきっかけになるかもしれません。

 

夏の夕暮れに空を見上げよう

 小中学生が最も苦手にしている理科の単元に「天体」があります。中学受験を考えている場合には「月の満ち欠け」が、中学生であれば「金星の動きと見え方」「地球の自転と公転」などが問われ、多くの子どもたちを悩ませます。これも「実体験のなさ」が原因に挙げられます。夏休みを利用して、親子で夜空を眺めてみてください。「よいの明星」と語句を覚えただけの子どもと、「夏休みに見た、日が暮れたときに一つだけ輝いていた星のことか!」と実体験を思い出す子どもでは、学習姿勢にすら大きな差が生じるものです。月の見え方について毎日観察を続けるのもよいでしょう。都会暮らしで星空が見にくい地域にお住まいの場合でも、月や金星は探せば見えるものです。
 たとえ両親が共働きで忙しくしていたとしても、「家に帰る途中、今日は本当に星がきれいだった」という会話のやりとりをするだけでも、好奇心旺盛な小学生は「自分も夜空を眺めてみたいな」「あの星はなんという名前だろう」「月はどうして三日月になったり満月になったりするのだろう」などと考えるようになります。お子さまが中学生になれば、忙しくなりおうちの方との会話も減ってきますから「星がきれいよ」などと話しかけても、イヤな顔をされるかもしれません。中学生の勉強は「テストの点数を取るために範囲を覚える」スタイルになりがちですから、ゆっくり星空を眺めながら会話ができ、天体への興味・関心を楽しく育てることができるのは小学生の間、しかも夏休みのような機会しかないのです。
 夏休みにできる「小学生の自然科学体験」とは、必ずしも海や山に行かなければできないものばかりではありません。忙しい日常の中にもたくさんヒントはあるのです。

自然科学への興味は「(知的)好奇心の差」

 算数・数学、理科といった自然科学系の教科では、子どもたちの「(知的)好奇心の差」が学力差として顕著に現れます。物事をただ覚えるだけではなく、その成り立ちや理由をしっかりと理解する必要があるからです。そして、この自然科学に関しては子どもが興味・関心を抱いたり好奇心を持ったりするきっかけは、おうちの方の影響がほとんどであることはいうまでもありません。
「親は無関心だったけど子どもが勝手に興味を持って……」と、算数や理科を好きになっていったという子どもの話を私は聞いたことがありません。だから、子どもたちの「理科離れ」を心配するのであれば、あるいは「子どもが理科を苦手にしていて……」と悩むのであれば、まず子どもの周辺にいる大人たちが自然科学に対して、「ワクワクしている姿勢」を見せる必要があるのではないでしょうか。ただし、この姿勢は演技でもかまいません
本当におうちの方が今から算数や理科を好きになる必要はないのです。ただ一緒になって楽しんだり、わからないことがあれば一緒にスマホやPCで調べてあげたりするだけでよいのです。
 こうした姿勢だけであれば、今日からすぐにでも変えることができます。子どもたちにとっては、目先の成績や机上で学ぶ知識の蓄積だけでなく「自分で経験して肌で感じた体験」も大切なことであり、この体験は彼らの一生の財産になりますから、ぜひ彼らの視線を外に向けてあげてください。

 学習指導要領の改訂によりテストや入試では、例えば「ゲリラ豪雨」という語句を知っているかどうかの確認ではなく、その現象や理由を説明させる問題が多くなっています。夏、エアコンのきいた部屋で勉強し、受験直前に先生に教えられた理由を暗記してきた子どもの答案と、実際に見た急に暗くなった外の様子や短時間に降り注ぐ雨の様子を思い出しながら「自分の経験」を基にして論を組み立てた子どもの答案では、学校側はどちらを求めるでしょうか。少なくとも「21世紀型の学力」を考える学校では後者を意識しているのです。


vol.76 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 8月号掲載

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