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Vol.78 我々の時代では想像できなかった「小学生と情報通信端末」
子どもたちの生活の乱れを回避するためとして、「中学生に21時以降携帯電話を使用させないルール」を適用した自治体に関する報道が、一時期TVや新聞で大きく取り上げられました。今の子どもたちは物心がついたときから携帯電話やインターネットが身近に存在する世代ですが、その適切な使わせ方について我々保護者も再考する時期に来ているようです。
子どもが使う端末は「スマホでデビュー」ではない
今回紹介するのは、総務省の「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査」の結果です。
子どもが現在使用している情報通信端末(子どもの学年別)
単位:% | 小1~小3 | 小4~小6 | 中学生 | 高校生 |
---|---|---|---|---|
携帯電話 | 33.9 | 37.5 | 38.8 | 33.0 |
スマートフォン | 24.0 | 25.1 | 35.6 | 68.3 |
タブレット型パソコン | 12.8 | 17.6 | 18.6 | 13.4 |
ノートパソコン | 40.2 | 49.2 | 54.6 | 62.5 |
デスクトップ型パソコン | 24.4 | 30.6 | 37.5 | 37.9 |
通信機能付きゲーム端末 | 46.4 | 63.4 | 54.1 | 38.8 |
通信機能付き音楽プレーヤー | 5.8 | 12.7 | 24.1 | 29.1 |
調査対象は小学生から高校生までの子ども(第一子)を持つ保護者4800人となっています。第一子というところがポイントで、子どもの成長にあわせてどのタイミングでどのような情報通信端末を与えてきたか、その使い方について保護者がどのような認識を持っていたかを調べたという点でとても興味深いデータとなっています。
上表のデータは、子どもたちが世代別にどのような情報通信端末を使っているのかを明らかにしたものです。言い換えると「将来皆さんのお子さまが、どのタイミングでどの端末に乗り換えるか」の予測データともいえるでしょう。小学生の場合、自分専用の携帯電話(スマートフォン)を持っている割合は30%ほどに留まっていることもあり、通信機能のあるゲーム端末やご家庭のノートパソコンを通してインターネットを使用し始めるケースが多いことがわかります。ところが「通信機能付きゲーム端末の利用目的がわからない」と答える保護者は、小学生の子どもを持つ方でおよそ4人に1人を超えていて、保護者がその機能を十分に理解できていないがゆえの「使い方指導の不徹底」が、後々スマホなどの使い方をめぐるトラブルの原因の一つになっていることが推測されるのです。そのスマホについては、すでに高校生の7割が所有する必須アイテムとなっていますから、ご家庭においては「いつから持たせるか」を念頭において、小学生のうちから端末との正しい付き合い方について会話しておくことが必要だと思われます。
急激に進む使用開始時期の低年齢化
次に紹介するデータは、「小学校入学前から子どもが利用していた情報通信端末」についてです。
情報通信端末を子どもが小学校入学前に利用開始した割合(子どもの学年別)
単位:% | 小1 | 小2 | 小3 | 小4 | 中1 | 高1 |
---|---|---|---|---|---|---|
携帯電話 | 15.8 | 12.8 | 8.2 | 4.5 | 4.0 | 1.8 |
スマートフォン | 10.3 | 6.5 | 3.0 | 1.0 | 0.5 | 0.3 |
タブレット型パソコン | 6.5 | 3.7 | 2.3 | 0.3 | 0.5 | 0.3 |
ノートパソコン | 21.8 | 16.0 | 10.0 | 10.8 | 5.7 | 5.8 |
デスクトップ型パソコン | 17.8 | 16.0 | 11.3 | 6.8 | 9.5 | 9.5 |
通信機能付きゲーム端末 | 21.5 | 19.8 | 15.0 | 16.3 | 12.5 | 8.0 |
通信機能付き音楽プレーヤー | 3.3 | 2.5 | 2.0 | 1.8 | 0.5 | 0.3 |
調査時の高1生(現高2)だと、小学校入学前からノートパソコンを使っていた子どもの割合は5.8%、ゲーム端末は8.0%となっていますが、これが小1生(現小2)になるとそれぞれ21.8%、21.5%と跳ね上がっていて、情報通信端末の利用開始時期の低年齢化を示しています。
総務省によると子どもの端末利用開始時期はここ3年で大きく上昇しているとのことで、現在の小4が分水嶺になっていることがデータからも読み取ることができます。彼らが中学・高校と成長していく過程における端末との付き合い方は、現在の中高生ともまた違ったものになるであろうことを我々大人は想定しておく必要がありそうです。
保護者がチェックすべきは「時間の浪費」
こうした通信端末との付き合い方において、我々大人であっても難しく感じられるのが「自己管理」です。個人情報の保護やウイルス感染の可能性といった危険を伴うものもあれば、「時間の使い方」もその範疇に入ります。私もネットで調べものをしながら段々と違うことを検索し始め、気がついたら随分と時間を浪費していたという経験が何度もあります。現在大学生の長男は「自分が高校受験の頃にスマホが手元にあってLINEができる環境にあったとしたら、正直言ってしっかりと勉強できていたかどうかわからない」と言います。今回自治体主導で始めた「21時の携帯電話規制」も、自己管理がまだまだ充分でない中高生にとっては実は救いの手だった可能性も否定できません。
急激に進化する情報通信端末は、使い方さえ間違えなければ小中学生にとって非常に有用なツールだと私は考えています。しかしながら彼らには、まだ「自己管理のためのルールを気にする習慣」が確立されていません。「自分が1日に使える自由時間には限りがある」という感覚が身についていない以上、保護者を含む大人が何らかの規制をかけなければならないという議論は、現在の小学校低学年の子どもたちが中学・高校と成長する過程において、いま以上に必要となる可能性が高いと思われます。
「時間の使い方」を正しく身につけない弊害は、小学生の時から少しずつ蓄積され、中学のある時期に様々な問題としていきなり表面化します。インターネットはもちろんゲームも含めて、時間の使い方が目に余るようであれば、中学入学前が「習慣を見直す最後のチャンス」ととらえてご家庭でのルールを決めておきましょう。
資料:「子どものICT利活用能力に係る保護者の意識に関する調査報告書」2014年(総務省情報通信政策研究所)
vol.78 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 10月号掲載