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Vol.87 今春の中学受験概況から読み解く「保護者の学校選びと意識変化」

 

 大学入試センター試験に変わる「新テスト」の1期生となるであろう学年の子どもたちが挑んだ今春の中学入試。保護者の意識変化が、ここ数年の入試動向とは少々違った傾向を作りだしたようです。今月は、首都圏の中学入試概況を紹介しながら、保護者の「学校選び」の傾向を探っていきます。

2015年中学入試概況

 まずは、首都圏中学入試が一番盛り上がる2月1日入試校の受験者数の推移を確認してみます。

首都圏中学入試受験者数(2月1日)単位(人)

受験者数
2008 49,000
2009 49,000
2010 46,500
2011 45,600
2012 45,200
2013 44,000
2014 42,800
2015 43,200

首都圏模試センター調

 今春の受験者数は、リーマンショックと東日本大震災の影響によって右肩下がりが続いていた傾向がようやく改善したかのように見てとれます。しかしながらその実情は、サンデーショック(2月1日が日曜日のため、平年だと1日に入試を行う学校の中に2日に受験日を移動させるところがある)の影響を受け、いくつかの女子校で受験者を増やしたことによる改善にすぎません。前年に比べ100人以上志願者を増やした学校は、女子のトップである桜蔭中を筆頭に片手では収まらないのです。
 こうした状況にもかかわらず受験者総数がほぼ横ばいに留まったという現実は、言い方を変えれば「志願者数を大きく減らしている学校も少なくない」ことを意味します。実は、トータルで見れば志願者数を前年より減少させた私学のほうが多いというのです。特に、東京・神奈川の多くの女子校で志願者の減少が目立っているといいます。

保護者の「学校を選ぶ目」が厳しくなっている

 今春の中学受験生は、東日本大震災を小3になる直前に経験した世代です。様々な社会状況の混乱によって受験準備が遅れたり、受験そのものを見直す御家庭が多かったことは、多くの進学塾が生徒集めに苦労していたことからもうかがい知ることができます。その後中学受験に向けて準備を始めるには、いくつものリスクを乗り越える必要があったでしょうから、それだけでも例年に比べて「強い意志」を持った御家庭が多くなったことが予想されます。それに加えて、これから始まる大学入試改革の先陣となることが加わったために、例年にないほど保護者の「学校を選ぶ目線」は厳しいものとなりました。誰も6年後の姿を想像できないのですから、保護者自身が6年後の動向について情報を集めて予測をし、多くの学校の説明会に足を運んで話を聞き、自らの予測に沿った方針を打ち出す学校を懸命に探したのです。その結果、適切な情報発信を続けた学校は志願者を増やし、しっかりとした対応策を打ち出せなかった学校はどれほど過去の実績があろうとも志願者を減らしているようです。

保護者が求めたものは「 世紀型教育のビジョン」

 そんな中、今春人気を集めた学校に共通する特徴として「大学入試改革は通過点であり、鍛えるべきは今後のグローバル社会で求められる力である」という方向性を示していることが挙げられます。
 その「求められる力」の正体を明確に示したうえで、中高6年間の教育をどのように展開していくのかを具体的な授業スタイルにまで落とし込んで紹介したいくつかの学校は、大きく志願者数を増加させています。
 その中身をおおまかに紹介すると、従来型の学習(知識を蓄積して、ペーパーテストにおいて正確にアウトプットすること)を軽視せず、そのうえで課題発見型(得た知識を活用して、課題を発見・解決する)のトレーニングを課して、思考力・判断力・表現力を伸ばすというものです。
 そして、この傾向は「偏差値にとらわれない学校選び」を加速させることにもなっています。すでに歴史や実績を持っている私学の中には、様々な観点から今回の大学入試改革やその先の教育改革をしっかり見極めようとして様子見となっているところが少なくありません。改革の行く末がしっかりと予測できない以上無責任な約束ができないという学校側の事情も理解できるものがありますが、今春から6年間預かることになる子どもたちへの指導方針を明らかにしないというのは、慎重というより消極的な姿勢と取られても仕方がありません。その結果、まだまだ模試の偏差値は低く、目を引くような大学合格実績を持ち合わせていないにもかかわらず人気を集めた学校がいくつも登場したのです。歴史や実績を持ち合わせていないからこそ、「21世紀型教育」を積極的に実践することを表明し新しい教育理念や方向性を提示したことで、こうした学校は保護者の期待や好感を集めることに成功しています。
 もちろん、入学前に約束したことが実現しない可能性もリスクとして考慮する必要はありますが、きちんと実践を続けて順調に生徒たちが成長すれば、10~15年のスパンで見ると現在の私立中学の序列が一変する可能性もけっして低いものではないでしょう。

情報に振り回されない保護者が多くなっていく

 今回の大学入試改革の目玉の一つに「大学の個性化・多様化」があります。大学入試のシステムが多様化することによって、小中高と続く12年間の教育内容や学び方もこれまで以上に選択肢が増え、上手な選択を意識すればするほどかえって迷うことも予想されます。少なくとも言えることは、「大学合格実績を絶対視した中学選び」「模試の偏差値に頼った中学選び」だけでない学校の選び方・探し方がどんどん影響力を増してくるであろうということです。その先駆けとなるものが、是非は別として「英語入試のスタート」や「(公立中高一貫校に準じた)適性検査型の思考力を問う入試の増加」だといえます。難関大学に進学することが必ずしも将来の成功と安泰を保証したものではない、ということを知っている世代が保護者になってきたからこそ、すべての面で変化に早く対応できる学校が年を追うごとに存在感を増していくことでしょう。
 勉強することに限らず、トータルで「学ぶこと」を考えた場合、現在の小中学生が置かれた環境は今の20代と比べても大きく異なります。パソコンやインターネットの活用の仕方だけでも、かつての小中学生とは比較にならないほどに違った常識・スキルを持ち合わせ、我々では想像もつなかいような新しい可能性に溢れています。まだまだ誰も「変化した後の世界・環境」が見えていないからこそ、新しい可能性を最大限に伸ばすためのプロセスを御家庭でしっかりと考え、その方針に沿って塾や中学をチョイスする必要が生じます。まさしく現在の小学生とその保護者は「新しい道を創るトップランナー」なのです。皆さんの考えや行動が新たな世論となっていくことも充分にあり得ます。誰かが歩いた道を辿るほうが楽かもしれませんが、他の世代では想像もつかないような大チャンスだ思って様々な可能性を検討してあげてください。     

vol.87 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2015年 7月号掲載

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