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Vol.81 子どもたちが悩む「上手な勉強のやり方」

 

 ある調査結果によると、小学生の約40%、中学生にいたっては約55%もの割合で「上手な勉強のやり方がわからない」という学習の悩みを抱えていることがわかりました。「やる気が起きない」という悩みを持つ割合も、中学生になると半数を超えている(小学生39.8%、中学生55.5%)というのです。
 指導要領の改訂により、授業時間や宿題といった「学習量」の増加には注目が集まりましたが、「学習の質」にはまだまだ改善の余地があるようです。

子どもたちが感じる勉強に対するモヤモヤ

 今回皆さまに紹介するのは、「小中学生の学びに関する実態調査」の結果です。調査対象は小学4年生から中学2年生までの子どもとその保護者5409組となっています。2014年2月から3月の調査ですから、今の子どもたちの「学習に関する意識・実態」を探るデータとして、とても興味深いものといえるでしょう。それでは、子どもたちの「学習上の悩み」から見ていきます。

学習上の悩み(複数回答)(%)

(単位%) 小学生 中学生
どうしても好きになれない教科がある 60.2 66.3
上手な勉強のやり方がわからない 39.9 54.7
やる気が起きない 39.8 55.5
勉強に集中できない 33.3 43.9
勉強したことをすぐに忘れてしまう 27.7 40.4
勉強が計画通りに進まない 27.7 43.7
テストでよい点数がとれない 24.7 52.7

 項目の中には「授業の内容が難しすぎる」「授業の内容が簡単すぎる」といったものもありますが、ポイントは欄内の各項目に比べると低くなっており、子どもたちの悩みの中身が学習方法を中心とした「学習の質」にあり、具体的にいえば「主体的に勉強しようとする動機」「短い時間で効果的に結果を出す工夫」といったものになっていることがわかります。
 私にも覚えがありますが、勉強を続けていくための動機については、上手にやっている友人の方法を真似するなど、「方法論」から入って様々に試し、取捨選択しながら自分流を作り上げていく過程で「勉強の楽しさに気づく」ケースが多いものです。ところがこのデータを見る限り、とくに中学生においては「自分のやり方を見つけられていない」という実感を持っている人が多くなっているようで、「方法論から入ってみれば?」といったアドバイスすらもらえず、何をどうすればよいのか見当がついていないまま毎日が流れてしまっている様子がうかがえます。
 これらは、「小学生の間に培った学習方法の差」ともいえるはずです。お子さまが小学生の間は、中学受験の有無に関わらず子どもの学習状況において「学校(塾)で出された宿題をきちんとやる」「毎日コツコツ勉強する」「親に言われなくても自分から勉強する」といった(表面的な)学習方法を気にする保護者が多いのですが、学習の質(動機づけを含めた直接的関わり)は高学年になっていくにつれて薄くなりがちです。
 算数や理科の中身について教えることができなくなることは十分にあり得る話ですが、だからといって中学生以降に必要となる「勉強のやり方や工夫のポイント」についてもノータッチでいいということはありません。小学校高学年から少しずつ蓄積された「学習方法の差」が中学生になっていきなり表面化し、子どもが悩み苦しむ可能性があることを知っておきましょう。
 では、保護者として子どもの「学習方法」について、どのような点をチェックしアドバイスしておくことが望ましいのでしょうか。


デキる子がやっている「差がつく勉強のやり方」

 次に紹介するのは、中学生の学習事情に関するデータです。A群(成績上位で学習時間が短いグループ)とB群(成績下位で学習時間は長いグループ)では、明確な差がついている「勉強のやり方」があるのです。

学習方法(成績×平均学習時間 中学生)(%)

(単位%) A群 B群
問題を解いた後に○つけをする 93.2 89.2
○つけをした後に解き方や考え方を確かめる 83.1 61.7
重要なところはどこかを考えて勉強する 81.8 64.2
何がわかっていないか確かめながら勉強する 79.5 59.6
計画を立てて勉強する 63.0 59.6
目標を決めて勉強する 64.6 56.3
テストで間違えた問題をやり直す 72.7 63.8
勉強の計画がうまく進んでいなければ見直す 40.9 38.3

A群:成績上位、平均学習時間より短い
B群:成績下位、平均学習時間より長い
「よくある」「ときどきある」の合計

 中学生の保護者から子どもへの声掛けとしては「計画を立てて勉強しなさい」「テストで間違えた問題はやり直しておきなさい」といったものが多いのですが、これらは残念ながら効果的とはいえないようです。
 その理由として、多くの中学では、定期テスト前に、「試験勉強の計画を立てて提出しなさい」「教科書準拠のワークを解き、○つけして提出しなさい」といった課題を出すことが挙げられます。おうちの人の良かれと思ったアドバイスが「うるさいなー、そのくらいわかってるよ」といった反抗的な態度で返されてしまう事例は、私の周辺だけでも数えきれないほど見受けられます。
 ですから、この表においてA群とB群の数値の差が小さいものは、それが学校であれ塾であれ、子どもたちは中学生になれば誰かから指示を受けると考えておいてください。小学生のお子さまをお持ちの皆さまに「小学生の間だからこそチェックしておきたい子どもの学習習慣」として重視していただきたいものは、A群とB群の数値の差が大きいものということになります。具体的には、
 ・解いた問題の○つけは誰でもやるけれど、解いた後の吟味までやる
 ・重要なところ、自分の苦手なところを確かめながら勉強のやり方に濃淡をつける

といったことでしょうか。小学校高学年になれば、計算一つをとっても「工夫や別の解き方」を吟味する機会が多くあります。その際に自己流の解き方にこだわり「正解だからいいや」と○つけで終わらせているケースが要注意です。「物事を深く考え、しっかり理解するまであきらめない習慣」の有無はここから始まります。その場しのぎの積み重ねは悪循環につながります。
 勉強の楽しさを感じられるようになるには、その入り口は「デキた、解けた!」でもかまいません。この積み重ねが大切だからこそ、保護者の何気ない観察眼が大切になります。子どもたちにモヤモヤという名の「悩みの埃」がたまらないように、毎日少しだけ手をかけ、掃除してあげてください。


資料:ベネッセ教育総合研究所「小中学生の学びに関する実態調査」速報版 2014年     

vol.81 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2015年 1月号掲載

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