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Vol.89 地域別大学受験動向の違いから見えること

 

 中学受験が盛んな地域、公立高校受験が当たり前の地域や私立高校受験率が高い地域など、受験・進学に関しての地域差はあまり表だって語られることはありませんが、お住まいの地域の常識が他地域の常識と異なるという経験をされた方も多いのではないでしょうか。その考え方の地域差は、大学受験においてはどのような傾向があるのでしょうか。

国公立大学志向か私立大学志向か

 大学受験においては、国公立大学受験を前提として準備をすることが当たり前となっている地域(私立大学の選択肢が少なく、地元の国公立大学への進学を希望する)、私立大学の選択肢が多く苦手教科(数学など)を捨てても受験できる大学を選べる地域の差が大きくなっています。次の表をご覧ください。

地域別国公立および私立進学志向(単位%)

  関東圏 東海圏 近畿圏
国公立志向 私立志向 国公立志向 私立志向 国公立志向 私立志向
2015 33.8 54.8 56.0 32.9 47.0 40.7
2014 34.4 53.9 53.8 34.7 43.1 44.9
2013 35.0 53.1 55.1 33.2 42.2 42.7
2012 34.1 54.2 56.2 32.2 45.5 41.8
2011 35.2 52.9 53.1 36.4 46.2 41.6

参考:リクルート進学総研「進学ブランド力調査2015」

 関東圏では一貫して私立志向が過半数を占めています。これは、関東圏に住む大学受験生の総数に対して受け入れできる関東圏の国公立大学の数が適性ではないことも原因に挙げられるとはいえ、私立大学の選択肢が「多すぎて困る」という声が出るほどに豊富であることが最大の理由と思われます。逆に東海圏は一貫して国公立志向が過半数を占め、2015年度入試においても一段と国公立人気が高くなっていることがわかります。近畿圏では国公立志向と私立志向が毎年拮抗していますが、2013年を底として国公立志向が高まっていることがわかります。逆に私立志向は最も低くなっています。

子どもたちの学習環境に影響を及ぼす「地域性」

 こうした地域性の違いは、中学・高校における子どもたちの学習環境にも影響を及ぼします。大学受験を考える際に、全国的に最も影響力の高い「大学入試センター試験(以下センター試験)」においても、その準備の仕方が変わってくるのです。
 国公立大学を受験する場合には、文系理系を問わず現在は「5教科7科目」をベースとした受験科目が求められています。そのため理科や数学といった苦手教科を抱えている場合にも逃げることができません。それに対して私立大学受験に関しては、AO推薦入試という選択もあり、一般入試においては文系学部であれば必ずしも数学を必要とはしません。センター試験を利用する入試制度も普及していて合格への難易度は高くなっていますが、受験科目は3科目程度となっています。

地域別センター試験受験科目数(平成19年) (単位%)

受験科目数 関東圏 近畿圏 他県
3 36.6 17.7 11.9
4 12.0 8.3 8.6
5 6.4 4.0 4.0
6 3.0 3.4 3.7
7 23.2 37.7 32.2
8 3.5 15.2 25.0

日本心理学会「大学入試センター試験における科目選択の地域差」

 このような地域差を知っておかないと、大学受験準備の段階でミスマッチが起こる可能性も否定できません。国公立大学受験を考えているのに学校では周りに私立志望の友人しかいないとか、逆に私立を志望しているのに学校では国公立大学受験を前提とした準備を求められるといった悩みを抱える受験生は、我々の予想よりはるかに多いと思ってください。また、こうした状況を打開するためには予備校に通って適切な情報を入手することも必要となりますから、進学先の学校のシステムを事前に点検しておく必要があります。
 また、このような傾向は大学受験の際に初めて表面化するものではありません。例えば関東圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)において高校入試を考える場合、私立高校の入試で理科・社会を課す学校は開成高校の他、本当に数えるほどしかありません。公立や国立の高校を受験する人は5教科の準備が必要となりますが、私立高校のみの受験を考える人にとっては「理科社会は捨ててもよい教科」になってしまうのです。これは、東海圏や近畿圏にお住まいの方にとっては信じられないことではないでしょうか。
 これは関東圏特有の事情(私立大学進学の志向が高い)が見え隠れしている典型例であり、将来国公立大学を目指しているのに「とりあえず私立高校に合格したい」一心で中学の授業ですら理科社会を捨ててしまうような学習習慣を当たり前としてしまった結果、高校に進んだ後、苦労してしまうケースもあるようです。その代わり英数国においては、進学校ともなれば大学入試顔負けの英文や特殊な練習が不可欠な数学の問題など、他地域に比べるとかなりハイレベルな問題が出題されるため、適切な準備をしておかなければ太刀打ちできないことになります。
 逆に、東海圏や近畿圏、他地域から東京の私立大学を受験しようとする場合には、出題される問題の難易度に驚かされることになります。高校入試の段階から特別なトレーニングを積み重ねた生徒でさえ頭をひねるような問題が出題されることも少なくないのですから、地方で5教科を万遍なく勉強してきた生徒にとっては「求められる知識の深さ」の差に悩まされることが多いようです。

小学生の段階では「偏った勉強をしない」

 中学受験においては、どの地域においても大学入試の影響を受けることなく算国理社をしっかり学習していることが求められます。特に昨今では公立中高一貫校の人気が全国的に高く、そこでは「科目横断型」の知識や作業が求められますから、「算数は嫌い、だからやらない」といった割り切りは通用しません。中学受験をする・しないにかかわらず、今後大きく変化する大学受験のシステムに振り回されることのないよう、小学生の間には多くの知識を吸収し数多くの経験を積ませてあげたいものです。

vol.89 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2015年 9月号掲載

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